CHAPTER 05 印材・素材
薩摩本柘と柘の違い|木の種類・産地・木目・価格で見分ける
印鑑売り場の「薩摩本柘」と「柘」は、名前が似ていても別の木です。薩摩本柘は鹿児島で育つツゲ科の木、柘(アカネ)は東南アジアで育つアカネ科の木です。木目の細かさ、色、彫りやすさ、価格、長く使ったときの傷み方の違いと、売り場での見分け方、用途ごとの選び方、薩摩本柘の価格をまとめました。
公開日: 2026年10月3日
印鑑の売り場では、「薩摩本柘(さつまほんつげ)」と「柘(つげ)」が別の値段で並んでいます。何が違うのか、気になっている方もいるでしょう。「本」が付くほうが上等そうに見えますが、産地が違うだけなのか、木そのものが違うのかは、売り場の表示だけでは分かりません。この記事では、2つの印材を、木の種類と産地、木目と色、彫りやすさ、価格、長く使ったときの傷み方で比べます。そのうえで、売り場で見分ける方法と、用途ごとの選び分けを説明します。
薩摩本柘と柘は、産地が違うだけではなく、木の種類そのものが違います。薩摩本柘は、鹿児島県で育つツゲ科の木です。成長がとても遅く、日本の木のなかでもとくに木目が細かいため、細い線まで欠けずに彫れます。一方、印材の「柘」や「アカネ」は、東南アジアで育つアカネ科の木で、「シャム柘」とも呼ばれます。木目は本柘よりやや粗く、価格は手頃です。何十年も同じ印影を保ちたい実印や銀行印には本柘が向き、柘は日常の認印などに使われます。当店で扱う柘は薩摩産の本柘だけで、実印が10,700円から、3本セットが21,700円からです。
「本柘」と「柘」は、産地ではなく木の種類が違います
まず、呼び名を整理します。印鑑の世界で「柘」と書かれた印材には、2つの意味があります。
ツゲ科のツゲ。日本で育った木です
全日本印章業協会は、柘を「ツゲ科の木を加工したもの」と説明し、緻密な組織と硬さが彫刻に適しているとしています。この本来のツゲが「本柘」です。日本木材総合情報センターの解説によると、ツゲは本州、四国、九州の暖かい地域に生え、色は黄白色から黄褐色です。肌目(木目の細かさ)は「きわめて精」とされています。つまり、木目がとても細かい木です。このうち鹿児島県の薩摩地方で育ったものを「薩摩本柘」と呼びます。
表示の例「薩摩本柘」「本柘」「本つげ」。産地を示して「薩摩」「鹿児島産」と添えられることもあります
アカネ科の木。東南アジアで育った木です
「柘」とだけ書かれた印材や、「アカネ」「シャム柘」と呼ばれるものは、ツゲ科ではなく、アカネ科の木から作られています。タイなど東南アジアで育った木です。「シャム柘」の「シャム」は、タイの古い国名です。見た目がツゲに似た淡い黄色の木なので、その代わりの印材として使われてきました。本柘に比べると木目はやや粗く、価格は手頃です。
表示の例「柘」「つげ」「アカネ」「シャム柘」。「本」の字が付いていなければ、こちらであることが多いです
「本」の字は、本物のツゲという意味です。どちらも木の印材で、手入れの方法も同じですが、木目の細かさと丈夫さに差があります。長く使う印鑑ほど、この差が大きく出ます。
木目の細かさ|成長の遅さが、彫りやすさの差になります
ツゲは、とても成長の遅い木です。幹が1年に太る幅がわずかなため、年輪の間隔が狭く、材がぎゅっと詰まっています。日本木材総合情報センターの解説によると、ツゲの気乾比重は0.75から0.95で、重く硬い木です。用途には、櫛、版木、将棋の駒とともに印鑑が挙げられています。いずれも、細かい細工をして、長く形を保つことが求められる道具です。
水を1としたときの重さ。1に近いほど材が詰まっています
- 生えている場所本州・四国・九州の暖かい地域
- 肌目(木目の細かさ)きわめて精
- 主な用途櫛、版木、将棋の駒、印鑑
出典:日本木材総合情報センター「ツゲ」(木材の種類と特性)。
図は木目の間隔の違いを分かりやすく表したもので、実物の縮尺ではありません。
印鑑を彫る職人には、この木目の差がはっきり分かります。実印に多い篆書体や吉相体(印相体)は、細い線が入り組んだ書体です。繊維の詰まった本柘なら、線の端まで思いどおりに彫れます。繊維の粗い木では、彫っている途中で線の端がぽろりと欠けることがあり、そこを避けて彫ると、文字の線が少し太くなります。
薩摩本柘と柘(アカネ)を7つの点で比べる
ツゲ科の木。「本柘」の「本」は、本物のツゲという意味です
木の種類アカネ科の木。色が似ているため、ツゲの代わりに使われてきました
鹿児島県の薩摩地方。古くから植えて育てられてきた木です
産地タイなど東南アジア。「シャム柘」とも呼ばれます
淡い黄色。使い込むと少しずつ飴色になります
色淡い黄色で、やや赤みを帯びることがあります
とても細かく、印鑑にするとほとんど見えません
木目本柘よりやや粗く、筋が見えることがあります
細い線の端まで欠けずに彫れます。実印の篆書体や吉相体に向いています
彫刻太めの線の書体なら問題なく彫れます。細い線は欠けやすい傾向があります
繊維が詰まっているぶん、朱肉の油がしみ込みにくく、枠が欠けにくい木です
長く使ったとき繊維がゆるいぶん、油がしみ込みやすく、枠の欠けやすり減りが出やすくなります
柘(アカネ)より高めです。当店では実印10,700円〜、3本セット21,700円〜
価格本柘より手頃です。当店では扱っていません
どちらが上というより、向いている用途が違う印材です。ただ、実印や銀行印のように長く使う印鑑なら、繊維の詰まった本柘のほうが欠けにくく安心です。当店が柘の印鑑に薩摩産の本柘だけを使っているのも、このためです。薩摩本柘そのものの特徴や手入れは、薩摩本柘の印鑑とは?で詳しく説明しています。
本柘と柘を売り場で見分ける4つの方法
本柘も柘も淡い黄色の木なので、ぱっと見では区別がつきません。次の4つを確かめると、見分けやすくなります。
表示の名前「本」の字があるか
本柘なら「本柘」「薩摩本柘」「本つげ」。産地の鹿児島や薩摩が添えてあれば、より確かです
柘(アカネ)なら「柘」「つげ」「アカネ」「シャム柘」。「本」の字がなければ、こちらの可能性が高くなります
木目の見え方筋が見えるか
本柘なら木目がほとんど見えず、側面がなめらかな一色に見えます
柘(アカネ)なら側面に、細い筋のような木目が見えることがあります
色味黄色か、赤みがあるか
本柘なら淡い黄色で、少し緑がかって見えることもあります。使い込むと飴色になります
柘(アカネ)なら黄色にやや赤みやオレンジ色を帯びていることがあります
価格木の印材のなかで高いか安いか
本柘なら柘(アカネ)より高めの価格です。同じ店に両方並んでいれば、高いほうが本柘です
柘(アカネ)なら木の印材のなかでは、いちばん手頃な価格で並んでいることが多いです
ツゲは、漢字で「柘」「柘植」「黄楊」と書きます。どれも同じ木を指しますが、印材の表示では「柘」の1字が使われることが多く、そこにアカネ科の木も含まれるようになりました。「柘植」や「黄楊」と書かれていても、本物のツゲかどうかは「本」の字や産地の表示で確かめてください。迷ったときは、店に「ツゲ科の本柘ですか」と尋ねるのがいちばん確かです。
用途別|本柘にするか、柘でもよいか
実印市区町村に登録し、不動産や車、相続の書類に押します。一度登録すると、長く使い続ける印鑑です
向いている登録はできるが、欠けやすい銀行印口座ごとに届け出て、長く使います。枠が欠けると改印の手続きが要ります
向いている届け出はできるが、欠けやすい認印宅配便の受け取りや書類の確認など、ふだんの場面で押します
向いている使える会社の角印請求書や領収書に毎日押します。直径が大きいので、木の印材だと価格を抑えられます
向いている線の太い書体なら使えるお子様の初めての印鑑大人になるまで何年もしまっておくことがあります
向いている使えるが、乾燥でひびが入りやすい就職や結婚のお祝い受け取った方が何十年も使うことを考えて選びます
向いている贈り物には不向き京都市の案内では、登録できない印鑑の例として、ゴム印のように押すたびに形が変わりやすいものが挙がっています。木の印材を登録できないとする項目はありません。本柘でも柘でも、大きさや彫る文字などの条件を満たせば実印にできます。2つの差が出るのは、実印にしたあと、何十年も同じ印影を保てるかどうかです。
薩摩本柘の価格|実印1本から3本セットまで
薩摩本柘は柘(アカネ)より高めです。それでも当店の個人用の印鑑では、水牛の角や象牙を含めたすべての印材のなかで、いちばん手頃な価格です。
薩摩本柘の実印|直径ごとの価格
銀行印は12mmが6,400円、13.5mmが8,300円です。認印は10.5mmが5,800円、12mmが6,400円です。どれも印鑑ケースが付き、送料は無料です。
進学や就職、結婚で印鑑をひととおり揃える方には、3本セットをおすすめしています。3本とも同じ木なら、手入れの方法も1通り覚えるだけで済みます。ケースの色は1本ずつ選べますので、色を変えておけば取り違えを防げます。
手入れは、本柘でも柘でも同じです
どちらも木の印材なので、朱肉の油と急な乾燥が苦手な点は同じです。押したあとはティッシュで印面を軽く押さえて朱肉を拭き取り、使い終わったらケースにしまいます。直射日光が差す窓際や、エアコンの風が当たる場所には置かないでください。水で洗ったり、濡れた布で拭いたりするのも避けます。
違いが出るのは、同じように扱ったときの傷み方です。繊維の詰まった本柘は油がしみ込みにくく、年数がたっても枠の欠けやすり減りが出にくくなります。手入れの詳しい手順は、薩摩本柘の印鑑とは?の手入れの項をご覧ください。当店の印鑑には5年間の保証が付いています。ご購入から5年以内に破損したときは、状態を確認したうえで修理や彫り直しをご案内します。
木の印材をもう1つ選ぶなら、彩樺という選択肢もあります
当店の木の印材には、薩摩本柘のほかに彩樺(さいか)があります。樺(バーチ)の木を樹脂で固めた複合の木材で、赤みのある木目が特徴です。価格は実印15mmが12,800円、3本セット(実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mm)が27,400円です。同じ直径の薩摩本柘より、少し高くなります。淡い黄色の本柘か、赤みのある彩樺か、好みの色で選べます。木の印材の選び方は、動物由来の素材を避けて印鑑を贈るでも説明しています。
よくある質問
「本柘」と書いてあれば、すべて薩摩産ですか
そうとは限りません。「本柘」は本物のツゲという意味で、産地までは表していません。鹿児島以外で育ったツゲも、本柘と呼ばれます。産地を確かめたいときは、「薩摩本柘」「鹿児島産」の表示があるかを見てください。当店の本柘は、すべて薩摩産です。
柘(アカネ)の印鑑を、実印として登録できますか
大きさや彫る文字などの条件を満たしていれば、登録できます。京都市の案内でも、登録できないのはゴム印のように形が変わりやすいものなどで、木の印材は対象に入っていません。ただ、実印は一度登録すると長く使い続ける印鑑です。何十年も使うつもりなら、欠けにくい本柘のほうが安心です。
今持っている印鑑が本柘か柘か、調べる方法はありますか
買ったときの保証書や箱に印材名が書いてあれば、それがいちばん確かです。手元に何もない場合は、木目の見え方と色が手がかりになります。側面がなめらかな一色なら本柘、筋のような模様が見えたり赤みを帯びていたりすれば柘の可能性があります。確実に知りたいときは、印章店で見てもらってください。
黒い木の「黒檀」や、赤い木の「彩樺」は、柘の仲間ですか
別の木です。黒檀はカキノキ科の黒い木、彩樺は樺の木を樹脂で固めた複合の木材です。どちらもツゲ科ではありません。当店で扱っている木の印材は、薩摩本柘と彩樺の2つです。
本柘の印鑑は、どのくらい使えますか
押したあとに朱肉を拭いてケースにしまう、という扱いを続ければ、10年、20年と使えます。ご両親から譲られた本柘の実印を今も使っている方もいらっしゃいます。枠が欠けたり、すり減ったりしたときの見分け方は、印鑑の買い替え時期の目安をご覧ください。
まとめ|本柘か柘かは、使う年数で決めます
まず、その印鑑を何年使うかを考えます。実印や銀行印のように何十年も使い続ける印鑑なら、繊維の詰まった薩摩本柘を選びます。日常の認印で、傷んだら気軽に作り替えるつもりなら、柘という選択肢もあります。
次に、表示を確かめます。「本柘」「薩摩本柘」とあれば本物のツゲ、「柘」「アカネ」「シャム柘」だけならアカネ科の木です。表示で判断できなければ、店に木の種類を尋ねてください。
最後に、本数と直径を決めます。実印・銀行印・認印をひととおり揃えるなら、3本セットが割安です。実印の直径は、女性なら13.5mmか15mm、男性なら16.5mmか18mmを選ぶ方が多くいらっしゃいます。
薩摩本柘の印鑑を選ぶ
当店の柘の印鑑は、すべて薩摩産の本柘です。実印、銀行印、認印を1度に揃えられる3本セットがいちばん割安です。印鑑ケース付き、送料無料、5年保証。ご注文から3〜7営業日で発送します。
薩摩本柘 3本セット(実印・銀行印・認印)21,700円〜 →