CHAPTER 03 会社の印鑑
代表者変更時の法人印|同じ実印を引き継ぐ手続きと作り直す判断
代表取締役が交代しても、会社実印には個人名が入っていないため、同じ印鑑を新しい代表者が引き継いで使えます。ただし法務局への印鑑の届け出は代表者ごとなので、新しい代表者が個人の実印と印鑑証明書を添えて、印鑑届書を出し直します。引き継ぐか作り直すかの目安、役員変更の登記と印鑑届の流れ、印鑑届書の書き方、印鑑カードの引き継ぎ、金融機関への届け出、創業者が印鑑を持ち帰る事業承継のときの対応まで説明します。
公開日: 2026年9月24日
社長が交代する。創業者から次の世代へ会社を引き継ぐ。代表者が代わると決まったら、登記の準備と並んで気になるのが会社実印です。前の社長が使っていた実印をそのまま使ってよいのか、作り直したほうがよいのか、法務局には何を出すのか。こうした交代はめったにありませんので、前回の手順を覚えている人が社内にいないこともあります。この記事では、代表者の交代で印鑑に何が起きるのかを説明します。そのうえで、引き継ぐか新しく作るかの目安と、役員変更の登記と印鑑届の流れを順に見ていきます。印鑑を替える手続きの全体像は法人印鑑の変更方法にまとめています。
代表者が交代しても、会社実印・銀行印・角印はそのまま使えます。ただし法務局への印鑑の届け出は代表者ごとですので、新しい代表者が個人の実印と印鑑証明書を添えて、印鑑届書を出し直します。印鑑カードは前任者から引き継げます。届け出の手続きは、同じ実印を使っても新しく作っても変わりません。創業者が実印を持ち帰る事業承継や、外部から代表者を迎える交代なら、この機会に新しく作ると安心です。
会社実印に、代表者の名前は入っていません
会社実印は、外側の円に社名を、内側の円に「代表取締役印」や「代表者印」といった肩書きを彫るのが一般的です。個人名はどこにも入っていません。ですから、山田社長から佐藤社長に代わっても印影は1文字も変わらず、そのまま使えます。
それでも「代表者が代わったら実印も作り直す」と考える方がいるのは、法務局への届け出を出し直すからです。この届け出は、「この会社では、この代表者が、この印鑑を使います」と知らせるもので、印鑑と代表者が組になっています。代表者が代わればこの組も変わるため、新しい代表者が改めて届け出ます。届け出る印鑑は、同じものでも新しいものでも構いません。
同じ印鑑を引き継ぐか、新しく作るか
届け出の手続きはどちらも同じですので、決め手は会社の事情です。目安は、円満な世代交代なら引き継ぎ、それ以外なら新しく作る、という分け方です。
親から子へ、社内で長く働いた人へ、という円満な交代に向いています。印鑑が変わらないので、取引先に印影の変更を知らせる必要もありません。新しい代表者が印鑑届書を出すだけです。
創業者が退任して印鑑を持ち帰るとき、外部から代表者を迎えるとき、前任者との関係が円満でないときに選ばれます。前任者が手元に置いていた実印は、新しい印鑑を届け出た時点で、会社の届出印ではなくなります。
もうひとつ、判断の材料になるのが印鑑の状態です。創業から10年、20年と使われた実印は、縁の欠けや印面の摩耗が進んでいることがあります。代表者の交代では届け出をどのみち出し直しますので、傷んだ実印はこのときに作り直すと、届け出が1回で済みます。
役員変更の登記と、印鑑届の流れ
代表取締役の交代は、株主総会や取締役会で新しい代表取締役を選び、就任を承諾してもらったところから始まります。会社法では、役員が変わったら、変わった日から2週間以内に登記することになっています。登録免許税は、資本金が1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円です。
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1. 選定と就任承諾
新しい代表取締役を選び、就任承諾書をもらう
取締役会設置会社では取締役会で、それ以外の会社では定款の定めや株主総会で選びます。新しい代表者は、この時点で自分の個人の実印を登録しておきます。印鑑届書に個人の印鑑証明書が要るからです。実印を新しく作る場合は、ここで注文します。
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2. 登記の申請
役員変更登記申請書と、印鑑届書を一緒に出す
本店を管轄する法務局に、就任から2週間以内に申請します。申請書には、新しい代表者が届け出る会社実印を押します。同時に新しい代表者の名前で印鑑届書を出し、個人の実印を押して、発行から3か月以内の印鑑証明書を添えます。
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3. 印鑑カード
前任者のカードを引き継ぐ
印鑑届書の「印鑑カードを引き継ぐ」欄に印を付け、カード番号と前任者の名前を書きます。これで前任者のカードを新しい代表者がそのまま使え、作り直す手続きは要りません。前任者が持ち帰ってしまった場合は、廃止の届け出と新しいカードの交付申請をします。
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4. 登記の完了
新しい代表者名の登記事項証明書と印鑑証明書を取る
登記が完了すると、代表者の欄が新しい名前になった登記事項証明書と、新しい代表者名の会社の印鑑証明書が取れます。印鑑を引き継いだ場合、印鑑証明書の印影は前と同じで、代表者の名前だけが変わります。
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5. 金融機関と取引先
代表者変更の届け出をする
法人名義の口座がある金融機関に、代表者変更を届け出ます。登記事項証明書・印鑑証明書・新しい代表者の本人確認書類などが要ります。必要な書類は金融機関ごとに違いますので、先に確かめておきます。届出印も変える場合は、全国銀行協会の案内のとおり、これまでの印鑑と今後使う印鑑の両方を持って行き、同じ日に改印します。取引先には、就任の挨拶状で知らせます。
印鑑届書の書き方|代表者が代わったとき
印鑑届書は、設立のときに出したものと同じ用紙です。代表者の交代で特に気をつけたいのは、印鑑提出者の欄と印鑑カードの欄です。
印鑑(改印)届書|代表者の交代で書く欄
商業登記規則の大きさの決まり(1辺が1cmを超え、3cm以内の正方形に収まること)は、引き継ぐ実印にも当てはまります
資格の欄は「代表取締役」です。合同会社なら「代表社員」、一般社団法人なら「代表理事」と書きます
「引き継ぐ」に印を付け、カード番号と前任者の氏名を書きます。法務局の記載例にも、この書き方が載っています
登記申請書に同じ人の印鑑証明書を付けている場合は、1通で兼ねられます
実印を新しく作って届け出る場合も、書く内容は同じです。違うのは届出印の枠に押す印鑑だけで、追加の書類はありません。
事業承継で、創業者が印鑑を持ち帰るとき
家族経営では、退任する創業者が「自分で作った印鑑だから」と、会社実印を手元に残したいと望むことがあります。その気持ちはよく分かりますが、会社実印は会社の財産です。届け出た実印が社外にあると、新しい代表者は必要なときに押せません。創業者の実印は記念に残し、会社には新しく作った印鑑を届け出る、という分け方があります。
- 届け出た実印が、前任者の自宅にある新しい代表者が登記や契約のたびに借りに行くことになり、実印を押すたびに前任者の了承が要る状態が続きます
- 前任者と新任者が、同じ実印を別々に持つと勘違いする実印は届け出た1本だけです。同じ印影の印鑑を2本用意するものではありません
- 古い実印を、誰が管理するか決めないまま退任する行方が分からなくなった実印は、なくしたときと同じように、改印しておくのが安全です
- 新しい代表者の実印を作り、法務局に届け出る創業者の実印は届け出から外れ、記念の品として手元に残せます。届け出から外れたあとは、印面を削るなどして押せないようにしておくと安心です
- 銀行印と角印は会社に残す社名だけの印鑑ですので、そのまま新しい代表者が使います。傷んでいれば実印と一緒に3本を作り直します
- 交代の日に、印鑑と印鑑カードの引き渡しを書面で残す「何を、いつ、誰に渡したか」を1枚の紙にまとめておくと、後から話が食い違いにくくなります
新しい代表者に、個人の実印はありますか
見落とされがちですが、印鑑届書には新しい代表者の個人の実印と、市区町村の印鑑証明書が要ります。若い後継者や、これまで実印を使う機会がなかった方は、まだ印鑑登録をしていないことがあります。就任が決まったら、会社の印鑑より先に、個人の実印があるかを確かめてください。既製の三文判は登録を断られることがありますので、姓名を彫った印鑑を1本用意しておきます。
就任が決まったら確かめる5つのこと
- 新しい代表者の個人の実印と印鑑登録印鑑届書と、会社によっては登記の書類にも、個人の実印と発行から3か月以内の印鑑証明書が要ります
- いまの会社実印の状態と、誰が持っているか縁の欠けや摩耗があれば作り直します。前任者の手元にあるなら、引き渡しの日を決めます
- 実印の内側に、個人名が入っていないかごくまれに「代表取締役山田太郎印」と個人名まで彫った実印があります。この場合は新しく作り直します
- 印鑑カードがどこにあるか前任者から引き継ぎます。見つからなければ、廃止の届け出と新しいカードの交付申請を一緒に出します
- 金融機関の届出印を変えるかどうか代表者変更の届け出と同じ日に改印すれば、窓口に行く回数が1回で済みます
当店では、代表者の交代に合わせて、いまと同じ大きさで会社実印を新しく制作できます。この機会に、大きさや素材を変えることもできます。備考欄に「代表者変更」と、いまの実印の大きさをお書きいただければ、銀行印や角印との釣り合いを見ながら職人が仕上げます。
よくある質問
代表取締役が2人になる場合、実印はどうなりますか
法務局には代表者ごとに印鑑を届け出られますので、2人がそれぞれ実印を届け出ることも、1人だけが届け出ることもできます。2本届け出る場合は、同じ印影にはできませんので、大きさか書体を変えて2本を作ります。
代表者が代わる日より前に、新しい印鑑を届け出られますか
印鑑届は、届け出る人が代表者になっていることが前提ですので、就任の登記と同時か、そのあとに出します。就任の前に注文しておき、登記の申請日に間に合うように受け取っておくのが確実です。
前任者が届け出ていた印鑑は、自動的に無効になりますか
前任者が代表者でなくなると、その人の名前での印鑑証明書は取れなくなります。新しい代表者が同じ印鑑を届け出れば、その印鑑は新しい代表者の届出印として続きます。届け出ないままにすると、会社の印鑑証明書が取れない期間ができますので、登記と同時に出してください。
銀行印も、代表者の交代で届け出の出し直しが要りますか
金融機関には代表者変更の届け出をしますが、届出印はそのまま使えます。印鑑を変えたい場合だけ、同じ日に改印の届け出をします。角印は届け出がありませんので、何もしなくて構いません。
新しい代表者の名前で、開運印鑑を作れますか
作れます。開運会社実印は、会社名・代表者名・創業年をもとに鑑定して印影を作ります。注文画面の代表者名の欄には、新しい代表者のお名前を入れてください。就任の節目に、新しい代表者の個人の実印を開運実印で作る方もいます。開運会社印鑑と開運実印のページをご覧ください。
まとめ|代表者が代わるときに法人印を決める順番
まず、いまの会社実印を見て、内側に個人名が入っていないか、傷んでいないか、誰が持っているかを確かめます。個人名が入っている、傷んでいる、前任者が持ち帰る、外部から代表者を迎える、のどれかに当てはまれば新しく作ります。どれにも当てはまらない円満な交代なら、同じ実印を引き継げます。
次に、新しい代表者が個人の実印を印鑑登録しているかを確かめます。新しく作る会社実印や個人の実印は、登記の申請日に間に合うように注文します。そのうえで、役員変更の登記と印鑑届書を一緒に出し、印鑑カードを引き継ぎます。最後に金融機関へ代表者変更を届け出て、届出印も変えるなら同じ日に改印します。