CHAPTER 02 個人の印鑑
実印の印材(素材)はどう選ぶ?耐久性・押しやすさ・予算で比較
実印の印材(素材)は、薩摩本柘・彩樺・黒水牛・白水牛・チタン・本象牙の中から、欠けにくさ、朱肉のなじみやすさ、予算の3つで選びます。9種類の価格・耐久性・手入れの手間を一覧で比べ、予算別のおすすめと3本セットの価格も紹介します。
公開日: 2026年9月24日
実印を作ろうと素材の一覧を開くと、木、水牛の角、金属、象牙と種類がいくつも並びます。15mmの1本でも、価格は11,900円から53,000円まで幅があります。色や手ざわりで選びたくなるところですが、登録した印影は何十年も使い続けることになります。この記事では、当店で選べる9種類の印材を、耐久性・押しやすさ・予算の3つの基準で比べます。
迷ったら黒水牛です。丈夫で朱肉のなじみもよく、15mmで15,300円と手が届きやすい定番です。手入れをいっさいしたくない方はチタン、鮮明な印影と一生ものの質感を求める方は本象牙をおすすめします。予算を抑えたい方には薩摩本柘があります。
素材を選ぶ3つの基準
耐久性
- 見るところ
- 欠けにくさ、割れにくさ、摩耗しにくさ
- なぜ大事か
- 実印が欠けると印影が変わり、市区町村で登録し直しになる
- 強いのは
- チタン、本象牙、黒水牛・白水牛
押しやすさ
- 見るところ
- 朱肉のなじみ、印影の鮮明さ、手に持ったときの重さ
- なぜ大事か
- 契約の場でかすれると押し直しになり、印鑑登録証明書とも見比べにくくなる
- 押しやすいのは
- 本象牙、黒水牛、チタン
予算
- 見るところ
- 15mmでの価格と、銀行印・認印まで揃えたときの合計
- なぜ大事か
- 銀行印・認印も揃えると、3本の合計で比べることになるため
- 安く抑えられるのは
- 薩摩本柘、彩樺、黒水牛
9種類の印材を一覧で比べる
表の価格は、個人用の実印1本を13.5mmと15mmで作った場合です。星の数は当店の目安です。
| 素材 | 13.5mm | 15mm | 耐久性 | 朱肉のなじみ | 人気 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 薩摩本柘 | 10,700円 | 11,900円 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 鹿児島産の本柘。木目が細かく硬い。木の印材の定番 |
| 彩樺 | 11,600円 | 12,800円 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 白樺を圧縮した木材。反りや割れに強い |
| 黒水牛 | 11,900円 | 15,300円 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | 漆黒の艶。丈夫で、価格も手頃 |
| 白水牛(柄) | 16,700円 | 20,400円 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 乳白色に自然な模様。1本ごとに表情が違う |
| 白水牛 | 27,600円 | 30,000円 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 模様の少ない上品な白。柄入りより希少 |
| チタン | 29,300円 | 31,800円 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | 金属。欠け・摩耗・変形がほぼ起きない |
| 本象牙(標準) | 31,200円 | 36,100円 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | 牙の外側から中間の層を使う。等級の中で最も手頃 |
| 本象牙(特上) | 36,100円 | 40,900円 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | 中心に近い部分を使う。白さが増し、1本の牙から少ししか取れない |
| 本象牙(極上) | 48,200円 | 53,000円 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ほぼ中心の部分を使う。1本の牙から数個しか作れない最高級品 |
木の印材|薩摩本柘・彩樺
木の印材は軽くて手になじみ、9種類の中で価格が最も手頃です。薩摩本柘は鹿児島産の本柘で、柘のなかでも木目が細かく硬いのが特徴です。彫った線がくっきり出て、使い込むほど飴色に変わっていきます。彩樺は白樺を樹脂で圧縮して固めた材で、反りや割れに強く、木目もきれいです。
木なので、乾燥と直射日光は苦手です。暖房の風が当たる場所や車の中に置いたままにすると、ひびが入ることがあります。使ったあとに朱肉を拭き取り、ケースにしまっておけば長持ちします。実印をなるべく安く用意したい方や、3本セットの合計を低めにしたい方に向いています。
角の印材|黒水牛・白水牛
黒水牛と白水牛は角から作る印材で、粘りがあって欠けにくく、朱肉もよくなじみます。黒水牛は漆黒の艶が美しく、当店でも人気の高い素材です。丈夫で印影も鮮明に出るうえ、15mmで15,300円に収まります。
白水牛は乳白色の角で、採れる量が限られています。自然な模様が入る「柄」と模様の少ない無地があり、無地のほうが数が少なく、価格も上がります。上品な質感から、女性の実印やプレゼントにも選ばれています。角は乾燥するとひびが入ることがあるので、木の印材と同じくケースや桐箱にしまってください。
金属の印材|チタン
チタンは強くて錆びにくい金属です。印鑑にすると、欠ける・すり減る・反るといった心配がほぼなくなります。水に濡れても、暖房の風が当たっても傷みません。見た目は朱肉をはじきそうですが、印面を細かく仕上げてあるのでよくなじみ、文字の線までくっきり出ます。
手に持つとずっしり重く、その重みで自然に圧がかかるので、力を入れなくてもむらなく押せます。手入れをいっさいしたくない方や、置き場所に気をつかいたくない方、一生使える道具を求める方に向いています。木や角のような自然の風合いはないので、そこは好みが分かれます。
本象牙|印影の鮮明さでは最高の素材
本象牙は、朱肉のなじみと印影の鮮明さで他の素材を上回る、最高級の印材です。目が細かく詰まって硬いため、何十年使っても印面がほとんどすり減りません。手に吸いつくような質感があり、使い込むほど艶が増していきます。
当店の本象牙は3つの等級に分かれます。牙のどの部分から切り出すかで標準・特上・極上が決まり、中心に近いほど白く緻密で、1本の牙から取れる数が少なくなります。いちばん手頃な標準でも、硬さや朱肉のなじみといった象牙の良さは変わりません。節目の記念やプレゼントには、特上・極上を選ぶ方もいます。
象牙の印材や印鑑を商売として売るには、種の保存法にもとづく「特別国際種事業者」の登録が要ります。当店もこの事業者のひとつで、印鑑ごとに認定証をお付けしています。輸出入はできないため、海外へ持ち出す予定がある方はご注意ください。
押しやすさは、朱肉のなじみと重さで決まる
耐久性の星だけでは分からないのが押し心地です。実印は契約の場で緊張しながら押すことが多いので、一度できれいに押せる素材だと気が楽です。
| 素材 | 朱肉のなじみ | 重さ | 押したときの感触 |
|---|---|---|---|
| 薩摩本柘・彩樺 | ふつう | 軽い | 軽いぶん力加減が要る。捺印マットを使うとかすれにくい |
| 黒水牛・白水牛 | よい | ふつう | 粘りがあり、紙にしっとりと朱肉が移る |
| チタン | よい | 重い | 重みで自然に圧がかかり、力を入れずに均一に押せる |
| 本象牙 | 最もよい | ふつう | 紙への移りがよく、細い線まで鮮明に出る |
どの素材でも、スタンプ台ではなく朱肉を使い、捺印マットを敷いて押すと印影が安定します。実印の印影は、印鑑登録証明書と見比べられます。押すための道具も実印と一緒に揃えておけば、かすれやにじみを防げます。
手入れの手間で比べる
| 素材 | 使ったあと | 保管 | 苦手なこと | 手間 |
|---|---|---|---|---|
| 薩摩本柘・彩樺 | 朱肉を拭き取る | ケースに入れる | 乾燥・直射日光・車内の高温 | 少しかかる |
| 黒水牛・白水牛 | 朱肉を拭き取る | ケースか桐箱 | 乾燥によるひび割れ | 少しかかる |
| チタン | 拭くだけ | 場所を選ばない | 落とすと床や机に傷をつけやすい | ほとんどかからない |
| 本象牙 | 朱肉を拭き取る | 桐箱 | 急な温度差と乾燥 | 少しかかる |
実印を使うのは年に数回ほどです。使わない期間が長いぶん、保管場所で状態が変わります。木・角・象牙の印材は、暖房の風が当たらない引き出しにしまってください。チタンなら、こうした気づかいはほとんど要りません。
予算別のおすすめ
15mmの実印1本の値段で並べると、次の3つの価格帯に分かれます。
20代で作った実印を、定年まで使い続ける方も珍しくありません。15mmで比べると、黒水牛と本象牙(標準)の差は20,800円です。30年使うとすれば、1年あたり700円弱の差になります。長く手元に置く印鑑なので、使う年数で割って比べてみてください。
3本まとめて揃えるなら、同じ素材の3本セットが割安
実印を作るのは、ほかの印鑑もあわせて見直すよい機会です。一緒に注文すると3本とも同じ素材になり、直径に差をつけた組み合わせから選べます。下の表の直径なら、1本ずつ買うより1,400〜4,400円安くなり、注文も1回で済みます。
| 素材 | 実印1本(15mm) | 3本セット(実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mm) | 2本セット(実印15mm・銀行印13.5mm) |
|---|---|---|---|
| 薩摩本柘 | 11,900円 | 25,200円 | 19,100円 |
| 黒水牛 | 15,300円 | 30,200円 | 23,500円 |
| 白水牛(柄) | 20,400円 | 44,200円 | 32,900円 |
| チタン | 31,800円 | 68,400円 | 52,700円 |
| 本象牙(標準) | 36,100円 | 83,300円 | 60,500円 |
直径をいちばん小さくした組み合わせ(13.5mm・12mm・10.5mm)もあります。こちらは薩摩本柘で21,700円、黒水牛で24,300円です。実印だけ象牙にして、ほかの2本は別の素材にしたい場合は、1本ずつご注文ください。
よくある質問
黒水牛と本象牙で迷っています。実用上の差はありますか
どちらも実印として長く使えます。差が出るのは印影の鮮明さと質感です。朱肉をよく含むぶん、細い線まではっきり出るのは本象牙です。予算に余裕があればそちら、費用を抑えたいなら黒水牛です。
チタンは金属探知機や電子機器に影響しますか
日常で困ることはありません。チタンは磁石につかない金属なので、財布の中でカード類と一緒にしても影響しません。空港などの金属探知機では、金属として反応することがあります。
本象牙は今も合法的に買えるのですか
国内では、国の登録を受けた事業者から買えます。当店も登録事業者で、印鑑ごとに認定証をお付けしています。ただし、国外へは持ち出せません。
薩摩本柘は実印には弱すぎますか
そんなことはありません。硬く目の詰まった本柘は、丁寧に扱えば何十年も使えます。乾燥と直射日光を避け、ケースに入れて保管すれば長持ちします。
白水牛の「柄」と無地はどう違いますか
違いは自然な模様が入るかどうかで、耐久性は変わりません。模様の入り方は1本ずつ異なります。無地は数が少ないぶん、価格が上がります。
欠けたり割れたりしたときの保証はありますか
ご購入後5年以内の破損や不具合は、状態を確認したうえで修理や彫り直しをご案内しています。ただし、彫り直すと印影が変わるため、実印は市区町村での登録し直しが必要です。
まとめ|実印の素材を決める順番
はじめに、1本だけ作るのか、銀行印・認印まで揃えるのかを決めます。3本揃えるなら、3本セットの合計で予算を考えます。
次に、保管に気をつかえるかどうかを考えます。手入れをしたくないならチタンです。そうでなければ、予算に合う価格帯の中から、欠けにくさと朱肉のなじみを見比べて1つに絞ります。