CHAPTER 07 サイズ・形・選び方
印鑑の選び方|用途・素材・書体・サイズ・予算の決め方
印鑑をはじめて選ぶ方へ、用途・直径・彫る名前・書体・素材という決める順番を、比較表と価格の目安を添えて解説します。単品とセットの違いや注文前の確認事項もまとめました。
公開日: 2026年9月24日
印鑑を選ぶときに決めることは、用途・直径・彫る名前・書体・素材の5つです。どれも後から変えられませんが、順番に決めていけば迷う場面はほとんどありません。逆に、素材や価格から先に見はじめると決め手がなくなります。ここでは決める順に沿って、それぞれの判断材料と価格の目安、そして注文前に確認しておくことまでを整理します。
用途 → 直径 → 彫る名前 → 書体 → 素材の順に決めてください。最初に用途が決まれば、そこから先の選択肢は自然に絞られます。素材は最後です。先に見てしまうと、用途に合わない組み合わせを選ぶことになります。
手順1|何に使う印鑑かを決める
個人用の印鑑は、どこに登録するかで3つに分かれます。用途が決まると、必要な直径も彫る名前も方向が決まります。
| 種類 | 登録先 | 使う場面 | 使う頻度 | なくしたとき |
|---|---|---|---|---|
| 実印 | 住民登録のある市区町村 | 不動産、自動車の登録、相続、公正証書 | 年に数えるほど | 登録の廃止と登録し直し |
| 銀行印 | 口座のある金融機関 | 口座開設、窓口での払い戻し、口座振替の申し込み | 手続きのときだけ | 窓口で改印の届け出 |
| 認印 | 登録しない | 宅配便の受け取り、社内の書類、申込書 | 週に何度も | 作り直せば済む |
この3つは印鑑そのものの作りが違うわけではありません。同じ1本でも、市区町村に登録すれば実印、金融機関に届け出れば銀行印になります。お店で「実印用」「銀行印用」と分けて並んでいるのは、その用途で選ばれやすい直径や素材をまとめてあるからで、印材そのものに違いがあるわけではありません。違いをもう少し詳しく知りたい方は、実印・銀行印・認印の違い|必要な本数と使い分けをご覧ください。
いま何本必要かを確かめる
3本ともすぐに必要とは限りません。いまの立場とこれからの予定によって変わります。
| いまの立場 | 当面必要 | 近いうちに必要 |
|---|---|---|
| 学生 | 認印 | 銀行印 |
| 新社会人 | 認印・銀行印 | 実印 |
| 一人暮らしを始める | 認印・銀行印 | 実印 |
| 車や住まいを買う予定 | 3本すべて | — |
| 結婚・改姓の予定 | 認印 | 姓が確定してから実印・銀行印 |
手順2|直径を決める
直径は、彫る文字数に対して線が細くなりすぎないかで決めます。用途ごとに選べる範囲が違います。
| 種類 | 選べる直径 | よく選ばれる直径 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 実印 | 13.5・15・16.5・18mm | 15mm | フルネームが多いため大きめ。8文字超なら16.5mm |
| 銀行印 | 12・13.5・15・16.5・18mm | 13.5mm | 実印より一回り小さくして見分けやすく |
| 認印 | 10.5・12・13.5・15・16.5mm | 12mm | 押印欄に収まり、持ち歩いて邪魔にならない大きさ |
手順3|彫る名前を決める
| 種類 | 選ばれやすい名前 | 理由 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 実印 | フルネーム | 本人だけの印鑑になり、家族と取り違えない | 登録できる範囲は自治体の条件による |
| 銀行印 | 姓のみ、または名のみ | 実印と印影を分けられる | 改姓の予定があるなら名のみが使い続けやすい |
| 認印 | 姓のみ | 押した相手が読み取りやすい | 同じ姓の家族と共有しない |
「辺」と「邊」「邉」、「斉」と「齊」「齋」、「高」と「髙」のように、普段書いている字と戸籍の字が違う方は少なくありません。彫り上がってから気づくと作り直しになり、実印であれば登録そのものができません。
手順4|書体を決める
読みにくい書体ほど複製されにくく、読みやすい書体ほど相手が確認しやすくなります。用途によって向きが逆になります。
| 書体 | 実印 | 銀行印 | 認印 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 吉相体 | ◎ | ◎ | △ | 文字の線が枠に接する形で、輪郭が欠けにくく字を追いにくい |
| 篆書体 | ○ | ◎ | △ | 最も古い書体のひとつ。紙幣の印章にも使われている |
| 古印体 | ○ | ○ | ◎ | 日本で生まれた書体。線に強弱があり読みやすい |
| 楷書体 | △ | △ | ◎ | 普段書く文字に最も近く、誰が見ても読み取れる |
| 隷書体 | △ | △ | ○ | 横に広がる落ち着いた形 |
| 行書体 | △ | ○ | ○ | 続けて書く流れのある形で、柔らかい印象になる |
文字数が多い名前に線の複雑な書体を合わせると、印面のなかが詰まって線が細くなります。細い線は欠けやすく、実印では登録し直しにつながりますので、文字数と直径に見合う書体を選んでください。
手順5|素材を決める
ここまでで用途・直径・名前・書体が決まっていれば、素材は価格と耐久性のつり合いだけで選べます。
| 素材 | 価格の目安 | 耐久性 | 人気 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 薩摩本柘 | 10,700円〜 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 鹿児島産の本柘。木目が細かく硬い |
| 黒水牛 | 12,200円〜 | ★★★★☆ | ★★★★★ | 漆黒と艶。最も人気のある定番 |
| 彩樺 | 13,700円〜 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 木を圧縮した素材。乾燥や割れに強い |
| 白水牛(柄) | 16,700円〜 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 乳白色に自然な模様が出る |
| チタン | 16,700円〜 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 摩耗も欠けもほぼ起きず、水にも強い |
| 白水牛 | 19,100円〜 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 模様の少ない乳白色。上品な質感 |
| 白檀 | 31,200円〜 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 香りを持つ銘木。記念の1本に |
| 本象牙 | 31,200円〜 | ★★★★★ | ★★★★★ | 朱肉ののりがよく、印影が鮮明に出る |
素材ごとの手入れの違い
価格と耐久性だけでは分からない差もあります。買ったあと、どれだけ手をかけるかが変わります。
| 素材 | 使ったあと | 保管 | 苦手なこと |
|---|---|---|---|
| 薩摩本柘・彩樺 | 朱肉を拭き取る | ケースに入れる | 乾燥と直射日光。反りや割れが起きる |
| 黒水牛・白水牛 | 朱肉を拭き取る | ケースか桐箱へ | 乾燥。ひび割れの原因になる |
| チタン | 拭き取れば十分 | 置き場所を選ばない | 落下。周囲を傷つけることがある |
| 白檀・本象牙 | 朱肉を拭き取る | 桐箱で保管する | 乾燥と急な温度変化 |
毎日持ち歩く認印なら扱いやすさ、何十年も保管する実印なら欠けにくさが基準です。手入れの手間をかけたくない方にはチタンが向いています。
予算の考え方
印鑑は買い替える前提の道具ではありません。20代で作った実印を定年まで使うこともありますので、価格は年数で割って考えると判断しやすくなります。
| 予算 | 選べる素材 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 1万円台 | 薩摩本柘・黒水牛・彩樺 | はじめての1本、認印や銀行印を手早く揃えたい場合 |
| 2万円前後 | 白水牛・チタン | 実印として長く使う1本。手入れの手間を減らしたい場合 |
| 3万円以上 | 白檀・本象牙 | 節目の記念や贈り物。印影の鮮明さを重視する場合 |
1万円の差も、30年使えば1年あたり数百円です。どの素材を選んでも押せる印影の効力は同じですが、欠けにくさの差は年月が経つほど表れます。とくに実印は、欠ければ登録をやり直すことになりますので、最初に耐久性へ寄せておくと後の手間が減ります。
単品とセット、どちらを選ぶか
| 単品 | セット | |
|---|---|---|
| 費用 | 必要な1本だけで済む | 2本以上ならセットのほうが抑えられる |
| 素材 | 用途ごとに別々の素材を選べる | 3本共通の素材になる |
| 見分けやすさ | 買う時期が違うと素材も色もばらつく | 直径に差がつき、手に取って区別できる |
| 向いている方 | 足りない種類がはっきり決まっている方 | これから2本以上そろえる方 |
2本以上そろえる予定があるなら、セットのほうが費用も手間も抑えられます。セットの選び方をもう少し細かく知りたい方は、印鑑3本セットの選び方で書体やケースまで含めて説明しています。
注文の前に確認しておくこと
注文の前に確かめる4つのこと
- 正式な表記の姓名 住民票や戸籍の字体を確認します。実印として登録する場合、違う字では登録できません。
- いま使っている印鑑があるか すでに銀行へ届け出ている印鑑があれば、足りない種類だけを選ぶ方法もあります。
- 改姓の予定があるか 近く姓が変わる予定があるなら、姓を彫った印鑑は使えなくなります。名のみで作るか、姓が確定してから注文します。
- いつまでに必要か 名前を彫って作りますので、注文から手元に届くまでに日数がかかります。契約や手続きの予定から逆算してください。
実印として登録できない印鑑
実印にする予定がある方は、登録の条件も先に押さえておいてください。
ゴム印など変形する材質のものシャチハタのように押すたび印影が変わるものは登録できません。
大きさが規定から外れるもの一辺8mmの正方形に収まる小さすぎるもの、一辺25mmの正方形に収まらない大きすぎるものは対象外です。
住民票の氏名と関係のない文字ペンネームや屋号など、登録されている氏名にない文字は彫れません。
印影が不鮮明なもの欠けている、輪郭がない、文字が読み取れないものは受け付けられません。
登録の手順そのものは実印とは?銀行印・認印との違いと登録までの流れにまとめています。
買ったあとに必要になるもの
印鑑本体だけあっても、きれいに押せるとは限りません。あわせて用意しておくと困らない道具があります。
実印を押す場面は、どれも書類の作り直しがきかないものばかりです。捺印マットの有無で印影の鮮明さが変わりますので、1枚持っておくと安心できます。使ったあとは印面の朱肉を柔らかい紙で拭き取ってください。
印鑑を長持ちさせる保管のしかた
| 場面 | すること | 理由 |
|---|---|---|
| 押したあと | 印面に残った朱肉を柔らかい紙で拭き取る | 溜まったまま放置すると細かい部分が埋まり、印影が変わる |
| 持ち歩くとき | ケースに入れ、鍵などと同じポケットに入れない | 硬いものに当たると印面が欠ける |
| 自宅で保管 | 直射日光と乾燥を避ける。暖房の風が当たる場所に置かない | 木や水牛の印材は反りや割れが起きる |
| 実印の保管 | 印鑑登録証とは別の場所にしまう | 2つが揃うと印鑑登録証明書を取得できてしまう |
よくある質問
既製品の三文判ではいけませんか
宅配便の受け取りなど、確認のための押印であれば問題ありません。ただ同じ印影の印鑑が大量に流通しているため、実印や銀行印には向きません。お金や権利に関わる場面では、名前を彫って作る1本をおすすめします。
3本とも同じ素材にしなければいけませんか
単品で買う場合は別々の素材で構いません。セットで注文する場合は3本共通になります。並べたときのまとまりを重視するならセット、用途ごとに素材を変えたいなら単品という選び方になります。
書体は3本とも同じにするものですか
1本ずつ変えられます。実印と銀行印は読み取りにくい吉相体や篆書体、認印は読みやすい古印体や楷書体、という組み合わせがよく選ばれます。
大きい印鑑のほうが格が高いのですか
直径によって効力が変わることはありません。文字数に対して線が細くなりすぎないかどうかが選ぶ基準です。文字数が少ないのに大きな印面を選ぶと、間延びした印影になります。
家族と同じ印鑑を使ってもよいですか
実印は1人につき1本で、同じ印鑑を家族で登録することはできません。銀行印も名義人ごとに分けます。姓だけを彫った印鑑を家族で共有すると、誰の意思で押したのか区別がつかなくなります。
印鑑が届くまでどれくらいかかりますか
名前を彫って作りますので、既製品のようにその場で受け取ることはできません。契約や手続きの予定がある方は、日程から逆算してご注文ください。
まとめ|用途から始めて、素材は最後に
印鑑選びで迷うのは、決める順番が逆になっているときです。素材や価格から見はじめると、用途に合わない直径や書体を選んでしまいます。まず何に使うかを決め、次に文字数に見合う直径、彫る名前、用途に合う書体という順に進めてください。
そこまで決まれば、素材は予算と耐久性のつり合いだけの問題です。1万円台なら黒水牛、手入れの手間をなくすならチタン、記念の1本にするなら白檀や本象牙。2本以上そろえる予定があるなら、素材と直径が揃うセットのほうが費用も抑えられます。
最後にもうひとつ。実印として登録する予定があるなら、注文の前に戸籍の字体だけは確認しておいてください。彫り上がってから気づくと、作り直しになります。