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CHAPTER 08 職人・制作工程・研究
印鑑の手彫りと機械彫りの違い|手仕上げを含む3つを工程で比較
印鑑の彫り方は、手彫り、手仕上げ彫り、機械彫りの3つに分かれます。違いは、字入れ・荒彫り・仕上げの3つの工程のうち、どこに人の手が入るかです。業界団体の定義をもとに、同じ印影ができてしまう「同型印」の話、価格と納期の差、店ごとに呼び方が違うときの確かめ方、実印・銀行印・認印での選び方までを説明します。
公開日: 2026年9月24日
印鑑の店を見比べていると、「手彫り」「手仕上げ」「機械彫り」という言葉が出てきます。値段は数千円から数万円まで開きがあり、何が違うのか、外から見ただけでは分かりません。この記事では、印鑑が彫り上がるまでの3つの工程を先に説明し、そのうえで3つの彫り方の違いを、工程ごとに比べていきます。
3つの彫り方の違いは、「字入れ」「荒彫り」「仕上げ」のどこまでを人の手で行うかです。全部が手仕事なら手彫り、荒彫りだけ機械を使えば手仕上げ彫り、パソコンのフォントをもとに機械で彫れば機械彫りです。なかでも大切なのは、最初の字入れです。彫る字を人が1本ごとに作っていれば、同じ名前でも同じ印影にはなりません。実印と銀行印を作るときは、ここを確かめてください。
印鑑は「字入れ・荒彫り・仕上げ」の3つの工程で彫られます
彫り方の違いを知るには、先に工程を知っておくのが近道です。印鑑の業界団体である全日本印章業協会は、印鑑を作る作業を次の3つの工程に分けています。
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工程1
字入れじいれ
彫る字を決める工程です。印面をやすりで平らに整えて朱墨を塗り、そこに左右を反転させた字を筆で書き入れます。紙に書いた字を印面に写す方法もあります。印影の形は、ここでほぼ決まります。
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工程2
荒彫りあらぼり
字入れした線を残し、まわりを彫り下げる工程です。朱肉が付かない部分を、同じ深さでさらっていきます。手間と時間がいちばんかかる作業で、機械を使うかどうかが分かれるのは主にここです。
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工程3
仕上げしあげ
印面をもう一度整えて墨を打ち、仕上げ用の印刀で線の1本1本を削って形を決める工程です。線の太さ、角の丸み、枠の厚みをここで調整します。押したときの印影の切れ味は、この工程で変わります。
京都の印章の組合では、この前に印稿(いんこう。紙に描く印影の設計図)を作る工程を、後ろに試し押しの工程を加えて、6つの工程として説明しています。呼び方は違っても、「字を決める」「彫り下げる」「線を整える」の3つが柱であることは変わりません。
手彫り・手仕上げ彫り・機械彫りの違いを工程で比べる
協会の定義では、3つの工程をすべて手仕事で行うか、どこかで機械を使うかによって、彫り方を3つに分けています。下の図は、その定義をもとに当店でまとめたものです。
公益社団法人 全日本印章業協会「彫刻作業工程の定義」をもとに作成
手彫り|3つの工程をすべて手仕事で行う
字入れから仕上げまで、機械をいっさい使わない彫り方です。協会の定義では、荒彫りでペンシル型の彫刻機のような道具を使うことも認めていません。職人が印刀だけで彫り進めますので、1本に何日もかかります。彫れる職人の数も限られるため、価格は3つのなかでいちばん高くなります。店によっては、ほかと区別するために「完全手彫り」と呼んでいます。
手仕上げ彫り|荒彫りだけ機械を使い、字入れと仕上げは手仕事
いちばん時間のかかる荒彫りを彫刻機に任せ、字入れと仕上げを職人の手で行う彫り方です。字入れは、手で書くか、手書きの字を機械に取り込むか、パソコンの字を全面的に直して作ります。どの方法でも、その1本のための字を人が作ることが条件になっています。印影を決める最初と最後の工程に人の手が入りますので、同じ印影はできません。手彫りより納期が短く、価格も抑えられます。
機械彫り|パソコンのフォントをもとに彫刻機で彫る
パソコンに入っている書体で名前を並べ、その形のまま彫刻機で彫る方法です。注文から数十分で彫り上がる店もあり、価格は手ごろです。宅配便の受け取りに使う認印なら、十分に役目を果たします。一方で、同じフォント、同じ名前、同じ大きさで彫れば、だれが注文しても同じ印影になります。
いちばん差が出るのは字入れ|同じ印影ができるかどうか
手彫りか機械彫りかと聞くと、多くの方は「刃物で彫るか、機械で彫るか」を思い浮かべます。ところが、印鑑の役目から考えると、大切なのは彫る道具よりも、彫る字をだれが作ったかのほうです。
実印や銀行印は、押した印影が「本人のものである」ことの証明に使われます。同じ印影の印鑑が世の中にもう1本あれば、その証明が成り立ちません。同じ形の印影ができてしまう印鑑を、業界では「同型印(どうけいいん)」と呼んでいます。
書体のデータが同じですので、別の人が別の日に注文しても、線の位置までぴったり重なります。
字の大きさのつり合い、線の伸ばし方、枠との間隔をそのつど決めますので、同じものは二度とできません。
全日本印章業協会は、消費者に向けた文書のなかで、フォントを並べて機械で彫っただけの同型印が出回っていることに触れ、会員の店は同型印を作らない、売らないと約束しています。協会が彫り方の定義をわざわざ文書にしたのも、字入れに人の手が入っているかどうかを、買う側が確かめられるようにするためです。
自治体の決まりにも、同じ考え方が表れています。たとえば京都市は、実印として登録できない印鑑のひとつに「同一形態の印鑑が量産されているもの」を挙げています。文房具店に並ぶ既製品の認印が実印に向かないのは、このためです。既製品については三文判とは?で詳しく説明しています。
価格と納期はどれくらい違いますか
人の手が入る工程が多いほど、時間がかかり、価格も上がります。店によって幅がありますので、おおまかな傾向としてご覧ください。
高価で、納期は長め
数週間かかることも1本を彫るのに何日もかかります。実印で数万円からという店が多く、注文が重なると、お届けまで1か月以上かかる場合もあります。
向いている方時間と予算に余裕があり、工程そのものにこだわりたい方
価格と納期のつり合いがとれる
数日〜1週間ほど荒彫りの時間を機械で縮められますので、職人が字を作った印鑑を、1万円前後から注文できます。
向いている方実印や銀行印を、自分だけの印影で作りたい方
手ごろで、すぐ受け取れる
即日〜翌日数千円から作れ、その日のうちに受け取れる店もあります。印影はフォントの形そのままになります。
向いている方今日明日にでも認印が必要な方
店によって呼び方が違うとき、何を確かめればよいですか
困るのは、彫り方の呼び名が店ごとにそろっていないことです。「手彫り」「完全手彫り」「手彫り仕上げ」「手仕上げ」など、似た言葉がいくつも使われています。協会の定義にあるのは「手彫り」「手仕上げ彫り」「機械彫り」の3つだけですので、それ以外の呼び名は、店がそれぞれの意味で使っていることになります。
呼び名で比べるよりも、中身を確かめるほうが確実です。次の4つを見てください。
注文の前に確かめる4つのこと
- 彫る字を、だれが作っていますか いちばん大切な点です。職人が1本ごとに字の形と配置を決めているのか、フォントをそのまま使うのかを見ます。
- 職人の名前や経歴が書かれていますか だれが作るのかが分かる店は、作り方もはっきり説明しています。技能検定の合格や、伝統工芸の認定も目安になります。
- 彫る前に、印影を見せてもらえますか 1本ごとに字を作っている店なら、彫る前の印影を見せることができます。思っていた印象と違う、という行き違いも防げます。
- 欠けたときの保証はありますか 長く使う実印や銀行印は、保証の年数と、彫り直しに応じてもらえるかどうかも確かめておくと安心です。
開運印鑑の店を比べるときの確かめ方は、開運印鑑の店選び|鑑定士・職人・制作方法をどう確認する?にまとめています。
職人の仕事は、印影のどこに表れますか
職人が字を作った印鑑は、押してみるとフォントの印影との違いが分かります。見るところは3つあります。
フォントは、どんな名前にも使えるように、1文字ずつ同じ大きさの枠に収めて作られています。そのまま並べると、「山」のような画数の少ない字はすかすかに、「藤」のような多い字は真っ黒になりがちです。職人は名前全体を見て、字の幅や線の伸ばし方を変え、丸い枠のなかで濃さが均等になるように整えます。仕上げでは、線の角をわずかに丸め、枠の太さを整えて、朱肉がきれいに乗る印面にします。書体ごとの違いは、印鑑の書体一覧で印影を並べて紹介しています。
実印・銀行印・認印で、彫り方をどう選ぶか
彫り方は、その印鑑で何を証明するかに合わせて選びます。
実印
職人が字を作った印鑑を
不動産、車、相続と、大きな財産が動く場面で押します。同じ印影がほかにないことが何より大切です。一度登録すれば何十年も使いますので、ここは手を抜かないでください。
銀行印
実印と同じ考え方で
預金を守る印鑑です。窓口で印影を照らし合わせますので、実印と同じく、1本ごとに字を作った印鑑をおすすめします。
認印
急ぐなら機械彫りでも
受け取りや回覧に使うぶんには、機械彫りで困ることはありません。契約書や入社の書類にも押すなら、実印や銀行印とそろえて作っておくと、長く使えます。
実印、銀行印、認印の役目の違いは、実印とは?銀行印・認印との違いと登録までの流れをご覧ください。
当店の印鑑は、京印章の職人が1本ずつ制作しています
印影のデザインから彫刻、仕上げまで、同じ職人が担当します
当店の印鑑は、京都府認定の伝統工芸「京印章」の制作士である池上翠雲が制作しています。篆刻家の故 村上石堂氏に師事し、昭和59年の入店から40年、京都で印鑑を彫り続けてきた職人です。お名前の字の形を見て1本ごとに配置を決めますので、同じお名前でも同じ印影にはなりません。
注文画面の「印影のご確認」で「確認する」を選ぶと、ご注文から2〜3日後に、彫る前の印影をメールでお送りします。ご覧いただいてから彫刻に進みます。
当店と職人についてよくある質問
機械彫りの印鑑は、実印として登録できませんか
注文を受けて1本ずつ彫った印鑑であれば、彫り方を理由に断られることはまずありません。窓口が確かめるのは、大きさ、氏名との一致、変形しやすい材質でないか、といった点です。ただし、同じ形のものが大量に作られている既製品は、登録できないと定めている自治体があります。登録できても、同じ印影の印鑑がほかにあるかもしれない、という心配は残ります。
手彫りか機械彫りかは、印鑑を見れば分かりますか
彫った底の面を拡大すると、印刀の跡や機械の刃の跡が見える場合があります。ただ、慣れていない方が見分けるのは難しく、仕上げの有無までは分かりません。見た目で判断するよりも、注文の前に、字をだれが作るのかを店に確かめるほうが確実です。
荒彫りに機械を使うと、品質は落ちますか
荒彫りは、字のまわりを同じ深さで彫り下げる作業です。ここを機械で行っても、印影の形は変わりません。印影を決めるのは、どんな字を入れるかと、最後に線をどう整えるかです。協会の定義でも、同じ印影ができるおそれがあるとされているのは、フォントをもとにした機械彫りだけです。
印章彫刻技能士とは、どんな資格ですか
厚生労働省が所管する技能検定の1つで、印鑑を彫る技能を、学科と実技の試験で確かめる国家検定です。京都府によると、京都ではこの検定に合格した60人あまりの技能士が、京印章の制作にたずさわっています。
彫る前に印影を確かめると、納期は延びますか
当店の場合、確認のやりとりのぶん、お届けまでの日数が延びることがあります。通常は、ご注文から3〜7営業日で発送しています。お急ぎの方は、ご注文のときに備考欄でお知らせください。
まとめ|彫る道具よりも、字をだれが作るかを見てください
印鑑は、字入れ、荒彫り、仕上げの3つの工程で彫られます。3つとも手仕事なら手彫り、荒彫りだけ機械を使えば手仕上げ彫り、フォントをもとに機械で彫れば機械彫りです。店によって呼び名はまちまちですので、言葉で比べるよりも、「彫る字を1本ごとに人が作っているか」「彫る前に印影を見せてもらえるか」を確かめてください。
実印と銀行印は、同じ印影がほかにないことに意味があります。長く使う印鑑こそ、職人が字を作ったものをお選びください。
京印章の職人が、お名前に合わせて1本ずつ彫刻します
印鑑ケース付き、送料無料、5年保証。彫る前に印影を確かめることもできます。実印、銀行印、認印をまとめて作る3本セットは、1本ずつ注文するよりお得です。
実印・銀行印・認印の3本セット21,700円〜