CHAPTER 07 サイズ・形・選び方
手彫り印鑑の選び方|完全手彫りと手彫り仕上げの違い
手彫り印鑑を選ぶ前に知っておきたい、完全手彫り・手仕上げ彫り・機械彫りの違いと「手彫り仕上げ」という表示の注意点、注文の前に店に確かめる3つのこと、印材・書体・サイズの選び方を説明します。
公開日: 2026年9月24日 更新日: 2026年9月28日
手彫りの印鑑を探していると、「完全手彫り」「手彫り仕上げ」「手仕上げ」といった似た言葉がいくつも出てきます。名前は似ていても、指している作り方は同じではありません。この記事では、業界団体が定めた呼び名の意味と、当店の印鑑の実際の作り方を分けて説明します。そのうえで、注文の前に店に確かめたいことと、印材・書体・サイズの選び方を紹介します。
当店の印鑑は完全手彫りではなく、「機械で荒彫り+職人による手仕上げ」です。職人が名前に合わせて印影を設計し、彫刻機で荒彫りしたあと、印刀で文字と枠の線を整えます。「手彫り仕上げ」は業界団体の定義にない呼び名なので、広告の言葉だけでは作り方が分かりません。選ぶときは、字をだれが作るか、荒彫りに機械を使うか、仕上げをだれがするかを店に確かめてください。
「手彫り」という言葉が指す範囲
公益社団法人全日本印章業協会は、印鑑の彫刻を「字入れ」「荒彫り」「仕上げ」の3つの工程に分けています。そして、どこまでを人の手で行うかによって呼び名を決めています。下の図では、3つの呼び名を人の手が入る割合の多い順に並べました。
手彫りすべての工程を手で
- 字入れ|職人が手で書く
- 荒彫り|印刀で彫る
- 仕上げ|手で整える
彫刻機を一切使いません。1本に数日かかることもあり、価格もいちばん高くなります。
手仕上げ彫り荒彫りだけを機械で
- 字入れ|職人が手で書く、または字を全面的に直す
- 荒彫り|彫刻機で彫る
- 仕上げ|手で整える
職人が字を設計し、彫る作業の一部を機械が受け持ちます。既製のフォントをそのまま使うより、名前に合わせて線と配置を調整できます。
機械彫り字はフォントのまま
- 字入れ|パソコンの書体
- 荒彫り|彫刻機で彫る
- 仕上げ|機械のまま、または少し手で直す
字を直さずに彫ると、名前と書体が同じなら、ほかの人と同じ印影になることがあります。
公益社団法人全日本印章業協会「彫刻作業工程の定義」をもとに作成。同協会は消費者に向けて、「手彫り仕上げ」という表示に注意を呼びかけています。工程表にない呼び名で、定義でいう「手彫り」とは違うためです。
店で使われる呼び名が、協会の定義と同じとは限りません。「手彫り仕上げ」と書いてあるだけでは、印影の設計、荒彫り、仕上げのどれを人が行うのか分かりません。当店がこの言葉で表しているのは、職人が印影を設計し、彫刻機で荒彫りしたあと、職人が印刀で整える工程です。協会の定義でいう「手彫り」ではありません。
手彫り印鑑を注文する前に、店に確かめる3つのこと
呼び名より、この3つを確かめてください
- 印影をだれが設計するのか職人が名前の字形と画数に合わせて線や配置を調整するのか、既製フォントをそのまま使うのかを確認します
- 荒彫りに彫刻機を使うのか完全手彫りかどうかは、ここで分かれます。当店は荒彫りに彫刻機を使います
- 彫ったあとの仕上げをだれがするのか当店では職人が印刀を使い、文字と枠の縁、線の太さを整えます。彫る前に印影を確かめることもできます
当店では、京印章制作士の池上翠雲が、名前に合わせた印影の設計と、彫刻機で荒彫りしたあとの手仕上げを担当します。荒彫りまで手で行う完全手彫りではありません。京都府印章業協同組合が紹介している伝統的な京印章の工程と、当店の作り方は同じではありません。
当店が印影の設計と手仕上げにこだわる3つの理由
名前に合わせて印影を設計できる既製フォントをそのまま使わない
実印と銀行印は、届け出た印影と照らし合わせて本人かどうかを確かめる印鑑です。ほかの人と同じ印影にならないよう、名前の字形や画数に合わせて、線の太さと配置を1本ごとに調整します。
線がつぶれにくく、枠が欠けにくい仕上げを職人がするから
画数の多い字は線を細く、少ない字は太くして、押したときに線がつぶれたりかすれたりしないようにします。文字が枠に接する場所も決めます。文字が枠を内側から支えるので、枠が欠けにくくなります。
長く使え、欠けたときも直せる作った職人がいるから
実印は一度登録すれば、住まいの購入から相続まで何十年も使います。当店でお作りした印鑑には5年間の保証があり、修理や彫り直しをご案内します。保証の期間が過ぎたあとも、ご相談を承っています。
印材の決め方|手仕上げのしやすさと欠けにくさで選ぶ
当店では荒彫りに彫刻機を使いますが、最後は職人が印刀で文字と枠を整えます。そのため印材は、価格や見た目に加えて、手仕上げのしやすさと欠けにくさも比べてください。柘は印刀で整えやすく、水牛の角は粘りがあるので細い線が欠けにくい素材です。チタンは金属なので専用の彫刻機で加工し、木や角とは仕上げ方が違うため、下の比較には入れていません。
鹿児島県の薩摩地方で育った柘の木で、木の印材では最もよく使われています。木目が細かく、刀が素直に入るので、細い線もくっきり出ます。押したあとに朱肉を拭き、直射日光を避けてしまっておけば長く使えます。
実印15mm 11,900円 / 3本セット 25,200円- 手仕上げのしやすさ
- 欠けにくさ
- 価格の手ごろさ
水牛の角で、粘りがあるので枠が欠けにくい印材です。漆黒の艶があり、どの年代の方が持っても落ち着いて見えます。実印や銀行印によく選ばれています。
実印15mm 15,300円 / 3本セット 30,200円- 手仕上げのしやすさ
- 欠けにくさ
- 価格の手ごろさ
明るい色の水牛の角で、欠けにくさは黒水牛と同じくらいです。透明感のある白に朱肉の赤が映えます。柄のない無地は採れる量が少なく、柄入りより高くなります。
実印15mm 20,400円(柄)・30,000円(無地) / 3本セット 44,200円(柄)- 手仕上げのしやすさ
- 欠けにくさ
- 価格の手ごろさ
朱肉のなじみもよく、何十年も使えるとされる印材です。当店は経済産業省の認定を受けた象牙の取扱店で、標準、特上、極上の3つのランクをご用意しています。
実印15mm 36,100円(標準) / 3本セット 83,300円(標準)- 手仕上げのしやすさ
- 欠けにくさ
- 価格の手ごろさ
迷ったら黒水牛をおすすめします。欠けにくさと価格のつり合いがよく、当店でも人気の高い印材です。費用を抑えて3本をそろえたい方には薩摩本柘が向いています。節目の記念やプレゼントには、白水牛や本象牙もよく選ばれています。
書体の決め方|実印と銀行印は読みにくく、認印は読みやすく
職人が字を作る印鑑では、選んだ書体が字を作るときの手本になります。同じ書体でも、名前によって線の太さや配置は変わります。下の見本は、同じ名前を4つの書体で彫ったものです。
当店では、実印と銀行印には吉相体か篆書体、認印には古印体か隷書体をおすすめしています。ほかに楷書体と行書体があり、篆書体は太と細に分かれるので、選べる書体は全部で7つです。違いは印鑑の書体一覧で見比べてください。
サイズと本数の決め方|名前の文字数と届け出る本数で選ぶ
サイズは、彫る名前の文字数と、ほかの印鑑との大きさの差で決めます。実印には、市区町村ごとに登録できる大きさの条件があります。京都市の場合は、印影が8mm四方より大きく、25mm四方に収まることが条件です。当店の実印は13.5〜18mmなので、どれもこの範囲に入ります。実印をいちばん大きく、銀行印を1段小さく、認印をさらに小さくすると、3本を取り違えにくくなります。
| 種類 | 彫る名前 | 直径の目安 | こんな方は1段大きく |
|---|---|---|---|
| 実印 | フルネームが一般的。姓だけ、名だけでも登録できます | 男性15mm〜16.5mm、女性13.5mm〜15mm | フルネームが5文字以上、画数の多い字が続く |
| 銀行印 | 姓だけ、または名だけ。結婚で姓が変わる方は名だけに | 12mm〜13.5mm | 実印を大きめにした(実印と同じ直径にはしない) |
| 認印 | 姓だけ | 10.5mm〜12mm | 契約書に押す機会が多い |
実印と銀行印を一緒に作る方には、2本セットがあります。届け出る2本を同じ職人が同じ時期に作るので、印影の雰囲気はそろい、直径と彫る名前の違いで見分けられます。3本セットは単品でそろえるより安くなります。黒水牛の実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mmなら、単品の合計31,800円が30,200円です。
注文から届くまでの流れ
- 1印鑑の種類、印材、直径を選ぶ
実印、銀行印、認印、またはセットを選び、印材と直径を決めます。
- 2彫る名前を入力し、書体を選ぶ
姓だけ、名だけ、フルネームのうち、彫りたい形でお名前を入力します。旧字体で彫りたい場合は、住民票に載っている字を備考欄でお知らせください。
- 3職人が印影をデザインする
名前の字の形と画数を見て、線の太さ、配置、枠との接し方を決めます。
- 4希望した方は、印影を確かめる
注文画面の「印影のご確認」で「確認する」を選んだ方には、ご注文の2〜3日後にデザインをメールでお送りします。ご覧いただいてから彫刻に進みます。
- 5機械で荒彫りし、職人が手仕上げする
設計した印影をもとに彫刻機で荒彫りし、職人が印刀で文字と枠の縁を整えます。試し押しと検品を行い、ご注文から通常3〜7営業日で発送します。
- 6お届け
牛革ケース、押印マット、保証書、京印章証明書(本象牙は象牙認定書)を添えてお届けします。セットには朱肉も付きます。送料は無料で、5年間の保証付きです。
職人が印影を設計し、機械で荒彫りしたあと手で仕上げます
京印章は、京都府が伝統工芸品に指定している印章で、当店は「京印章制作處」の認定を受けています。当店の印鑑は完全手彫りではなく、荒彫りに彫刻機を使います。印影の設計と、荒彫りのあとに文字と枠を印刀で整える作業は、京印章制作士の池上翠雲が受け持ちます。
お名前の字の形を見て、線の太さと配置を1本ずつ決めます。対象の商品には京印章証明書をお付けしています。
伝統工芸 京印章についてよくある質問
当店の印鑑は完全手彫りですか
いいえ、完全手彫りではありません。職人が印影を設計し、彫刻機で荒彫りしたあと、印刀で文字と枠を整える手彫り仕上げです。当店の「手彫り仕上げ」は、全日本印章業協会が定める「手彫り」と同じ意味ではありません。
手彫りの印鑑は、押した印影で見分けられますか
字を職人が作ったかどうかは、ある程度見分けられます。職人が字を作った印鑑は、画数に合わせて線の太さが変わり、文字が枠に接する場所も名前ごとに違います。フォントをそのまま彫った印鑑は、線の太さが均一で、どの文字も枠から同じだけ離れています。ただ、荒彫りを手で行ったか機械で行ったかまで、押した印影だけで見分けるのは難しいので、注文の前に店に確かめてください。
手彫りの印鑑は、届くまで何日くらいかかりますか
当店の手彫り仕上げの印鑑は、ご注文から通常3〜7営業日で発送しています。彫る前の印影確認を選ぶと、確認のやり取りの分だけ発送が遅くなることがあります。すべての工程を手で行う完全手彫りは、彫る作業だけで数日かかることもあるので、届く日を店に確かめておきましょう。当店でお作りする場合も、使う日が決まっていれば、ご注文の前に日付を添えてご相談ください。
手彫りの印鑑は、登録や届け出で有利になりますか
手続きで有利になることはありません。市区町村の印鑑登録も金融機関の届出印も、完全手彫りか手彫り仕上げかで扱いは変わりません。登録できる大きさや形などの条件は自治体によって異なるため、登録先の案内を確認してください。
親から受け継いだ印鑑を、彫り直してもらえますか
印材の状態によっては、印面を削って新しく彫り直す「改刻」ができます。象牙や水牛の印鑑は改刻に向いています。ただし、役所や金融機関に届け出ていた印鑑は、彫り直すと印影が変わるため、印鑑登録の廃止や改印の手続きが必要です。詳しくは親から受け継いだ印鑑は使える?をご覧ください。
まとめ|手彫りかどうかを確かめてから、印材・書体・サイズを選ぶ
決める順番は、彫り方の確認、印材、書体、サイズと本数の4段階です。まず、上で挙げた3つのことを店に確かめます。当店の場合は、荒彫りに彫刻機を使い、印影の設計と仕上げを職人が行います。作り方に納得できたら、欠けにくさと予算で印材を選びます。書体は、実印と銀行印なら吉相体か篆書体、認印なら古印体か隷書体が目安です。最後に、名前の文字数で直径を決め、届け出る本数に合わせて単品かセットかを選んでください。
印材から、手彫り仕上げの印鑑を選ぶ
お名前の字の形に合わせて、線の太さと配置を1本ごとに決めます。彫る前の印影確認にも対応。牛革ケース、朱肉、押印マット、保証書、京印章証明書付き。送料無料、5年保証。価格は実印15mmのものです。
薩摩本柘刀が素直に入る木の定番。費用を抑えて3本をそろえたい方に11,900円〜
黒水牛粘りがあって欠けにくい。実印と銀行印にいちばん選ばれています15,300円〜
本象牙彫りに最も向く印材。経済産業省認定の取扱店として扱っています36,100円〜