CHAPTER 05 印材・素材

薩摩本柘と黒水牛の違い|価格・丈夫さ・手入れ・向く用途を比較

薩摩本柘と黒水牛の違いを、素材、見た目、重さ、欠けにくさ、朱肉のなじみ、苦手なもの、価格の7つで比べます。実印15mmで3,400円、3本セットで5,000円の差額で何が変わるのか、10年後の色の変わり方、実印・銀行印・認印・会社印・贈り物にどちらが向くかも説明します。

公開日: 2026年10月3日

灰色の石の台の上に、左は淡い黄色の薩摩本柘の印材と開いた茶色の革の印鑑ケース、右はつやのある黒水牛の印材と金縁の黒い革ケースを置き、中央に真ちゅうの天秤、椿油の小瓶、白い布を添えた様子
薩摩本柘と黒水牛 木と角。手頃な価格の2つの印材は、何が違うのでしょうか

印鑑の素材を選ぶ画面で、最初に並んでいるのが薩摩本柘と黒水牛です。実印15mmで比べると、価格の差は3,400円です。「この差額で何が変わるのか」「安いほうを選んで困ることはないか」が気になるところでしょう。この記事では、木でできた薩摩本柘と、水牛の角でできた黒水牛を、素材から価格まで7つの点で比べます。そのうえで、差額で変わること、10年後の姿、用途ごとにどちらが向くかを説明します。

先に結論

薩摩本柘は鹿児島で育ったツゲの木、黒水牛は水牛の角から作る印材です。どちらも実印や銀行印に使え、職人が彫る細い線もきれいに出ます。違いが出るのは、落としたときの欠けにくさ、朱肉の油のしみ込みにくさ、重さと手触り、色の4つです。粘りのある黒水牛は枠が欠けにくく、油も吸いにくいため、何十年も使う実印や銀行印に向いています。薩摩本柘は軽くて温かみがあり、当店の印材で価格がいちばん手頃です。実印の価格は、薩摩本柘が10,700円から、黒水牛が11,900円からです。3本セットは、薩摩本柘が21,700円から、黒水牛が24,300円からです。迷ったら、実印と銀行印は黒水牛、予算を抑えて3本揃えるなら薩摩本柘を目安にしてください。

7つの点で比べる|木の薩摩本柘と角の黒水牛

薩摩本柘と黒水牛は、どちらも日本の印鑑づくりで昔から使われてきた印材です。国の伝統的工芸品に指定されている山梨県の甲州手彫印章も、柘植と水牛を古くから材料にしています。まずは2つを並べて、違いを見ていきます。

薩摩本柘黒水牛

鹿児島県で育ったツゲの木です。日本の木のなかで、もっとも緻密といわれます

素材

水牛の角です。アジアで農耕や運搬に使われている水牛から取ります

淡い黄色で、木目はほとんど目立ちません。使い込むと飴色になります

色と見た目

つやのある黒です。多くは黒く染めて仕上げてあり、どれもほぼ同じ色です

黒水牛より軽く、手に温かみがあります。冬に持ってもひんやりしません

重さと手触り

木より重く、チタンより軽い、中くらいの重さです。手触りはなめらかです

木の印材としては丈夫ですが、落とすと枠が欠けることがあります

欠けにくさ

硬いのに粘りがあり、落としても枠が欠けにくい素材です

朱肉のなじみはふつうで、印影はきれいに写ります

朱肉のなじみ

朱肉がしっとりとなじみ、むらなく写ります

朱肉の油と、急な乾燥です。油が木にしみ込むと、縁がもろくなります

苦手なもの

乾燥と、衣類につく虫です。角は爪や髪と同じたんぱく質なので、虫に食われることがあります

実印15mm 11,900円、3本セット25,200円。当店の印材でいちばん手頃です

価格

実印15mm 15,300円、3本セット30,200円。薩摩本柘、彩樺の次に手頃です

精選版 日本国語大辞典の説明では、水牛の角はオスにもメスにもあり、長く大きく、後ろへ半円を描くように伸びます。同じ辞典は、角を印判や彫刻品に加工することにも触れています。印材に使うのは、この角のうち中身が詰まった部分です。全日本印章業協会によると、黒水牛は水牛の角を加工したもので、多くは黒く染めてあります。

手に持ったとき、押したときの違い

印鑑は、手に持って紙に押す道具です。重さと朱肉のなじみ方で、使い心地が変わります。

薩摩本柘の印材

薩摩本柘

重さ
軽い
朱肉のなじみ
ふつう

軽いぶん、押すときは自分で少し力を加えます。押印マットを敷くと、かすれにくくなります。木のぬくもりが伝わり、手の小さな方でも持ちやすい印材です。

実印15mm 11,900円
黒水牛の印材

黒水牛

重さ
ほどよい
朱肉のなじみ
よい

ほどよい重みがあり、強く押さなくても朱肉がむらなく紙に移ります。重すぎず軽すぎないので、はじめての方でも扱いやすく、当店でも人気の高い印材です。

実印15mm 15,300円

点の数は、当店の職人が日々印材を扱うなかでの目安です。彫った線の細かさは、どちらの印材でも変わりません。押しやすさの違いは、「軽いほうがよいか、ほどよい重みがあるほうがよいか」の好みと考えてください。きれいに押すコツは、押しやすい印鑑の選び方で説明しています。

価格の差|実印1本で1,200〜6,100円、3本セットで2,600〜10,400円

価格の差は直径が大きいほど開き、16.5mmと18mmでは6,100円になります。太い印材ほど、1本の角から取れる数が少なくなるためです。

実印13.5mm15mm16.5mm18mm
薩摩本柘10,700円11,900円14,300円17,900円
黒水牛11,900円15,300円20,400円24,000円
差額1,200円3,400円6,100円6,100円

銀行印12mmは、薩摩本柘が6,400円、黒水牛が7,000円で、差は600円です。認印10.5mmは、薩摩本柘が5,800円、黒水牛が6,700円で、差は900円です。小さい印鑑ほど差は小さく、どちらも1,000円以内に収まります。

薩摩本柘黒水牛差額
3本セット実印13.5mm・銀行印12mm・認印10.5mm21,700円24,300円+2,600円
3本セット実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mm25,200円30,200円+5,000円
3本セット実印18mm・銀行印16.5mm・認印13.5mm36,100円46,500円+10,400円
実印・銀行印の2本セット実印15mm・銀行印13.5mm19,100円23,500円+4,400円
会社印の3本セット実印18mm・銀行印16.5mm・角印21mm56,900円94,800円+37,900円

どちらの印材でも、3本セットは1本ずつ買うより割安です。薩摩本柘で実印15mm、銀行印13.5mm、認印12mmを1本ずつ買うと、26,600円です。3本セットなら25,200円で済みます。黒水牛では、31,800円が30,200円になります。

差額で変わるのは、欠けにくさと手入れの手間です

実印15mmなら3,400円、3本セットなら5,000円。この差額で変わるのは、落としたときの欠けにくさと、朱肉の油を吸いにくいぶん手入れが楽になる点の2つです。何十年も使う実印や銀行印なら、この差額をかける価値があります。一方、彫刻の細かさや印影のきれいさは、どちらの印材でも同じです。見た目が薩摩本柘のほうが好きなら、無理に黒水牛にしなくてもかまいません。印鑑の価格が何で決まるかは、安い印鑑と高い印鑑の違いで説明しています。

10年後の姿|色の変わり方と、傷み方の違い

薩摩本柘 淡い黄色から、飴色へ 手の脂や空気に触れて、何年もかけて飴色になっていきます。つげの櫛と同じ変化で、傷んでいるわけではありません。印面のまわりが朱色に染まってきたら、朱肉がしみているしるしです。押したあとの拭き取りを、こまめにしてください。
黒水牛 ほとんど変わりません 黒く染めてあるため、色はほぼそのままです。長く使ううちに持ち手の縁がこすれて、うっすら地の色が見えてくることがあります。つやが鈍ってきたら、椿油を少し付けた布で持ち手だけを拭くと、輝きが戻ります。

傷み方も違います。薩摩本柘で起きやすいのは、朱肉の油がしみて縁がもろくなることと、乾燥によるひびです。黒水牛で起きやすいのは、乾燥によるひびと、長くしまい込んだときの虫食いです。どちらの印材も、押したあとに拭いてケースにしまうようにすれば、10年、20年と使えます。

手入れの違い|それぞれの苦手なものと扱い方

薩摩本柘の印材

薩摩本柘

苦手なもの朱肉の油、急な乾燥、水

押すたびに、ティッシュで印面を軽く押さえて朱肉を拭き取ります。木は、つげの櫛が椿油を吸うのと同じように朱肉の油も吸うため、拭き取りを怠ると縁がもろくなります。直射日光やエアコンの風が当たらない場所で、ケースに入れて保管します。水洗いや、濡れた布で拭くことは避けてください。

黒水牛の印材

黒水牛

苦手なもの乾燥、衣類の虫、水

角は木ほど油を吸わないので、拭き取りが多少おろそかになっても、木の印材ほど傷みにつながりません。乾燥でひびが入らないよう、使わないときはケースに入れて引き出しにしまいます。何年も使わないときは、衣類用の防虫剤を一緒に入れておくと安心です。

手入れの手間は、黒水牛のほうが少なくて済みます。拭き取りを忘れがちな方や、毎日何十回も押す仕事で使う方には黒水牛が向いています。それぞれの詳しい手入れは、薩摩本柘の印鑑とは?と黒水牛の印鑑とは?をご覧ください。

用途別|実印・銀行印・認印にはどちらが向くか

使う場面薩摩本柘黒水牛
実印○◎

どちらも登録できます。何年も同じ印鑑を使い続けるので、当店では欠けにくい黒水牛をおすすめしています。

銀行印○◎

金融機関に届け出たあとは、口座を持っているあいだずっと使います。12mmなら差額は600円なので、黒水牛にしておくと安心です。

認印◎◎

宅配便の受け取りなど、ふだんの暮らしで押す印鑑です。軽い薩摩本柘でも黒水牛でも、使い心地に困ることはありません。

予算を抑えて3本揃える◎○

薩摩本柘の3本セットは21,700円からで、黒水牛より2,600円安く揃います。

会社の角印◎○

21mmで薩摩本柘17,900円、黒水牛30,000円と、12,100円の差があります。実印と銀行印を黒水牛にして、角印だけ薩摩本柘にする方法もあります。

お子様の初めての印鑑◎◎

軽くてお子様の手でも持ちやすいのは薩摩本柘、落としても欠けにくいのは黒水牛です。どちらも向いています。

就職や結婚のお祝い○◎

ほどよい重みと黒いつやがある黒水牛は、贈り物にしたときに見栄えがします。

動物に由来する素材を避けたい◎△

薩摩本柘は木から、黒水牛は動物の角から作る印材です。

毎日何十回も押す仕事△◎

押す回数が多いほど、朱肉の油やすり減りの影響を受けます。油を吸いにくい黒水牛が向いています。

2つの質問で決める

  1. 動物の角でできた印材に、抵抗はありますか

    ある薩摩本柘で決まりです。木の印材でも、実印として登録できます
    ない次の質問へ
  2. 作るのは、何十年も同じ印影で使う実印や銀行印ですか

    はい黒水牛をおすすめします。実印15mmなら3,400円の差額で、欠けにくさが1段上がります
    いいえ。認印を作りたい、予算を優先したい薩摩本柘で問題ありません。軽さと温かみ、淡い黄色が好みなら、なおさら薩摩本柘です

京都市の案内には、登録できない印鑑の例が挙がっています。ゴム印のように押すたびに形が変わりやすいものや、同じ形で大量に作られたものです。木や角の印材を対象にした項目はありません。当店の印鑑は、どちらの印材でも職人が1本ずつ彫刻するオーダーメイドです。実印として登録でき、銀行の届出印にも使えます。

開運印鑑と会社印の価格差

お名前を鑑定して印影を設計する開運印鑑も、この2つの印材で作れます。開運実印13.5mmは、薩摩本柘が17,600円、黒水牛が22,000円です。実印・銀行印・認印の3本セットは、薩摩本柘が40,900円から、黒水牛が49,400円からです。どちらの印材でも、鑑定書、下鴨神社でご祈祷いただいた印鑑のお守り、桐箱が付きます。

会社印では、価格の差がさらに大きくなります。実印18mmは薩摩本柘21,600円、黒水牛36,100円です。角印21mmは薩摩本柘17,900円、黒水牛30,000円です。実印・銀行印・角印の3本セットでは、薩摩本柘56,900円に対して黒水牛94,800円と、37,900円の差になります。登記や契約で長く使う実印は黒水牛にし、請求書や見積書に押す角印は薩摩本柘にして、費用を抑える方法もあります。

よくある質問

3本セットの3本を、薩摩本柘と黒水牛で分けられますか

3本セットは、3本とも同じ印材でお作りしています。実印だけを黒水牛にしたいときは、実印は単品で、銀行印と認印は薩摩本柘の2本セットで注文してください。会社印なら、実印と銀行印を黒水牛の2本セットで、角印を薩摩本柘の単品で注文する方法があります。

黒水牛は、本当に薩摩本柘より丈夫ですか

落としたときの欠けにくさでは、黒水牛のほうが丈夫です。角は爪や髪と同じたんぱく質でできていて、硬さと粘りを兼ね備えています。ただ、薩摩本柘も木のなかでは目の詰まった丈夫な材です。毎回の拭き取りとケースでの保管を続ければ、長く使えます。

女性には、どちらが向いていますか

どちらも、性別を問わず選ばれています。薩摩本柘は軽く、淡い黄色が明るい印象です。黒水牛は落ち着いた黒なので、職場で押す場面でも目立ちません。ケースを赤やピンクの牛革にすると、黒水牛でもやわらかな雰囲気になります。

冬に印鑑を持つと冷たいのが苦手です

木の印材である薩摩本柘は、冷たさを感じにくい素材です。黒水牛も金属ほどは冷えませんが、木に比べるとひんやりします。手に持ったときの温かみを大切にする方には、薩摩本柘が向いています。

黒水牛の「芯持ち」は、薩摩本柘にもありますか

ありません。芯持ちは、角の中心を通る部分から取った印材を指す言葉で、木には使いません。薩摩本柘で品質に関わるのは、産地と木目の細かさです。芯持ちの意味は、黒水牛の印鑑とは?で説明しています。

まとめ|薩摩本柘か黒水牛かを決める順番

最初に、上の2つの質問で印材を決めます。見るのは、動物の角を避けたいかどうかと、作るのが何十年も使う実印や銀行印かどうかの2点です。

次に、本数と直径を決めます。実印・銀行印・認印をひととおり揃えるなら、どちらの印材でも3本セットが割安です。実印の直径は、女性なら13.5mmか15mm、男性なら16.5mmか18mmを選ぶ方が多くいらっしゃいます。

木でも角でも、京都の職人が1本ずつ彫刻します

薩摩本柘か、黒水牛か。3本セットから選ぶ

どちらも印鑑ケース付き、送料無料、5年保証。ご注文から3〜7営業日で発送します。実印・銀行印・認印を揃える3本セットがいちばん割安です。

SOURCES

出典

ツゲの性質は日本木材総合情報センターの解説を、柘と黒水牛が彫刻に適した印材であることは全日本印章業協会の解説を参照しました。水牛の角の形と用途はコトバンクに収録された精選版 日本国語大辞典の記述、柘と水牛が印章の伝統的な材料であることは山梨県の甲州手彫印章の解説によります。印鑑登録の条件は京都市の案内を参照しました。価格は2026年10月時点の当店の税込価格です。

  1. 一般財団法人 日本木材総合情報センター. ツゲ. 木材の種類と特性. https://www.jawic.or.jp/woods/sch.php?nam0=tsuge,(参照 2026-10-03).
  2. 公益社団法人 全日本印章業協会. 大切な実印を作る前にお読みください. https://www.inshou.or.jp/inshou/info/index.html,(参照 2026-10-03).
  3. 小学館 精選版 日本国語大辞典ほか. 水牛. コトバンク. https://kotobank.jp/word/水牛,(参照 2026-10-03).
  4. 山梨県. 手彫印章・手彫水晶印(甲州手彫印章)・真心で彫り込む伝統の技. 山梨の伝統工芸品. https://www.pref.yamanashi.jp/shouko/kogyo/densan/insyo_01.html,(参照 2026-10-03).
  5. 京都市. 印鑑登録の手続. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html,(参照 2026-10-03).