CHAPTER 07 サイズ・形・選び方

押しやすい印鑑の選び方|印材・直径・書体・朱肉と押し方

印鑑の押しやすさは、印材、直径、書体、朱肉と押印マット、押し方の5つで決まります。かすれる、一部だけ薄い、にじむといった症状から原因を探し、薩摩本柘・黒水牛・チタン・本象牙の押し心地を比べます。直径と書体の選び方、アタリの有無、練り朱肉の使い方、「の」の字を書くように押す方法まで、一度で鮮明に押せる印鑑を作りたい方に向けて説明します。

公開日: 2026年9月24日

黒いスレートの上に、ふたを開けた黒漆の朱肉入れ、黒いゴムの押印マット、無地の白い紙の束を置き、柘・黒水牛・チタンの印材を3本立てた俯瞰の写真。真鍮のノギスと炭色のリネン、小さな湯のみ
押しやすさを重視した印鑑選び 印材、直径、書体、朱肉、押し方。押しやすさは5つの積み重ねで決まります

契約書に実印を押したら、文字がかすれて押し直すことになった。そんな経験はありませんか。押しやすい印鑑とは、力を入れなくても、一度で枠と文字がむらなく写る印鑑のことです。これから作るなら、見た目や価格に加えて、押しやすさも選ぶ基準に入れてみてください。この記事では、まず押しにくさの原因を症状から探します。そのあと、印材、直径、書体、持ち手、朱肉、押し方の順に、押しやすい印鑑の選び方と押し方のこつを説明します。印鑑選び全体の順番は印鑑の選び方をご覧ください。

先に結論

押しやすさは、印材、直径、書体、朱肉と押印マット、押し方の5つで決まります。押しやすい印材は、朱肉がしっとりなじむ黒水牛と本象牙、重みで自然に圧がかかるチタンです。直径は、指3本で支えやすい15mm前後が目安です。書体は、線に太さのある吉相体か篆書体を選ぶとかすれにくくなります。押すときは練り朱肉を薄く付け、押印マットの上で「の」の字を書くように圧をかけます。迷ったら、黒水牛の15mmを吉相体か篆書体で作るのがおすすめです。当店の印鑑には押印マットが付き、2本・3本のセットには朱肉も付くので、届いた日から試せます。

押しにくい印鑑には、理由があります

「この印鑑は押しにくい」と感じたとき、原因は1つとは限りません。下の表に、症状ごとの原因と直し方を並べました。朱肉や押し方を変えるだけで直ることもあるので、買い替える前に試してみてください。

症状考えられる原因直し方
全体がかすれる

朱肉が乾いている。スポンジ朱肉で油分が少ない。印材が軽く、圧が足りない

練り朱肉に替える。押印マットを敷く。重みのある印材にする
一部だけ薄い

印面が紙に均一に当たっていない。印材が反っている。押すとき手が傾いている

押印マットを敷き、「の」の字を書くように圧をかける。反りがあれば、彫り直すか作り直す
にじむ、つぶれる

朱肉を付けすぎている。細い線の書体で、線と線の間が埋まっている。印面に古い朱肉がたまっている

朱肉は軽く数回だけ付ける。押したあとに印面を拭く。細い線の書体を避ける
向きがずれる、曲がる

上下の目印がなく、持ち直しているうちに回っている。直径が小さくて指先だけで持っている

押す前に印面を見て向きを確かめる。持ちやすい直径にする
枠が一周写らない

枠が欠けている。もともと枠が細い。印面のふちがすり減っている

欠けていれば、彫り直すか作り直す。枠と文字が接する吉相体を選ぶ

印材:重さと朱肉のなじみで決まります

印材で変わるのは、手に伝わる重さと、朱肉の付き方と離れ方です。重い印材は、その重みで自然に圧がかかります。朱肉のなじみがよいものは、薄く付けても鮮明に写ります。下の4つは、当店で扱う中でも押し心地の違いが分かりやすい印材です。

薩摩本柘の印材

薩摩本柘

重さ
軽い
朱肉のなじみ
ふつう

軽いぶん、押すときは自分で少し力を加えます。押印マットを敷くと、かすれにくくなります。手に持つと、木のぬくもりが伝わる印材です。

実印15mm 11,900円
黒水牛の印材

黒水牛

重さ
ほどよい
朱肉のなじみ
よい

朱肉がしっとりとなじみ、紙にきれいに移ります。重すぎず軽すぎないので、はじめての方でも扱いやすく、当店でも人気の高い印材です。

実印15mm 15,300円
チタンの印材

チタン

重さ
重い
朱肉のなじみ
よい

重みで自然に圧がかかるので、強く押さなくても、むらなく写ります。朱肉の油を吸わないため、押したあとの拭き取りも簡単です。金属の冷たさは好みが分かれます。

実印15mm 31,800円
本象牙(標準)の印材

本象牙

重さ
ほどよい
朱肉のなじみ
最もよい

朱肉を適度に吸って離すので、細い線の端まで鮮明に写ります。古くから、高級な印材として使われてきました。当店は経済産業省の認定を受けた象牙の取扱店です。

実印15mm 36,100円(標準)

押しやすさだけで選ぶなら、黒水牛、チタン、本象牙のどれかです。薩摩本柘も、押しにくいわけではありません。軽いぶん、押印マットと練り朱肉を使えば、ほかの3つと同じように鮮明に押せます。耐久性や手入れまで含めた比較は実印の素材の比較で説明しています。

直径:指3本で支えられる15mm前後が押しやすい

直径は名前の文字数で決めるのが基本ですが、押しやすさにも関わります。小さい印鑑は指先だけで持つことになり、圧が偏って一部が薄くなりがちです。反対に、大きい印鑑は印面が広いぶん、全体に同じ強さで圧をかけるのに慣れが要ります。はじめての方が押しやすいのは、親指、人差し指、中指の3本で自然に支えられる15mm前後です。

10.5mm小さめの認印指先で持つ太さ。軽い印材だと圧が偏りやすい
12mm認印・銀行印当店の認印でいちばん選ばれている太さ。持ちやすさと押しやすさの釣り合いがよい
15mm標準的な実印3本の指で自然に支えられ、圧が均一にかかりやすい
16.5mm大きめの実印フルネームで文字数が多い方に向く太さ。印面の全体に圧がかかるよう意識して押す
円は直径の比率を示しています。文字数から見た直径の決め方は実印のサイズはどう選ぶ?で説明しています。

書体:線に太さがあるほど、かすれにくい

同じ印材、同じ直径でも、書体によって押しやすさは変わります。線が細い書体は、朱肉の付き方が少し違うだけで線が途切れて見え、多めに付けるとつぶれます。線に太さがあったり、枠と文字がつながっていたりする書体は、少ない朱肉でも一度で写ります。

吉相体で彫った印影の見本
吉相体線が枠まで広がり、太さがある。かすれにくく、枠も欠けにくい。実印・銀行印に向く
篆書体で彫った印影の見本
篆書体線の太さが均一で、朱肉が均等にのる。余白が上品。実印・銀行印に向く
古印体で彫った印影の見本
古印体線に抑揚と丸みがあり、多少のかすれも味になる。読みやすく、認印に向く
楷書体で彫った印影の見本
楷書体細い線が多く、朱肉の量で写り方が変わりやすい。4つの中でいちばん読みやすい

実印と銀行印に吉相体や篆書体が選ばれるのは、読み取りにくく、まねされにくいからだけではありません。吉相体は線が枠に接しているので枠が欠けにくく、枠と文字が一体で写ります。篆書体は線の太さがそろっていて、朱肉がむらなくのります。書体ごとの印影の特徴は印鑑の書体一覧でまとめています。

持ち手:アタリの有無と、向きの確かめ方

印鑑の側面に付ける上下の目印を「アタリ」といいます。押す向きがすぐに分かるので、押しやすさの面では便利です。ただ、実印や銀行印では付けないのが一般的です。当店の印鑑もアタリなしが基本なので、押す前に印面を見て、上下を確かめてから押してください。アタリをご希望の方は、ご注文時の備考欄にお書きください。

朱肉と押印マット:印材を替える前に見直す

押しやすさを考えるとき、見落とされがちなのが朱肉とマットです。どんな印材でも、乾いたスポンジ朱肉を使い、硬い机の上で押せばかすれます。反対に、練り朱肉とマットがあれば、軽い印材でも鮮明に写ります。当店の印鑑には押印マットが付きます。2本・3本のセットには朱肉も付きます。単品の場合は、ケースの内側に小さな朱肉が入っています。

練り朱肉油分が多く、印面にしっとり付きます。実印や銀行印など、くっきり押したい印鑑に向きます。印面の全体に、軽く数回付けます
スポンジ朱肉手軽で、押した跡が早く乾くので、認印を毎日使うのに向きます。油分が少ないぶん、力の弱い方や軽い印材ではかすれやすくなります
押印マット紙の下に敷くと、印面が少し傾いても全体が紙に当たり、一部だけ薄くなるのを防げます。厚手の雑誌で代用する方もいますが、専用のマットのほうが安定します
スタンプ台は使わないゴム印用のスタンプ台は、朱肉とは別のものです。インクが印面の細い線に入り込むと落としにくいので、印鑑には朱肉を使ってください

押し方:「の」の字を書くように

最後に押し方です。印材、直径、書体、朱肉がそろっていても、押し方しだいでかすれることがあります。次の4つの動作を、順番どおりに試してみてください。

  1. 1朱肉は軽く、数回に分けて付ける

    印面を朱肉に軽く当て、少しずつ位置をずらしながら数回付けます。強く押し込むと、線の間に朱肉が入り込んでつぶれます。

  2. 2向きを見て、まっすぐ置く

    印面を見て上下を確かめ、紙に対して垂直に置きます。傾けたまま置くと、その側だけ濃くなります。

  3. 3「の」の字を書くように圧をかける

    印鑑を動かさずに、手のひらの重みで、上、右、下、左の順に小さく「の」の字を書くように圧を移します。印面の全体が順に紙に当たります。

  4. 4まっすぐ上に離す

    横にずらさず、垂直に持ち上げます。押したあとは印面の朱肉を布で軽く押さえて拭き、ケースに戻します。

実印と銀行印では、押しやすさが「照合しやすさ」になります

実印は、登録した印影と照合されます。市区町村は、登録できる印鑑に条件を定めています。たとえば京都市では、印影が鮮明で文字が読み取りやすいことが条件の1つです。ゴム印のように押すたびに形が変わるものは認められず、外枠があって照合しやすいことも求められます。銀行印も、窓口で届け出た印影と見比べられます。全国銀行協会によると、ゴム印のように変形しやすい印鑑は届出印に使えません。変形すると、届け出た印影と照らし合わせられなくなるからです(扱いは銀行によって異なります)。つまり実印と銀行印にとっての押しやすさとは、「いつ押しても同じ印影になること」です。印鑑ができたら、毎回同じ朱肉とマットを使い、同じ手順で押すようにすると、印影のばらつきが小さくなります。

よくある質問

力が弱くても押しやすい印鑑はありますか

チタンは重みで自然に圧がかかるので、4つの印材の中ではいちばん力が要りません。次に押しやすいのは、朱肉のなじみがよい黒水牛と本象牙です。どの印材でも、練り朱肉と押印マットを使い、「の」の字を書くように圧を移せば、強い力をかけなくても鮮明に写ります。直径は、指3本で自然に支えられる13.5mmか15mmが持ちやすい太さです。

いまの印鑑がかすれます。買い替えるべきですか

まず練り朱肉に替え、押印マットを敷いて、「の」の字を書くように押してみてください。それでも一部だけ薄い場合は、印材の反り、印面のすり減り、枠の欠けが考えられます。平らな机の上で転がして揺れないか、押した跡で枠が一周写っているかで確かめられます。反りや欠けが見つかったら、彫り直しか作り直しを考える時期です。見方は良い印鑑の見分け方にまとめています。

アタリがないと、向きを間違えませんか

押す前に印面を見れば、上下はすぐに分かります。実印や銀行印は押す機会が少ないので、一度手を止めて印面を確かめてから押すと安心です。毎日押す認印で向きが気になる方は、備考欄でアタリをご相談ください。

押しやすさで選ぶなら、3本とも同じ印材にするべきですか

同じ印材にしておくと、朱肉のなじみや手に持った感触がそろうので、押し方を変えずに済みます。当店の3本セットは、実印、銀行印、認印を同じ印材で同時に作ります。黒水牛なら、実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mmの組み合わせで30,200円です。チタンの同じ組み合わせは68,400円です。単品で1本ずつ買うより割安です。

まとめ|迷ったら黒水牛の15mm、押すときは練り朱肉とマットで

押しやすさを基準に印鑑を作るときは、印材、直径、書体の順に決めていきます。印材は、力に自信がなければ重みのあるチタン、朱肉のなじみを重視するなら黒水牛か本象牙です。迷ったときは、扱いやすい黒水牛から考えてみてください。直径は、実印なら15mm前後を基準にして、名前の文字数に合わせて調整します。書体は、実印と銀行印なら吉相体か篆書体にします。3本作るなら、同じ印材のセットにすると押し心地がそろいます。印鑑が届いたら、練り朱肉と押印マットを用意して、「の」の字を書く押し方を何度か試しておいてください。慣れておけば、契約の場でも落ち着いて押せます。

朱肉と押印マットを添えて、京都の職人がお作りします

押しやすい印材から、3本をそろえる

実印、銀行印、認印を同じ印材で同時に作りますので、3本とも同じ押し心地になります。線に太さのある書体で、名前の字を1本ずつ作ります。牛革ケース、朱肉、押印マット、保証書、京印章証明書付き。送料無料、5年保証。

SOURCES

出典

印鑑登録できる印鑑の条件(印影が鮮明であること、押すたびに変形しないこと)は京都市の案内、銀行の届出印にできない印鑑は全国銀行協会の案内を参照しました。印鑑登録の条件は市区町村によって細部が異なります。印材の重さや朱肉のなじみは当店で扱う印材の一般的な傾向で、価格は当店の税込価格、記事作成時点のものです。

  1. 京都市. 印鑑登録. 京都市情報館. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html,(参照 2026-09-24).
  2. 一般社団法人全国銀行協会. ハンコにはルールがあります!. 教えて!くらしと銀行. https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/3805/,(参照 2026-09-24).