CHAPTER 16 印鑑の贈り物・マナー
動物由来の素材を避けて印鑑を贈る|木・金属の印材とケース選び
印鑑の素材には、水牛の角や象牙のように動物から採れるものと、柘や彩樺のような木、チタンのような金属があります。相手が動物由来の品を避けている場合に、印鑑本体とケースをどう選べばよいかを説明します。当店で選べる薩摩本柘・彩樺・チタンの特徴と価格、香木の白檀、石の印材の一般的な性質、牛革が標準のケースをどう扱うか、相手への確かめ方までまとめました。
公開日: 2026年9月26日
印鑑の素材と聞いて思い浮かぶのは、黒水牛や象牙ではないでしょうか。どちらも動物から採れる材料です。贈る相手がベジタリアンやヴィーガンだったり、宗教や動物保護の考えから動物由来の品を避けていたりすると、「印鑑は贈れないのでは」と心配になります。けれども印鑑の素材は動物由来のものだけではありません。この記事では、印鑑の素材を「動物から採れるもの」と「そうでないもの」に分けて整理し、当店で選べる木と金属の印材、香木の白檀、石の印材の一般的な性質、見落としやすいケースの素材、そして相手の考えを角が立たないように確かめる方法を説明します。
印鑑本体は、木の薩摩本柘か彩樺、金属のチタンを選べば、動物由来の材料を使わずに贈れます。実印として登録するときも、銀行に届け出るときも、素材による制限はありません。見落としやすいのはケースです。当店の標準ケースは牛革ですので、革も避けたい相手にはご注文時の備考欄でご相談ください。初めて印鑑を持つ相手なら、薩摩本柘の3本セットが21,700円から、彩樺が23,700円から、チタンが54,900円からです。
印鑑の素材は、動物から採れるものとそうでないものに分かれます
印鑑の材料は、大きく3つの出どころに分かれます。動物の角や牙、木や香木といった植物、そして金属や石です。まず、どの素材がどこから来ているのかを一覧にします。
- 黒水牛水牛の角。粘りがあり欠けにくい、いちばん選ばれている印材当店で選べます
- 白水牛明るい色の水牛の角。1本ごとに模様が違う当店で選べます
- 本象牙象の牙。国内では登録された事業者だけが扱える当店で選べます
- 牛革のケース印鑑ケースの標準の素材。トカゲ革のケースも動物由来標準のケース
- 薩摩本柘鹿児島で育ったツゲの木。木の印材の定番当店で選べます
- 彩樺バーチ(樺)の木を樹脂で固めた複合の木材。反りにくい当店で選べます
- 白檀香りのある木。当店では開運印鑑の印材として開運印鑑で選べます
- 黒檀・アグニなど硬い木や着色した木。ほかの店で見かける印材当店では扱いなし
- チタン軽くて強い金属。さびず、欠けず、手入れが要らない当店で選べます
- 水晶・瑪瑙などの石透明感がある。硬いが割れやすく、落とすと欠ける当店では扱いなし
- 樹脂(アクリルなど)安価で色が豊富。既製の認印に多い当店では扱いなし
動物由来の素材を避けたい相手には、右の2列から選ぶことになります。当店では、木の薩摩本柘と彩樺、金属のチタンを、実印・銀行印・認印のどれでも同じ印面設計と彫刻でお作りしています。彫る職人も工程も、黒水牛や象牙を彫るときと変わりません。素材だけが違う、と考えていただいて大丈夫です。
木や金属の印鑑でも、実印の登録と銀行の届け出はできます
「木の印鑑は実印にできないのでは」と心配される方がいますが、素材で登録が断られることはありません。京都市の案内では、登録できない印鑑として、ゴム印のように押すたびに形が変わるもの、同じ形が量産されているもの、外枠がなく印影が照合しにくいものなどが挙げられています。柘やチタンで職人が1本ずつ彫った印鑑は、どれにも当てはまりません。銀行の届出印についても、全国銀行協会の案内で使えないとされているのは、ゴム印のような変形しやすい素材と、多くの人が同じ物を持つキャラクターものの印鑑です。素材が木か角か金属かは問われていません。
素材で変わらないこと
- 実印としての登録。市区町村は素材ではなく、印影の大きさや鮮明さを見ます
- 銀行印としての届け出。変形しない素材であれば受け付けられます
- 職人の印面設計と彫刻の工程。字入れ、荒彫り、仕上げは印材が何であっても同じです
- 当店の5年保証。木でもチタンでも、欠けや傷みは修理と彫り直しの対象です
素材で変わること
- 重さと押し心地。木は軽く、チタンはずっしりと重い
- 長持ちのしかた。木は乾燥と朱肉の油で傷みやすく、チタンは手入れが要らない
- 色と手ざわり。木の色は使ううちに深まり、チタンは変わらない
- 価格。実印15mmで薩摩本柘11,900円、彩樺12,800円、チタン31,800円
木の印材2つ|薩摩本柘と彩樺
木の印材は、動物由来を避けたい相手にいちばん自然に受け取ってもらえる選択肢です。当店には薩摩本柘と彩樺の2つがあります。どちらも木ですが、性格は少し違います。

薩摩本柘さつまほんつげ
鹿児島の薩摩地方で育ったツゲの木です。木の中では目が詰まって硬く、櫛や将棋の駒にも使われてきました。蜂蜜のような色で、使ううちに飴色に深まります。木の印材の定番で、費用を抑えて3本を揃えたい方に向きます。
実印15mm 11,900円 / 3本セット 21,700円〜
彩樺さいか
バーチ(樺)の木の薄い板を重ね、樹脂を含ませて高い圧力で固めた複合の木材です。天然の木より反りや割れが出にくく、赤茶の縞模様がはっきり出ます。木の見た目と丈夫さの両方を求める方に選ばれています。
実印15mm 12,800円 / 3本セット 23,700円〜
チタンちたん
軽くて強い金属で、さびず、欠けず、反りません。手入れをまったく気にしなくてよい印材です。つや消しの銀色は男女どちらの手にも合い、重みがあるので印面が紙にしっかり当たります。
実印15mm 31,800円 / 3本セット 54,900円〜薩摩本柘は、日本木材総合情報センターの解説でも、木質が緻密で均一な硬い木として紹介されています。木の印材に向く性質そのものです。ただ、木である以上、乾燥した場所に長く置くと割れることがあり、朱肉の油が染み込むと印面が傷みます。押したあとに朱肉を拭き取り、ケースに入れて保管する。この2つを守れば、何十年も使えます。詳しい手入れは薩摩本柘の印鑑とは?特徴・価格・寿命を延ばす手入れの方法にまとめています。
彩樺は、木でありながら樹脂で固めてあるため、乾燥による割れの心配が薩摩本柘より少ない印材です。「木の印鑑を贈りたいが、相手が手入れをしそうにない」というときは彩樺が合います。なお、彩樺は木と樹脂を組み合わせた材料ですので、「天然の木そのもの」にこだわる相手には薩摩本柘をおすすめします。
金属の印材|チタンは手入れが要りません
チタンは、動物由来の素材を避けたい相手に贈る印材として、木とは別の理由で向いています。手入れが要らないことです。木は乾燥と油に気をつける必要がありますが、チタンは引き出しにしまったままでも、湿気の多い場所に置いても、変わりません。落としても欠けません。押し心地も独特で、重みがあるぶん力を入れなくても印面が紙に均等に当たり、はっきりした印影になります。
軽く、手になじみます。朱肉を拭き取ってケースにしまう習慣があれば長く使えます。木の色が年々深まるのを楽しめる印材です。
実印15mm 11,900円 / 銀行印13.5mm 8,300円 / 認印12mm 6,400円- 軽さ
- 手入れの手軽さ
- 欠けにくさ
樹脂で固めてあるので、乾燥で割れる心配が少ない木材です。縞模様がはっきりしていて、贈り物として開けたときの見栄えもよい印材です。
実印15mm 12,800円 / 銀行印13.5mm 9,100円 / 認印12mm 7,000円- 軽さ
- 手入れの手軽さ
- 欠けにくさ
さびず、欠けず、反りません。手入れを気にせずに何十年も使える印材です。重さがあるので、印面が紙に均等に当たり、押しやすさも際立ちます。
実印15mm 31,800円 / 銀行印13.5mm 23,700円 / 認印12mm 16,600円- 軽さ
- 手入れの手軽さ
- 欠けにくさ
価格は木の3倍近くになりますが、手入れが要らず、一生そのまま使えることを考えると、「動物由来を避けて、しかも長く使える印鑑を」という相手にはチタンがいちばん合います。予算に余裕があれば、実印だけをチタンにして、銀行印と認印を薩摩本柘にするという組み合わせもあります。
香木の白檀と、石の印材について
木と金属のほかに、動物由来ではない印材として名前が挙がるのが、香木の白檀と、水晶や瑪瑙などの石です。
- お香の原料にもなる木で、印鑑にすると押すたびにほのかに香ります
- 色は淡い黄褐色で、木目はおとなしく、上品な見た目です
- 当店では、姓名鑑定をもとに印面を設計する開運印鑑のラインでお作りしています。開運実印15mmで36,300円です
- 植物由来の印材で、木の中では最も高価な部類に入ります
詳しくは白檀の印鑑とは?香り・色・価格と長く使うための手入れで説明しています。
- 石の印材は硬いのですが、粘りがないため、落とすと割れたり欠けたりしやすいのが一般的な性質です
- 重くて冷たい手ざわりで、押し心地はチタンに近い印象です
- 欠けた石の印材は、木や角のように削って彫り直すことが難しく、作り直しになることが多いです
- 当店では石の印材を扱っていませんので、石をご希望の場合は取り扱いのある店でお求めください
見落としやすいのはケースです
印鑑本体を木や金属にしても、ケースが革では、動物由来の品を避けている相手には中途半端な贈り物になります。当店の印鑑ケースは、牛革の黒と赤が標準で、カラーの牛革10色、本トカゲ皮、牛革に亀甲模様をあしらった本カメ皮と、いずれも革を使っています。革以外の素材のケースは、いまのところ用意がありません。
ケースをどうするか、3つの方法
- 1ご注文時に、備考欄で相談する
「革のケースを避けたい」と備考欄にお書きください。ご注文の内容に合わせて、ケースの扱いをご相談のうえでお作りします。先にお問い合わせいただいても構いません。
- 22本・3本セットなら、桐箱や化粧箱に入れて贈る
2本セットと3本セットには、印鑑箱として桐箱か化粧箱を追加料金なしで付けられます。桐は木、化粧箱は紙ですので、革を使わずに贈り物の形が整います。
- 3布の袋や木の小箱を、贈る側で用意する
印鑑は直径15mm、長さ60mmほどの小さな道具です。麻や綿の巾着、桐の小箱など、相手の考えに合う入れ物を贈る側で添える方法もあります。
朱肉は、一般に顔料と油、植物の繊維から作られていますので、動物由来の材料は使われていないのが普通です。ケースに付属する朱肉を避けたい場合も、備考欄でお知らせください。
相手の考えを、角が立たないように確かめる
動物由来の素材を避ける理由は人それぞれです。ベジタリアンやヴィーガンで、革や角も含めて避けている人。宗教上の理由で、特定の動物の材料を避けている人。象牙のように、動物保護の観点から避けている人。どこまで避けているかは、本人に確かめるのがいちばんです。ただ、「印鑑を贈るつもりだが動物の素材は大丈夫か」と聞くと、贈り物が伝わってしまいます。品物を伏せたまま確かめる聞き方を挙げます。
「財布とか革の小物って、使ってる? 革は避けてるって聞いた気がして」革を避けているかどうかが分かれば、印鑑ケースの扱いが決まります。角や牙まで避けているかは、革を避けている人ならほぼ同じです
「お店を予約したいんだけど、食べないものってある? 持ち物とかでも避けてるものがあれば教えて」食事の確認は自然な会話です。持ち物の話を添えれば、素材の考え方まで聞けます
「あの人、動物の素材はどこまで避けてるか知ってる? 革はだめでも、木や金属なら大丈夫かな」本人に聞けないときは、周りの人に聞きます。答えが分からなければ、木とチタンのどちらかにして、ケースは備考欄で相談する形がいちばん安全です
迷ったら、印鑑本体は木かチタン、ケースは革を避ける形でご相談ください。この組み合わせなら、どの考えの相手にも失礼になりません。印鑑を贈る前に確かめておきたいことは、素材のほかにもあります。すでに持っていないか、名前の字はどう書くか、といった点は印鑑のプレゼントは嬉しくない?贈る前に確認したい5つのことにまとめています。
象牙について、知っておきたいこと
象牙は、動物由来の素材の中でも別格に扱われることが多い印材です。ワシントン条約で国際的な取引が禁止されている一方、国内では、環境省の案内にあるとおり、全形の牙は登録が義務づけられ、象牙製品を業として扱う事業者は特別国際種事業者として届け出る仕組みになっています。当店も経済産業省認定の象牙取扱店として、この仕組みの中で象牙の印鑑をお作りしています。合法であることと、相手が受け取れることは別の話です。動物保護の考えから象牙を避けている相手には、どれほど上質でも象牙は選ばないでください。象牙の印鑑の詳しい仕組みは象牙の印鑑とは?特徴・6つのランクと価格・購入前に確かめることで説明しています。
相手のタイプ別の、素材とケースの組み合わせ
ここまでの内容を、相手の考え方ごとの組み合わせにまとめます。印鑑は、実印・銀行印・認印の3本を同じ印材で揃えると、持ち物としてもまとまりが出ます。
印鑑は薩摩本柘か彩樺、チタン。ケースは備考欄で相談し、2本・3本セットなら桐箱か化粧箱に入れて贈ります。
薩摩本柘3本セット 21,700円〜、チタン3本セット 54,900円〜避けている動物が牛なら、黒水牛・白水牛と牛革ケースを避け、木かチタンにします。象牙は象の牙ですので、牛を避ける相手には差し支えないことが多いのですが、必ず確かめてください。
彩樺3本セット 23,700円〜、チタン実印15mm 31,800円黒水牛や白水牛は水牛の角で、一般に食肉の副産物として利用されている材料です。抵抗がなければ黒水牛が定番です。角も避けたいなら木かチタンにします。
黒水牛3本セット 24,300円〜、薩摩本柘3本セット 21,700円〜木かチタンにして、ケースは革を避ける形で備考欄に書いておけば、どの考えの相手にも合います。木の手入れが心配なら彩樺かチタンを。
彩樺実印15mm 12,800円、チタン銀行印13.5mm 23,700円よくある質問
木の印鑑は、黒水牛より早く傷みますか
手入れをしなければ、木のほうが傷みやすいのは確かです。乾燥で割れたり、朱肉の油が染みて印面がもろくなったりします。ただ、押したあとに朱肉を拭き取り、ケースに入れて保管する習慣があれば、実印や銀行印のように押す回数が少ない印鑑は何十年も使えます。手入れの手間をなくしたいなら、木の見た目で反りに強い彩樺か、手入れの要らないチタンをおすすめします。
チタンの印鑑は、金属アレルギーの人でも大丈夫ですか
チタンは、医療用のインプラントや眼鏡のフレームにも使われるほど、金属の中ではアレルギーを起こしにくいとされる素材です。ただし体質は人それぞれですので、金属アレルギーがあると分かっている相手には、木の印材を選ぶほうが安心です。
薩摩本柘と彩樺で、印影に違いは出ますか
印面の設計と彫刻は同じ職人が同じ工程で行いますので、印影の設計に違いはありません。木質はどちらも緻密で、線のきれいさも変わりません。違いが出るのは、印材の色と模様、そして乾燥への強さです。印影で選ぶのではなく、見た目の好みと手入れの手間で選んでください。
印鑑箱の桐箱に、動物由来の材料は使われていませんか
桐箱は桐の木で作られ、化粧箱は紙の箱です。どちらも動物由来の材料は使っていません。ただし2本セット・3本セットに付けられる箱で、単品には付きませんので、単品を贈る場合は布の袋などを贈る側で用意していただくか、備考欄でご相談ください。
まとめ|本体は木かチタン、ケースは相談して贈る
印鑑の素材には、水牛の角や象牙のように動物から採れるものと、柘や彩樺のような木、チタンのような金属があります。動物由来の素材を避けている相手には、薩摩本柘、彩樺、チタンのいずれかを選べば、印鑑本体に動物の材料は一切使われません。実印の登録も銀行の届け出も、素材で断られることはありません。見落としやすいのはケースで、当店の標準は牛革ですので、革も避けたい相手にはご注文時の備考欄でご相談ください。2本・3本セットなら、桐箱か化粧箱に入れて贈る形が整います。どこまで避けているかは、革小物や食事の話題から自然に確かめ、分からなければ木かチタンにしておけば失礼になりません。
木とチタンの印材で、職人が1本ずつお作りします
薩摩本柘、彩樺、チタンは、実印・銀行印・認印のどれでも、黒水牛や象牙と同じ職人が同じ工程で印面を設計し、彫刻します。素材が違うだけで、印影のきれいさは変わりません。牛革のケースを避けたい場合は、ご注文時の備考欄にお書きください。送料無料、5年保証。
実印1本だけなら 薩摩本柘 11,900円〜、彩樺 12,800円〜、チタン 31,800円〜(いずれも15mm)。ケースや箱の扱いは お問い合わせ からもご相談いただけます。