CHAPTER 07 サイズ・形・選び方
安い印鑑と高い印鑑の違い|価格差が生まれる4つの理由と選び方
印鑑の値段は、印材、直径、彫る字をだれが作るか、付属品と保証の4つで決まります。100円台の既製品から数万円の象牙まで、価格帯ごとに何が違うのか、宅配便の受け取りから印鑑登録・銀行の届出印まで場面ごとに安い印鑑で足りるかどうかを整理しました。高い印鑑ほど良いとは限らない部分と、安くても譲れない部分を分けて、届け出る実印と銀行印にお金をかけ、認印はセットで抑える配分まで、価格で迷っている方に向けて説明します。
公開日: 2026年9月24日
印鑑は、100円台のものから10万円を超えるものまで、同じ「はんこ」と呼ばれる道具とは思えないほど値段に幅があります。高いものを買えば安心なのか、安いものでも困らないのか。この記事では、印鑑の値段を決めている4つの要素を分けたうえで、価格帯ごとに何が違うのか、どの場面なら安い印鑑で足りるのか、どこにお金をかけると納得できるのかを、はじめて印鑑を買う方に向けて説明します。印鑑選び全体の順番は、印鑑の選び方でまとめています。
印鑑の値段は、印材、直径、彫る字をだれが作るか、付属品と保証の4つで決まります。このうち使い勝手に直結するのは「字をだれが作るか」です。既製品や機械彫りの印鑑は同じ印影がほかにも存在しますが、職人が1本ずつ字を作る印鑑は世の中に1つしかありません。宅配便の受け取りや回覧板なら安い印鑑で足りますが、市区町村に登録する実印と、金融機関に届け出る銀行印は、同じ印影がほかにないことが何より大切です。かける金額に迷ったら、この2本に職人の印鑑を選び、認印はセットで抑える形が、いちばん無駄がありません。
印鑑の値段は、4つの要素で決まります
印鑑の値札を見て「なぜこんなに差があるのか」と感じたら、値段を4つに分けて考えると見通しがよくなります。どれか1つが高いだけで値段は上がりますし、逆に、4つのうち自分に関係のない部分にお金を払っていることもあります。
プラスチックや樹脂の既製品と、柘(つげ)の木、水牛の角、象牙では、材料そのものの値段が違います。同じ直径の実印でも、当店の薩摩本柘は11,900円、象牙の標準は36,100円と、印材だけで3倍の開きがあります。
直径が大きいほど、太い部分から取った材料が要ります。実印の薩摩本柘なら、13.5mmの10,700円から18mmの17,900円まで、直径で7,200円変わります。角や牙は太い部分ほど採れる量が少ないので、差はさらに広がります。
同じ型で大量に作る既製品、パソコンのフォントを彫刻機で彫るもの、職人が名前の字を1本ごとに書いて彫るもの。手間が違うぶん値段も違いますが、それ以上に「同じ印影がほかにあるかどうか」が変わります。
印鑑ケースと朱肉が付くか、桐箱に入るか、欠けたときに彫り直してもらえるか。当店では牛革のケース、朱肉、押印マット、保証書が付き、5年間の保証で修理や彫り直しに対応しています。
ここで1つ覚えておいていただきたいのは、1と2の差は「見た目と長持ちの差」、3の差は「安全の差」だということです。木の印鑑と象牙の印鑑は、押した印影だけを見れば区別がつきません。けれども既製品と職人の印鑑は、印影そのものが違います。
価格帯ごとに、どんな印鑑が買えるか
値段の幅を4つの帯に分けると、それぞれの帯で売られている印鑑の作りがはっきりします。上の帯ほど良いという話ではなく、作り方が違うのだと読んでください。
100円〜数百円
既製品の印鑑
- 同じ型で大量に作られる。三文判とも呼びます
- 樹脂や木の軸に、よくある姓だけ
- 同じ印影のものが、全国にたくさんあります
宅配便の受け取り、回覧板、社内の確認印に
1,000円〜5,000円
フォントを機械で彫る注文品
- 名前を入力すると、パソコンの書体で彫刻機が彫ります
- 珍しい姓やフルネームでも作れます
- 同じ名前と書体なら、同じ印影ができることがあります
急ぎの認印、子ども用の練習の印に
5,000円〜2万円台
職人が字を作る注文品
- 職人が名前の字の形を見て、1本ごとに配置を決めて彫ります
- 柘、水牛、彩樺など、長く使える印材
- 同じ印影は世の中に1つもありません
実印、銀行印、一生使う認印に。当店の中心の価格帯です
3万円以上
希少な印材・大きな直径
- 象牙、模様のない白水牛、チタンなど
- 作り方は5,000円台の職人の印鑑と同じです
- 手触り、色、重さ、傷みにくさで選びます
節目の記念に、贈り物に、代々受け継ぐ実印に
当店の印鑑は、3つ目と4つ目の帯に入ります。認印の薩摩本柘10.5mmが5,800円、実印の薩摩本柘13.5mmが10,700円、実印・銀行印・認印の3本セットが21,700円からです。象牙や白水牛は3万円台からになりますが、字を作って彫る工程は薩摩本柘と同じ職人が同じように行います。印材で値段が変わっても、印影の出来は変わりません。
場面で決める|安い印鑑で足りる場面、職人の印鑑がよい場面
どの印鑑を買うかは、何に押すかで決まります。同じ人でも、荷物の受け取りと不動産の契約では求められるものが違います。主な場面を、安い印鑑で足りるかどうかで並べました。
確認のしるしです。押印の代わりにサインでも受け付けてもらえます。
「見ました」の印です。シャチハタで構わない職場も多くあります。
朱肉の認印を求められます。既製品でも受け付けられますが、内容を認めた印として残る書類ですので、自分だけの認印があると安心です。
全国銀行協会はゴム印やキャラクター印を届出印にできないと案内しています。既製品は届け出できても、同じ印影が世の中に多数あります。預金を守る印鑑ですので、職人の印鑑をおすすめします。
京都市は、同じ形の印鑑が量産されているものは登録できないと案内しています。既製品は登録を断られることがあります。
登録した実印と印鑑証明書で本人の意思を証明する場面です。大きな財産が動きますので、ほかに同じ印影がないことがいちばん大切です。
認印は「どちらでも」に入る場面が多いのですが、内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」では、本人の印鑑が押された文書は本人が作ったものと推定する考え方が、認印にも及び得ると説明されています。認印だからといって効力が軽いわけではありません。契約書や入社の書類に押す認印は、既製品で済ませるより、自分だけの1本を持っておくほうが後々の安心につながります。
高い印鑑ほど良い、ではありません
値段が上がる理由のうち、あなたにとって意味のあるものと、そうでないものを分けておきます。高い印鑑を買ったのに満足できない方の多くは、自分に関係のない部分にお金を払っています。
公益社団法人全日本印章業協会は、印鑑の彫刻を「字入れ」「荒彫り」「仕上げ」の3つの工程に分けて定義しています。字入れとは、彫る字を印面に作る工程で、ここを職人が手で行えば、同じ名前でも同じ印影にはなりません。反対に、パソコンのフォントをそのまま彫った印鑑は、同じ名前と書体を選んだ人と同じ印影になることがあります。実印と銀行印を選ぶときは、印材や直径より先に、字をだれが作るのかを確かめてください。彫り方の違いは手彫りと機械彫りの違いで詳しく説明しています。
印材の価格と、長く使えるかの目安
印材による値段の差は、そのまま「長持ちの差」と「見た目の差」です。当店の実印15mmで、印材ごとの価格を並べました。
安い印鑑が短命だと決まっているわけではありません。既製品でも、認印として引き出しに入れておく分には何年も使えます。差が出るのは、毎日押す、落とす、朱肉を付けたまま放置する、といった扱いを受けたときです。木の印材は乾燥と朱肉の油で反りやひび割れが出ることがあり、樹脂の印材は枠が欠けやすい傾向があります。届け出た実印や銀行印の枠が欠けると、印鑑証明書や届出印の印影と合わなくなり、登録のし直しが必要になります。印材ごとの手入れは実印の素材の比較をご覧ください。
安い印鑑で、あとから困ること
既製品や機械彫りの印鑑を否定するつもりはありません。ただ、安さだけで選んだ方が、あとで作り直しに来られることはよくあります。よくある4つの困りごとを挙げておきます。
作り直しに来られる方に多い理由
- 印鑑登録を断られた京都市の案内のとおり、同じ形が量産されている印鑑は登録できない市区町村があります。急いで登録したい日に窓口で断られると、その日は手続きが進みません
- 家族と同じ印影だった同じ姓の既製品を家族がそれぞれ買うと、印影も同じになります。だれの印かが区別できず、銀行印を家族で分けたい方が困ります
- 枠が欠けて、届け出と合わなくなった樹脂や薄い木の印材は、落としたときに枠が欠けることがあります。銀行印なら改印届、実印なら登録のし直しです
- 珍しい姓や旧字体が売っていない既製品は姓の種類に限りがあります。「髙」「﨑」「邊」のような字は、注文品でないと住民票どおりに彫れません
お金のかけ方の目安|届け出る2本に職人の印鑑を
予算に限りがある方に当店がおすすめしているのは、実印と銀行印に職人の印鑑を選び、認印も同じ印材でセットにする形です。単品で1本ずつ買うより、セットのほうが安くなります。
薩摩本柘で、実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mmをそろえる場合お1人分
- 実印 15mm単品で買った場合
- 11,900円
- 銀行印 13.5mm単品で買った場合
- 8,300円
- 認印 12mm単品で買った場合
- 6,400円
- 単品の合計
- 26,600円
- 3本セットの価格桐箱か化粧箱入り。牛革ケース3つ付き
- 25,200円
セットにすると1,400円お得です。黒水牛なら3本セット30,200円で、単品の合計31,800円より1,600円お得です。13.5mm・12mm・10.5mmの小さめの組み合わせは、薩摩本柘21,700円からになります。
「認印はもう持っているから、実印と銀行印だけ」という方には、実印・銀行印の2本セットがあります。薩摩本柘で16,200円、黒水牛で17,900円からです。反対に、実印はまだ要らないという学生や新社会人の方は、銀行印・認印の2本セットを薩摩本柘11,500円、黒水牛13,000円からご用意しています。セットの選び方は印鑑3本セットの選び方で詳しく説明しています。
よくある質問
安い印鑑は、押した印影を見れば分かりますか
既製品は、同じ姓のものを2本並べると印影がぴったり重なります。文字の太さが均一で、枠との間に余白が同じだけ空いているのも特徴です。職人が彫った印鑑は、名前の字の画数に合わせて線の太さや配置を決めていますので、文字と枠の接し方に1本ごとの違いが出ます。ただ、1本だけを見て見分けるのは難しく、印材の違いは印影からは分かりません。
既製品の印鑑を、実印として登録できますか
市区町村によります。京都市は、同じ形の印鑑が量産されているものは登録できないと案内しています。印影の大きさが8mm四方より大きく25mm四方に収まること、住民票の氏名を表していることなどの条件も設けられています。登録できたとしても、同じ印影がほかにある印鑑を実印にするのは安全の面でおすすめしません。
1万円の実印と3万円の実印で、彫りの出来は違いますか
当店では違いません。薩摩本柘でも象牙でも、同じ職人が同じ工程で字を作り、彫刻し、仕上げます。値段の差は印材と直径によるものです。印材の見た目や手触り、長持ちの度合いに価値を感じる方に高い印材をおすすめしていますが、印影の出来のために高い印材を選ぶ必要はありません。
安い印鑑から高い印鑑に替えるなら、どの順番がよいですか
銀行印、実印、認印の順をおすすめしています。銀行印は預金を守る印鑑で、既製品のまま届け出ている方がいちばん多いからです。改印は、これまでの印鑑と新しい印鑑、通帳、本人確認書類を窓口に持参して手続きします。実印は、車や住まいの購入など登録が必要になる前に用意しておくと、慌てずに済みます。
まとめ|安さで決めてよい場面と、そうでない場面を分ける
印鑑の値段は、印材、直径、字をだれが作るか、付属品と保証の4つで決まります。印材と直径の差は見た目と長持ちの差で、字をだれが作るかの差は安全の差です。宅配便や社内の確認印は安い印鑑で足りますが、金融機関に届け出る銀行印と市区町村に登録する実印は、同じ印影がほかにないことが何より大切です。高い印鑑ほど良いわけではなく、希少な印材や大きな直径は、それを望む方だけが選べばよいものです。かける金額に迷ったら、届け出る2本に職人の印鑑を、認印は同じ印材のセットで。当店では、薩摩本柘の3本セット21,700円から、京印章の職人が1本ずつお作りしています。
値段の差を分かったうえで、必要な本数をそろえる
薩摩本柘から象牙まで、どの印材でも同じ職人が同じ工程で制作します。牛革ケース、朱肉、押印マット、保証書、京印章証明書付き。送料無料、5年保証。ご注文から3〜7営業日で発送します。