CHAPTER 07 サイズ・形・選び方

良い印鑑の見分け方|印影・印材・仕上げ・店の4つの見方

良い印鑑の見分け方を、印影・印材・仕上げ・店の4つの点から、はじめて印鑑を買う方に向けて説明します。既製品との印影の違い、試し押しで見るところ、いま持っている印鑑の点検方法も紹介します。

公開日: 2026年9月24日

窓辺のウォールナットの机で、木の万力に立てた黒水牛の印材に真鍮のルーペを向けている。横のリネンの上には淡い色の印材が2本、真鍮のノギス、小さな陶器の皿、無地のクラフト紙の札
良い印鑑の見分け方 値段でも豪華さでもなく、印影・印材・仕上げ・店の4つを見ます

「良い印鑑を買いなさい」と言われても、はじめて買う方には、どこを見て良し悪しを判断すればよいのか分かりにくいものです。値段が高ければ良いのか、有名な印材なら良いのか、彫りが細かければ良いのか。この記事では、作り手の目で「良い印鑑」の条件を4つに分けて説明します。店頭やネットで選ぶときに見るところと、いま手元にある印鑑の点検方法も取り上げます。印鑑選び全体の順番は、印鑑の選び方でまとめています。

先に結論

良い印鑑とは、印影がその人だけのもので、印材にひびや反りがなく、枠と文字が整って写り、作り手と作り方が分かる印鑑です。値段の高さや見た目の豪華さは、この4つのどれとも直接は関係がありません。とくに市区町村に登録する実印と、金融機関に届け出る銀行印は、同じ印影がほかにないことが最初の条件になります。

「良い印鑑」の条件は、印鑑の役目から決まります

印鑑の役目は、押した印影で「この人が確かに認めた」と示すことです。ですから、良い印鑑かどうかも、この役目をきちんと果たせるかで決まります。市区町村は、実印として登録できる印鑑の要件を具体的に定めています。京都市の案内では、印影が鮮明で文字が読み取りやすいことと、外枠があって輪郭が照合しやすいことが要件に挙がっています。ゴム印のように押すたびに印影が変形するものや、同じ形で量産されている印鑑も登録できません。実印に限らず、どの印鑑を選ぶときも、この要件がそのまま良し悪しの目安になります。

印影その人だけの印影か

良い印名前の字を1本ごとに作るため、同じ印影がほかにない

気をつける印既製品や、パソコンのフォントをそのまま彫ったもの。同じ印影がほかにもある

印材ひび、反り、欠けがないか

良い印側面がまっすぐで、どこにもひびがなく、印面のふちに欠けがない

気をつける印頭の面に細いひびがある、転がすと揺れる、印面のふちが白く欠けている

仕上げ枠と文字が整っているか

良い印一度押すだけで枠も文字もむらなく写り、線が途中で切れたり細くなったりしていない

気をつける印枠の一部だけが薄い、線が途中で切れている、押すたびに印影が変わる

店だれがどう作ったか分かるか

良い印彫る人の名前と工程が書いてあり、彫る前に印影を確かめられ、欠けたときの保証がある

気をつける印「手彫り」「職人」と書いてあるだけで、だれが何をするのか説明がない

見方1|印影:同じ印影がほかにないか

4つのなかでいちばん大切なのに、見落とされやすいのが印影です。印鑑は「本人の印」であることに意味があります。ところが既製品は同じ型で大量に作られるため、同じ姓の人が買えば同じ印影になります。パソコンのフォントをそのまま彫刻機で彫った印鑑も、名前と書体が同じなら、ほかの人と同じ印影になることがあります。全国銀行協会は、キャラクターものの印鑑を届出印に使えないとしています。理由は「多数の人が同じ印鑑を持っていると、印鑑照合の意味がなくなってしまう」からです。既製品は届け出自体はできても、同じ印影を持つ人がほかにいますので、預金を守るには心もとない状態です。

既製品・フォントをそのまま彫った印鑑職人が字を作る印鑑

線の太さがどこも同じで、文字が枠の中央に機械的に並びます

線と配置

字の画数に合わせて線の太さを変え、枠との接し方も1本ごとに決めます

同じ姓の既製品を2本並べると、印影がぴったり重なります

ほかとの重なり

名前と書体が同じでも、印影はほかの人と重なりません

珍しい姓や、「髙」「﨑」などの字を使った既製品は、店頭にないことが多いです

名前の字

住民票や戸籍の字のとおりに彫れます

同じ品をだれでも買えます。政府の「押印についてのQ&A」も、3Dプリンターなどで印章をまねしやすくなったという指摘に触れています

まねされにくさ

印影が1つしかなく、線の抑揚も複雑ですので、まねる手がかりが少なくなります

店頭で見分けるなら、同じ姓の既製品を2本手に取って、試し押しの紙に並べて押してみてください。ぴったり重なれば、同じ型で量産された印鑑です。注文品の場合は、店の説明に「字入れ」という工程があるかを見ます。公益社団法人全日本印章業協会は、印章の彫刻を「字入れ」「荒彫り」「仕上げ」の3つの工程に分けています。このうち字入れは、彫る字の形を決めて印面に書き入れる工程です。ここを職人が行えば、同じ印影にはなりません。彫り方の呼び名と工程の中身は手彫りと機械彫りの違いで詳しく説明しています。

見方2|印材:ひび、反り、欠けを見る

印材の良し悪しは、値段の高い安いではなく、その1本に傷や欠陥がないかで決まります。薩摩本柘でも象牙でも、ひびが入った材料で作った印鑑は長持ちしません。手に取って見られるときは、次の4か所を順に見てください。

1 2 3 4
印面(彫った面)は下を向けたまま、上と横から見ます
  1. 1頭の面(天)

    細いひびが入っていないかを見ます。角や木の印材は、乾燥するとひびが入ることがあります。

  2. 2側面

    平らな台の上で軽く転がします。まっすぐな印材はなめらかに転がり、反っていればごとごとと揺れます。反った印材は印面が紙に均一に当たらず、印影の一部がかすれることがあります。

  3. 3印面のふち

    枠のすぐ外側が白く欠けていないかを見ます。ここが欠けていると、枠まで欠けが広がることがあります。

  4. 4色と模様

    黒水牛では、角の中心(芯)を通る部分から取った「芯持ち」が、ひびや歪みが出にくいとされています。象牙は、中心に近く目の細かいものほど上の等級です。模様の好みは人それぞれですが、色むらに沿って割れていないかは確かめてください。

ネットで買うときは自分の目で見られませんので、印材の扱い方を店の説明で確かめます。当店は経済産業省の認定を受けた象牙の取扱店で、等級ごとに分けてご用意しています。完成した印鑑は、検品してから発送します。印材ごとの特徴は黒水牛の印鑑とはや薩摩本柘の印鑑とはでまとめています。

見方3|仕上げ:一度押せば分かります

仕上げの良し悪しは、朱肉を付けて一度押せばほぼ分かります。試し押しができるときは、次の4つを見てください。試し押しができない店なら、印影の見本を同じ見方で確かめます。

試し押しの紙で見ること

  • 枠が一周きれいに写っているか印面が平らに仕上がっていれば、力を入れなくても枠が一周つながって写ります。一部だけが薄いときは、印面が傾いているか、枠の高さがそろっていないと考えられます
  • 文字の線が途中で細くなったり切れたりしていないか線が途中で切れるのは、彫りが浅いときや、仕上げで印刀が入りきっていないときです。細い線でも、端まで同じ濃さで写るのが整った仕上げです
  • 枠と文字の太さが釣り合っているか枠だけが太すぎると文字が窮屈になって読みづらく、文字だけが太くて枠が糸のように細いと、枠が欠けやすくなります
  • 2回押して同じ印影になるか京都市は「ゴム印その他押印のつど印影が変形しやすいもの」を登録できないとしています。ゴム印のほか、印面が柔らかい樹脂の印鑑も、力の入れ方で印影が変わることがあります

吉相体(印相体)の印鑑は、文字の線が枠に接するように配置されています。飾りのためではなく、枠と文字がつながると枠が欠けにくくなるからです。書体ごとの印影の違いは印鑑の書体一覧をご覧ください。

見方4|店:だれが、どう作るのかが書いてあるか

印影も印材も仕上げも、買う前にすべてを自分で確かめるのは難しいものです。そこで最後に見るのが店です。良い店かどうかは、規模や値段ではなく、次の4つが具体的に書いてあるかで見分けられます。

彫る人の名前「職人が」とだけ書くのではなく、だれが彫るのかが名前で分かること。当店では京印章制作士の池上翠雲が、名前に合わせて印影をデザインし、1本ずつ仕上げます
工程の説明字入れと仕上げをだれがするのかが読み取れること。「手彫り」と書いてあるだけでは、どの工程を手で行うのか分かりません
彫る前の印影確認字の形や配置を、彫る前に見せてもらえること。当店では、ご注文時に「印影のご確認」を選ぶと、2〜3日後に印影をメールでお送りします
欠けたときの保証枠が欠けたときに、修理や彫り直しをしてもらえること。当店は5年間の保証を付けています
「良い店だから高い」ではなく、「何にお金がかかっているか」で見ます

同じ職人が同じ工程で彫っていれば、薩摩本柘でも象牙でも印影の出来は変わりません。値段の差は印材と直径の差です。たとえば当店の実印は、薩摩本柘13.5mmが10,700円、黒水牛15mmが15,300円、本象牙(標準)15mmが36,100円です。値段が上がる理由は、安い印鑑と高い印鑑の違いで詳しく説明しています。

いま持っている印鑑を点検する

ここまでの見方は、新しく買うときだけでなく、いま引き出しにある印鑑にもそのまま使えます。銀行に届け出た銀行印や、市区町村に登録した実印を、一度取り出して見てください。

手元の印鑑の点検表

既製品を銀行印として届け出ている同じ姓の人が、同じ印影の既製品を持っています。届け出はできていても、預金を守る印鑑としては安心できません。改印するときは、いまの印鑑と新しい印鑑、通帳、本人確認書類を持って窓口へ行きます。

作り直す

枠が欠けている、線が切れている届け出た印影と合わなくなると、窓口で照合できなくなります。欠けが広がる前に、彫り直すか新しく作るかして、改印の手続きをしてください。

作り直す

転がすと揺れる、頭の面にひびがある反りやひびは、使ううちに大きくなることがあります。いまは押せていても、印影がかすれるようになる前に新しい印鑑を用意しておくと、慌てずに済みます。

早めに作り直す

古いが、枠も文字もきれいに写る何十年も前の印鑑でも、印影が鮮明で、ひびや反りがなければそのまま使えます。使ったあとは朱肉を拭き取り、ケースにしまう習慣を続けてください。

そのまま使う

よくある質問

手彫りの印鑑なら、良い印鑑と考えてよいですか

「手彫り」という言葉が指す工程は、店によって違います。全日本印章業協会の定義では、字入れ・荒彫り・仕上げのすべてを手で行うものが「手彫り」です。荒彫りだけを機械で行うものは「手仕上げ彫り」と呼んで区別しています。印影がその人だけのものになるかどうかは、字入れをだれがするかで決まります。「手彫り」の一言より、字入れの説明があるかを見てください。確かめ方は手彫り印鑑の選び方にまとめています。

印影だけを見て、良い印鑑かどうか分かりますか

印影からは、線の太さの抑揚、枠と文字の接し方、枠が一周きれいに写っているかが分かります。既製品は線の太さが均一で、余白が機械的にそろっているのが特徴です。ただし、印材の良し悪しまでは分かりません。押した跡だけでは、木の印鑑か象牙の印鑑かも見分けがつかないからです。

直径が大きいほど良い印鑑ですか

直径は良し悪しではなく、彫る文字数と用途で決めるものです。姓だけで3文字以内なら、13.5mmでも余裕があります。フルネームを彫るなら15mmが目安で、5文字以上なら16.5mmのほうが読みやすくなります。京都市の場合、実印として登録できるのは、8mm四方より大きく、25mm四方に収まる大きさの印影です。個人の印鑑でふつうに作られる直径なら、この範囲に入ります。

ネットで買う印鑑は、手に取れないので見分けられませんか

印材の状態は、届いてから確かめることになります。字の形や配置は、彫る前に印影を見せてもらえる店なら、注文の途中で確かめられます。当店では「印影のご確認」を選んだ方に彫る前の印影をメールでお送りし、見ていただいてから彫刻に入ります。届いたあとは、上の点検表のとおりに転がしたり一度押したりして確かめてください。

まとめ|印影、印材、仕上げ、店の順に見る

まずは印影です。既製品なら2本並べて押し、注文品なら字入れの説明を読んで、同じ印影がほかにないかを確かめます。次に印材を平らな台で転がし、頭の面と印面のふちにひびや欠けがないかを見ます。続いて一度押して、枠が一周写るか、線が途中で切れていないかで仕上げを確かめます。最後に、彫る人の名前と工程、彫る前の印影確認、保証が店の説明に書いてあるかを見ます。実印と銀行印は、この4つがそろった印鑑で用意しておくと、長く安心して使えます。当店では、京印章制作士が名前の字を1本ずつ作り、彫る前の印影確認と5年間の保証を付けてお届けしています。

京印章制作士が、印影のデザインから仕上げまで担当

彫る前に印影を確かめてから、お作りします

4つの見方をそのまま当店の印鑑に当ててみてください。名前の字は1本ごとに作り、印材は職人が選び、仕上げまで同じ職人が行い、彫る前の印影をメールでお見せします。牛革ケース、朱肉、押印マット、保証書、京印章証明書付き。送料無料、5年保証。

  1. 1ご注文時に「印影のご確認」を選ぶ商品ページの「その他」の欄で「確認する」を選びます
  2. 22〜3日後に印影がメールで届く字の形と配置を見て、直したいところがあれば返信してください
  3. 3ご確認後に彫刻し、発送確認の日数のぶん、発送は通常の3〜7営業日より延びることがあります

SOURCES

出典

印鑑登録できる印鑑の条件は京都市の案内、銀行の届出印にできない印鑑は全国銀行協会の案内、彫刻の工程の呼び方は公益社団法人全日本印章業協会の定義、押印の効力の考え方は内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」を参照しました。印鑑登録の条件は市区町村によって細部が異なります。価格は当店の税込価格で、記事作成時点のものです。

  1. 京都市. 印鑑登録. 京都市情報館. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html,(参照 2026-09-24).
  2. 一般社団法人全国銀行協会. ハンコにはルールがあります!. 教えて!くらしと銀行. https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/3805/,(参照 2026-09-24).
  3. 公益社団法人全日本印章業協会. 彫刻作業工程の定義. https://www.inshou.or.jp/inshou/common/pdf/2024sagyoukouteihyou.pdf,(参照 2026-09-24).
  4. 内閣府・法務省・経済産業省. 押印についてのQ&A. 法務省ウェブサイト. https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf,(参照 2026-09-24).