CHAPTER 02 個人の印鑑
実印・銀行印・認印の違い|必要な本数と使い分け
実印・銀行印・認印の違いを一覧で比べ、必要な本数の決め方、3種類ごとの直径・名前・書体・素材を表で整理し、兼用の可否や保管、紛失時の手続きまで解説します。
公開日: 2026年9月24日
実印・銀行印・認印は、印鑑そのものが3種類あるわけではありません。同じ1本でも、市区町村に登録すれば実印、金融機関に届け出れば銀行印、どこにも登録しなければ認印として扱われます。違いを生むのは印鑑の作りではなく、登録の有無です。ここでは3つを一覧で比べたうえで、それぞれの選び方、自分には何本必要かの判断、保管やなくしたときの手続きまでを一通りまとめます。
3つの違いは、どこに登録するかだけです。その登録先の違いが、証明の重さと紛失したときの手続きを分けます。社会人として生活するなら3本に分けて持つのが基本ですが、いま必要な本数はこれからの予定によって変わります。
3つの違いを一覧で比べる
まず全体を並べて確認します。用語そのものの意味を詳しく知りたい方は、印鑑・印章・はんこの違いもあわせてご覧ください。
| 実印 | 銀行印 | 認印 | |
|---|---|---|---|
| 登録先 | 住民登録のある市区町村 | 口座のある金融機関 | 登録しない |
| 証明するもの | 印鑑登録証明書と合わせて本人の意思を示す | 口座の名義人であることを示す | 確認したことを示す |
| 持てる本数 | 1人1本まで | 口座ごとに自由 | 制限なし |
| 主な場面 | 不動産、自動車の登録、公正証書、相続 | 口座開設、預金の払い戻し、各種の引き落とし | 宅配便の受け取り、社内の書類、申込書 |
| 使う頻度 | 年に数えるほど | 手続きのときだけ | 週に何度も |
| なくしたとき | 登録の廃止と登録し直し | 窓口で改印の届け出 | 作り直せば済む |
| 持ち歩き | 必要なときだけ | 手続きのときだけ | 日常的に持つ |
表を縦に見ていくと、実印から認印へ向かうほど使う頻度が上がり、逆に紛失したときの負担は軽くなることが分かります。この関係が、3本を分けて持つ理由そのものです。いちばん持ち歩く印鑑が、いちばん手続きの重い印鑑であってはいけない、と言い換えることもできます。
違いを生むのは、印鑑そのものではなく登録の有無
店頭で「実印用」「銀行印用」と分けて並んでいるのは、その用途で選ばれやすいサイズや素材を組み合わせているためです。印材や彫り方で実印かどうかが決まるわけではありません。買ってきた印鑑を市区町村の窓口へ持っていき、登録の手続きを済ませた時点で、その1本が実印になります。
ただし、実印として登録するには市区町村の条件を満たす必要があります。大きさの制限があり、住民票に記載された氏名と関係のない文字は登録できません。ゴム印のように印影が変わるものも受け付けられません。条件は自治体ごとに違いますので、登録する予定があるなら先に確認してください。登録の手順そのものは実印とは?銀行印・認印との違いと登録までの流れにまとめています。
3種類がそれぞれ登場する場面
違いを理屈で覚えるより、どの場面でどれを出すことになるかを知るほうが早く身につきます。
賃貸住宅の契約は物件によって分かれます。認印で足りるところもあれば、実印と印鑑登録証明書を求められるところもあります。申し込みの前に不動産会社へ確認しておくと、慌てずに済みます。
自分に何本必要かは、これからの予定で決まる
「3本とも今すぐ必要か」と聞かれると、そうとは限りません。いまの立場とこの先の予定によって、必要な本数は変わります。
| いまの立場 | 当面必要 | 近いうちに必要 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 学生 | 認印 | 銀行印 | アルバイトの口座を窓口で開くなら銀行印も要る |
| 新社会人 | 認印・銀行印 | 実印 | 入社手続きと給与口座で使う。実印は契約の前に |
| 一人暮らしを始める | 認印・銀行印 | 実印 | 賃貸契約で実印を求められる物件がある |
| 車や住まいを買う予定 | 3本すべて | — | 実印と印鑑登録証明書が必ず必要になる |
| 結婚・改姓の予定 | 認印 | 姓が確定してから実印・銀行印 | 旧姓で作ると作り直しになる可能性がある |
すぐに3本が要らない場合でも、別々に買い足すより3本セットのほうが費用は抑えられます。素材と直径が揃い、どれがどの用途か見分けやすくなりますので、近いうちに必要になると分かっているならまとめて用意するほうが結局は無駄がありません。
3種類それぞれの選び方
選ぶ基準は3種類で方向が違います。実印と銀行印は「印影を読み取られにくく、長く欠けないこと」、認印は「読みやすく、持ち歩きやすいこと」が軸になります。
| 実印 | 銀行印 | 認印 | |
|---|---|---|---|
| 選べる直径 | 13.5・15・16.5・18mm | 12・13.5・15・16.5・18mm | 10.5・12・13.5・15・16.5mm |
| よく選ばれる直径 | 15mm | 13.5mm | 12mm |
| 彫る名前 | フルネーム | 姓のみ、または名のみ | 姓のみ |
| 向く書体 | 吉相体・篆書体 | 吉相体・篆書体 | 古印体・楷書体 |
| 素材の基準 | 欠けにくさ | 欠けにくさ | 持ち歩きやすさ |
| 決め手 | フルネームでも線が細くならない大きさにする | 実印と印影を分け、一回り小さくする | 押印欄に収まり、相手が読める形にする |
直径は3本に差をつけます。実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mmのように選んでおけば、ケースを開けなくても手に取った太さで見分けられます。姓名を合わせて8文字を超える方は、実印だけ16.5mmにすると線に余裕が出ます。
「辺」と「邊」「邉」、「斉」と「齊」「齋」、「高」と「髙」のように、普段書いている字と戸籍の字が違う方は少なくありません。彫り上がってから気づくと作り直しになり、実印であれば登録そのものができません。
書体は用途で向き不向きが分かれる
当店で選べる6書体を、用途ごとの向き具合で並べると次のようになります。◎がよく選ばれる組み合わせです。
| 書体 | 実印 | 銀行印 | 認印 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 吉相体 | ◎ | ◎ | △ | 文字の線が枠に接する形で、輪郭が欠けにくく字を追いにくい |
| 篆書体 | ○ | ◎ | △ | 最も古い書体のひとつ。紙幣の印章にも使われている |
| 古印体 | ○ | ○ | ◎ | 日本で生まれた書体。線に強弱があり読みやすい |
| 楷書体 | △ | △ | ◎ | 普段書く文字に最も近く、誰が見ても読み取れる |
| 隷書体 | △ | △ | ○ | 横に広がる落ち着いた形。読みやすさと風格の両方がある |
| 行書体 | △ | ○ | ○ | 続けて書く流れのある形で、柔らかい印象になる |
実印と銀行印に読み取りにくい書体が選ばれるのは、印影だけを見て同じものを作ることが難しいためです。逆に認印は相手が確認する書類に押しますので、読める書体のほうが向きます。ただし文字数が多い名前に線の複雑な書体を合わせると印面が詰まり、かえって欠けやすくなります。
素材は欠けにくさと扱いやすさで選ぶ
| 素材 | 欠けにくさ | 向く印鑑 | 特徴と手入れ |
|---|---|---|---|
| 薩摩本柘 | ○ | 認印 | 木目が細かく硬い柘。価格を抑えられる。乾燥を避けて保管する |
| 彩樺 | ◎ | 実印・銀行印 | 木を圧縮して樹脂を加えた素材。乾燥や欠けに強い |
| 黒水牛 | ○ | 実印・銀行印 | 深い黒色と艶。直射日光と乾燥を避け、ケースに入れる |
| 白水牛 | ○ | 実印・銀行印 | 乳白色の模様が1本ずつ違う。黒水牛と同じ手入れでよい |
| チタン | ◎ | 実印 | 摩耗や欠けの心配がほとんどなく、水にも強い。重みがある |
3本セットの場合、素材は3本共通になります。毎日持ち歩く認印と、何十年も保管する実印の両方に納得できるものを選んでください。単品で買うなら、実印だけチタン、認印は柘というように分けることもできます。
よくある5つの誤解
実印は高い素材で作らないと登録できない
素材による制限はありません。柘のような木の印材でも登録できます。ただし実印は何十年も使い、欠けると登録し直しになります。長く使う前提で、欠けにくい素材を選ぶ方が多いというだけです。
シャチハタは認印として使える
ゴム印にインクを染み込ませたもので、押すたびに印影がわずかに変わります。宅配便の受け取りには使えますが、契約書や社内の正式な書類では受け付けないことがほとんどです。「認印」と指定された場合は朱肉を使う印鑑を指しています。
家族で同じ印鑑を使ってもよい
実印は1人につき1本、同じ印鑑を家族で登録することはできません。銀行印も名義人ごとに分けます。姓だけを彫った印鑑を家族で共有すると、誰の意思で押したのか区別がつかなくなります。
実印は大きいほど格が高い
大きさで効力が変わることはありません。直径を選ぶ基準は、彫る文字数に対して線が細くなりすぎないかどうかです。文字数が少ないのに大きな印面を選ぶと、かえって間延びした印影になります。
引っ越しても実印はそのまま使える
印鑑そのものは使えますが、登録は引き継がれません。別の市区町村へ転出すると、その時点で登録は効力を失います。転入先で改めて登録の手続きをしてください。同じ市区町村内での引っ越しであれば、登録は続きます。
兼用してよい組み合わせ、避けたい組み合わせ
3本に分けるのが基本ですが、すべての組み合わせが同じ危険度というわけではありません。
- 1本を複数の金融機関へ届け出るのは一般的です
- ただしなくすと届け出た口座すべてで手続きが要ります
- 口座を分けて管理したい方は2本にする方法もあります
- 押す機会が増えるほど印影が人の目に触れます
- 紛失すると役所と金融機関の両方で手続きが要ります
- 実印は自宅で保管し、必要なときだけ持ち出します
実印と銀行印の兼用も避けてください。どちらも登録している印鑑なので、なくしたときの手続きが二重になります。財産に関わる2つを1本にまとめる利点はほとんどありません。
保管と手入れ
印鑑は消耗品ではなく、何十年も使う道具です。使ったあとのひと手間で状態はずいぶん変わります。
| 場面 | すること | 理由 |
|---|---|---|
| 押したあと | 印面に残った朱肉を柔らかい紙や布で拭き取る | 溜まったまま放置すると細かい部分が埋まり、印影が変わる |
| 持ち歩くとき | ケースに入れ、鍵などと同じポケットに入れない | 硬いものに当たると印面が欠ける |
| 自宅で保管 | 直射日光と乾燥を避ける。暖房の風が当たる場所に置かない | 木や水牛の印材は反りや割れが起きる |
| 実印の保管 | 印鑑登録証とは別の場所にしまう | 2つが揃うと印鑑登録証明書を取得できてしまう |
なくした・欠けたときにすること
印影が変わってしまった場合も、なくした場合と同じ扱いになります。欠けた実印をそのまま使い続けることはできません。
| 種類 | どこへ | 持っていくもの | その後 |
|---|---|---|---|
| 実印 | 住民登録のある市区町村 | 印鑑登録証、本人確認書類 | 登録を廃止し、新しい印鑑で登録し直す |
| 銀行印 | 口座のある金融機関 | 通帳、本人確認書類、新しい印鑑 | 改印の届け出をする。口座ごとに必要 |
| 認印 | 手続きは不要 | — | 新しく作り直す |
実印をなくしたことに気づいたら、できるだけ早く廃止の届け出をしてください。届け出が済むまでは、その印影で証明書が取得できる状態が続きます。手元にないことが分かった時点で動くのが基本です。
3本セットで選べる直径の組み合わせ
セットで注文する場合は、あらかじめ差をつけた4通りの組み合わせから選びます。
| 組み合わせ | 実印 | 銀行印 | 認印 | 向いている方 |
|---|---|---|---|---|
| 小さめ | 13.5mm | 12mm | 10.5mm | 手が小さい方、姓名の文字数が少ない方 |
| 標準 | 15mm | 13.5mm | 12mm | 希望がとくにない方。最も選ばれる |
| やや大きめ | 16.5mm | 15mm | 12mm | 実印に重みを持たせたい方 |
| 大きめ | 18mm | 16.5mm | 13.5mm | 手が大きい方、姓名の文字数が多い方 |
書体やケースまで含めたセットの選び方は、印鑑3本セットの選び方で説明しています。
よくある質問
実印は何歳から登録できますか
多くの自治体で15歳以上と定められています。ただし自治体によって扱いが異なる場合がありますので、お住まいの市区町村の案内をご確認ください。
銀行印は何本まで持てますか
本数の制限はありません。口座ごとに別の印鑑を届け出ることもできますし、1本をすべての口座に使うこともできます。管理のしやすさと、なくしたときの手間を比べて決めてください。
3本とも同じ素材にしなければいけませんか
単品で買う場合は別々の素材で構いません。セットで注文する場合は3本共通の素材になります。並べたときのまとまりを重視するならセット、用途ごとに素材を変えたいなら単品という選び方になります。
認印にフルネームを彫ってもよいですか
彫ること自体はできます。ただ認印は姓だけで足りる場面がほとんどで、文字数が増えると印面が詰まって読みにくくなります。同じ姓の家族と区別したい事情がなければ、姓のみで問題ありません。
印鑑登録証明書はどこで取れますか
市区町村の窓口のほか、コンビニの端末でも取得できます。いずれも印鑑登録証またはマイナンバーカードが必要です。印鑑そのものを持っていっても取得できません。
まとめ|違いは登録先、本数はこれからの予定で決める
実印・銀行印・認印は、市区町村に登録するか、金融機関に届け出るか、どこにも登録しないかという違いだけで分かれます。登録先が違うことで証明の重さが変わり、なくしたときの手続きも変わります。よく使う認印ほど紛失の可能性が高く、めったに使わない実印ほど再登録の負担が重いという関係が、分けて持つ理由です。
選び方は3種類で方向が違います。実印はフルネームを彫れる大きさと、印影を追いにくい書体、欠けにくい素材。銀行印は実印と印影を分けたうえで、実印より一回り小さく。認印は読みやすい書体で、持ち歩きやすい大きさに。どれも共通して、旧字体の確認だけは注文の前に済ませてください。
必要な本数は、いまの立場とこれからの予定で決まります。車や住まいの契約が控えているなら3本すべて、学生なら認印から。すぐに3本が要らなくても、近いうちに必要になると分かっているなら、素材と直径の揃う3本セットでまとめて用意するほうが費用も手間も抑えられます。
用途が決まっている方へ足りない種類だけを単品で選ぶこともできます