CHAPTER 02 個人の印鑑

実印の書体はどう選ぶ?印影見本で比較

実印の書体は吉相体・篆書体・古印体・隷書体・行書体・楷書体の6種類から選びます。印影見本を並べて、読み取りにくさ・欠けにくさ・登録できるかどうかの3つの基準で比較し、実印に向く書体と向かない書体を整理します。

公開日: 2026年9月24日

ウォールナットの机に置かれた筆と硯、和紙の束、閉じた印鑑ケース
実印の書体 読みにくい書体ほど、実印に向いている

実印を注文しようとすると、書体の欄に吉相体、篆書体、古印体などの名前が並びます。見慣れない名前ばかりで、普段の字に近い、読みやすいものを選ぼうとする方もいます。ここでは当店で選べる6書体の印影見本を並べて、実印に向くかどうかを比べます。

先に結論

実印には吉相体か篆書体をおすすめします。どちらも印影を見ただけでは字を読み取りにくく、まねされにくい書体です。迷ったら吉相体にしてください。線が枠を支えるので、いちばん欠けにくくなります。余白のある整った印影が好みなら篆書体です。楷書体や行書体は読みやすいぶん、実印には向きません。

実印の書体を選ぶ3つの基準

認印なら「読みやすいこと」が基準ですが、実印は逆です。次の3つを満たす書体が実印に向いています。

01
印影を見ても、すぐには字を読み取れないこと

実印の印影は契約書や登記の書類に残ります。普段の文字に近い書体ほど、印影を写して同じ印鑑を作られやすくなります。線が複雑で、見ただけでは字を追いにくい書体を選んでください。

02
線が枠に接していて、欠けにくいこと

印鑑は、落としたりぶつけたりすると外側の枠から欠けやすくなります。文字の線が枠につながっている書体なら、その線が支えになって丈夫になります。実印が欠けると印影が変わり、印鑑登録をし直すことになります。

03
印鑑登録で断られないこと

どの書体でも、彫った文字が住民票の氏名と一致していれば登録できます。ただし、極端に崩した字は「文字の判読が容易でない」と判断されることがあります。当店で選べる書体は、どれも実印として登録されてきた実績があります。

6書体を印影見本で比べる

同じ「山田太郎」を6つの書体で彫ると、印影の印象はここまで変わります。下の表では、それぞれが実印に向くかどうかも比べています。

吉相体で彫った印影の見本
吉相体線が枠まで伸びて、印面が埋まる。篆書体と並ぶ実印の定番
篆書体で彫った印影の見本
篆書体最も古い書体のひとつ。枠との間に余白が残り、整って見える
古印体で彫った印影の見本
古印体日本生まれの書体。線に強弱があり、やわらかい印象
隷書体で彫った印影の見本
隷書体横に広がる落ち着いた形。読みやすさが残る
行書体で彫った印影の見本
行書体続けて書く流れのある形。手書きに近い
楷書体で彫った印影の見本
楷書体普段書く文字に最も近い。認印向き
書体実印に向くか読み取りにくさ欠けにくさ印面の詰まり方向いている方
吉相体◎★★★★★★★★★★密迷ったらこれ。縁起を大切にする方にも
篆書体◎★★★★☆★★★★☆中整った印影が好みの方、文字数が多い方
古印体○★★★☆☆★★★☆☆中やわらかい印象を好む方、銀行印と書体を変えたい方
隷書体△★★☆☆☆★★★☆☆疎読みやすさを残したい方
行書体△★★☆☆☆★★☆☆☆疎手書きの風合いを求める方
楷書体△★☆☆☆☆★★☆☆☆疎認印向き。実印にはおすすめしません

吉相体|欠けにくく、まねされにくい書体

吉相体は篆書体をもとに、文字の線を八方向へ広げて枠に接するようにした書体で、印相体とも呼ばれます。印面の中がしっかり埋まり、外側の線が枠を支えるので、6つのなかで最も欠けにくくなります。

字の読み取りにくさも、吉相体がいちばんです。印影を見ても、どこからどこまでが1文字なのか分かりにくいため、まねされにくい実印になります。当店で実印を注文される方も、大半が吉相体か篆書体を選んでいます。開運印鑑では、この線の配置を姓名鑑定にもとづいて決めます。

文字数が多いときは、詰まりすぎに注意

吉相体は印面を線で埋める書体なので、フルネームが7文字以上になると細かくなりすぎることがあります。その場合は直径を16.5mm以上にするか、余白の残る篆書体を検討してください。直径の決め方は実印のサイズはどう選ぶ?にまとめています。

篆書体|紙幣の印章にも使われる古い書体

篆書体は中国の秦の時代に整えられた書体で、日本でも古くから印章に使われてきました。国立印刷局によると、日本のお札に印刷されている「総裁之印」と「発券局長」の印章も篆書体です。お札を見れば、実際の印影を確かめられます。

見た目は吉相体と対照的です。字が枠に接せず、枠との間に余白が残るため、整った落ち着いた印影になります。線は太めと細めから選べ、太めは欠けにくく、細めは繊細で上品な印象になります。名前が長くても窮屈にならないので、7文字以上のフルネームにも向いています。

古印体|やわらかい印象を残したいなら

古印体は、奈良時代ごろの日本の印章に見られる文字をもとに作られた書体です。線の太さに強弱があり、ところどころに丸みや途切れがあって、押した印影に手書きのような温かみが出ます。

字の読みやすさは中くらいで、実印にも使えます。ただ、吉相体や篆書体に比べると印面に余白が多く、まねされにくさでは一歩譲ります。銀行印を吉相体で作っていて、実印は雰囲気を変えたいという方に向いています。

隷書体・行書体・楷書体|実印には向かない理由

この3つは、読みやすさが持ち味です。隷書体は横に広がった安定感のある形、行書体は筆で続けて書いたような流れ、楷書体は普段書く字そのものに近い形です。どれも認印や、社内で押す印鑑に向いています。

ただ、実印に使うと印影から字がすぐ読み取れてしまいます。字の形も単純なので、同じ印影をまねて作るのも難しくありません。線が枠に接する箇所が少なく、枠が欠けやすい点でも実印には向きません。

印鑑の種類向く書体理由
実印吉相体・篆書体印影をまねされにくく、欠けにくい
銀行印吉相体・篆書体・古印体実印と同じく、まねされにくさを優先する。実印と書体を変えると見分けやすい
認印古印体・隷書体・楷書体書類の確認に使うので、誰の印か読み取れるほうがよい

文字の並べ方も決めておく

書体と一緒に決めておきたいのが、文字の並べ方です。実印の場合、フルネームは右に姓、左に名を縦2列で彫るのが一般的です。姓だけ、名だけなら縦1列になります。銀行印には「横書きにするとお金が貯まる」という言い伝えがあり、2文字の名前などを横に彫ることもあります。ただ、実印は縦書きが基本です。

彫る名前並べ方向く直径向く書体
フルネーム(4〜6文字)右に姓、左に名の縦2列15mm・16.5mm吉相体・篆書体
姓のみ(2〜3文字)縦1列13.5mm・15mm吉相体・篆書体
名のみ(2〜3文字)縦1列13.5mm・15mm吉相体・篆書体・古印体

旧字体・異体字は住民票の表記に合わせる

どの書体を選んでも、彫る文字は住民票の表記に合わせてください。「斉」と「齊」「斎」「齋」、「辺」と「邊」「邉」のように、似た字がいくつもある姓は注意が必要です。書体の見本では違いに気づきにくく、彫り上がってから分かることがあります。注文のときは住民票かマイナンバーカードを手元に置き、字を確かめてから指定してください。当店では旧字体・異体字の彫刻にも対応しています。

よくある質問

吉相体と篆書体、どちらにすればよいですか

まねされにくさと欠けにくさを最優先するなら吉相体、余白のある整った印影が好みなら篆書体です。フルネームが7文字以上なら、篆書体のほうが窮屈になりません。

読めない書体で登録を断られることはありますか

吉相体や篆書体は実印によく使われる書体で、通常は断られません。自治体は「文字の判読が容易であること」を条件にしていますが、断られやすいのは、極端に崩した字や欠けた印影です。

銀行印と実印を同じ書体にしてもよいですか

構いません。ただし彫る名前も同じだと印影が似てしまい、取り違えたときに気づきにくくなります。書体を変えるか、実印はフルネーム、銀行印は姓のみというように彫る名前を変えておくと、印影で見分けられます。

ひらがなやカタカナの名前でも吉相体にできますか

できます。ひらがなやカタカナは漢字より線が少なく、そのままでは印面に余白が目立ちます。吉相体では線を枠まで伸ばして配置するので、余白が埋まって落ち着いた印影になります。

3本セットで書体を1本ずつ変えられますか

変えられます。実印と銀行印は吉相体、認印は古印体というように、用途に合わせて1本ずつ指定できます。

印影の見本を注文前に確認できますか

書体ごとの違いは、この記事の見本で確かめられます。お名前の印影は、通常の印鑑なら彫刻の前に確認でき、仕上げの前なら修正も依頼できます。開運印鑑は制作の途中でもバランスを見てデザインを整えるため、原則として事前の印影確認は行っていません。

まとめ|実印の書体を決める順番

まず、候補を吉相体と篆書体の2つに絞ります。やわらかい印象にしたい方は、古印体も候補に入れてください。次に、彫る名前の文字数を数えます。フルネームが7文字以上なら、篆書体にするか、吉相体で直径を16.5mm以上にします。並べ方は、フルネームなら右に姓、左に名の縦2列です。

書体が決まったら、名前の字が住民票の表記と合っているかを確かめてください。旧字体・異体字の指定は、彫り上がってからでは直せません。銀行印や認印も一緒に作るなら、書体か彫る名前を実印と変えておくと、押したときに区別がつきます。

書体が決まったら

6書体から選べる個人用実印をお作りします

吉相体・篆書体・古印体・隷書体・行書体・楷書体のいずれも指定できます。旧字体・異字体にも対応し、13.5mmから18mmの4サイズから選べます。

個人用実印を見る

印影そのものを設計してほしい方へ姓名鑑定にもとづいて吉相体の線の配置を決め、印影を確認してから彫る開運印鑑もあります。

開運実印を見る

銀行印・認印も揃える方へ3本それぞれに書体を指定できます。素材と直径が揃い、1本ずつ買うより抑えられます。

実印・銀行印・認印の3本セットを見る

SOURCES

出典

  1. 独立行政法人国立印刷局「お札に関するよくあるご質問」. https://www.npb.go.jp/product_service/intro/faq.html(2026年9月16日閲覧)
  2. 京都市「印鑑登録」京都市情報館. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html(2026年9月16日閲覧)