CHAPTER 05 印材・素材

象牙とチタンの違い|押し心地・重さ・手入れ・価格を比較

象牙とチタンは、一生ものの実印で最後まで迷いやすい2つの印材です。押し心地、重さ、欠けにくさ、手入れ、海外への持ち出し、色の変化、価格を比べ、どんな方にどちらが向くかを説明します。実印13.5mmは象牙(標準)31,200円、チタン29,300円です。

公開日: 2026年10月3日

明るい灰色のコンクリートの上。左は黒い革の上に置いたつや消しの銀色のチタンの印材と黒い革ケース、横に水滴。右は焦げ茶のスエードの上に置いた象牙色の印材と茶色の革ケース、木のふたの油の小瓶、白い綿の布。あいだに真ちゅうのノギスと小さな天秤
象牙とチタン 象牙は天然の牙、チタンは金属。価格は近くても、性格は正反対です

一生ものの実印を作ろうと素材を見比べていくと、最後に残りやすいのが象牙とチタンです。象牙は昔から最高級とされてきた天然の印材、チタンは手入れの要らない現代の金属で、性格はまるで違います。それなのに、実印13.5mmの価格は象牙(標準)が31,200円、チタンが29,300円で、1,900円しか違いません。値段がほぼ同じだからこそ、どちらが自分に合うのかで迷います。この記事では、2つの印材の出どころ、押し心地、丈夫さと手入れ、海外への持ち出し、価格、年月による変化を順に比べます。

先に結論

象牙は、きめが細かく朱肉がよくなじむので、軽く押すだけで細い線まできれいに写る天然の印材です。チタンは、金属の重みで安定して押せ、錆びず、欠けず、手入れは朱肉を拭く程度で済む印材です。どちらも実印や銀行印として何十年も使えます。象牙は乾燥に弱く、海外へ持ち出せず、年月とともに飴色に変わります。チタンは置き場所を選ばず、海外へも持って行け、色が変わりません。価格は、実印1本ならほぼ同じですが、3本セットではチタンのほうが18,300円安くなります。国内で一生使う実印に、もっとも細い線まで彫れる伝統の印材を求めるなら象牙です。手入れをしたくない方、海外の予定がある方、動物由来の素材を避けたい方にはチタンが向いています。

出どころがまったく違う2つの印材

象牙は、ゾウの上あごの切歯(前歯)が長く伸びた牙です。環境省の案内によると、牙は一生伸び続ける歯で、その大部分を象牙質という部分が占めます。印材になるのは、この象牙質です。全日本印章業協会は、象牙を「印材の中でも最も緻密な彫刻ができる」材料として紹介しています。

チタンは、元素記号Tiの金属です。世界大百科事典によると、銀白色で、マグネシウム、アルミニウムに次いで軽く、比重は4.50です。金属としては軽いほうですが、象牙や水牛の角と比べるとずっと重くなります。重さのわりに強く、表面にできる酸化皮膜のおかげで、海水に対しても白金と同じくらい錆びにくいのが特長です。

象牙チタン

ゾウの牙。一生伸び続ける歯の象牙質を印材にします

素材

金属。鉱石から取り出したチタンを、棒に加工します

温かみのある乳白色。日本大百科全書によると、内部は白かクリーム色で、細かい木目のような模様があります

色と見た目

つや消しの銀色。模様はなく、どの1本も同じ見た目です

水牛の角より重く、手にしっとりなじみます。触れると、ほんのり温かく感じます

重さと手触り

比重4.50の金属で、象牙や水牛の角よりずっと重く、手に持つとずしりときます。触れるとひんやりします

硬さと粘りのつり合いがよく、何十年使っても枠や文字が崩れにくい素材です。急な乾燥でひびが入ることがあります

硬さと欠けにくさ

金属ですので、落としても欠けず、反らず、ひびも入りません。乾燥や湿気の影響も受けません

表面が朱肉を適度に含んで離すため、細い線までくっきり写ります

朱肉のなじみ

金属は朱肉を吸いませんので、なじみはふつうです。その代わり重みで自然に圧がかかり、むらなく写ります

押したら朱肉を拭き、ケースにしまいます。直射日光、暖房のそば、夏の車内を避けます

手入れ

押したら朱肉を拭く程度です。しまい忘れても、湿気の多い場所でも傷みません

国内で正しく買っても、国外へは持ち出せません。動物に由来する素材です

持ち出しと由来

海外へ持って行けます。動物に由来しない素材です

実印13.5mm 31,200円、3本セット73,200円。牙のどこから取るかでランクが分かれます

価格

実印13.5mm 29,300円、3本セット54,900円。ランクはなく、直径だけで価格が決まります

押し心地|なじみで押す象牙、重さで押すチタン

どちらも押しやすい印材ですが、その理由が違います。象牙は、朱肉を適度に含んで離す表面のおかげで、軽く押すだけで細い線までくっきり写ります。チタンは、朱肉のなじみそのものはふつうですが、金属の重みで自然に圧がかかります。手の力に頼らずにまっすぐ押せるので、ぶれやむらが出にくくなります。

本象牙(標準)の印材

象牙(標準)

重さ
重め
朱肉のなじみ
とてもよい

手のひらにしっとりなじむ重さです。朱肉がよくなじむので、篆書体や印相体の細い線もかすれにくく、押し直しが減ります。

実印13.5mm 31,200円
チタンの印材

チタン

重さ
とても重い
朱肉のなじみ
ふつう

手に持つとずっしり重く、紙に当てるだけで印材が安定します。力に自信のない方でも、重みのおかげで傾かずに押せます。

実印13.5mm 29,300円

彫り方も違います。象牙は、職人がお名前に合わせて印影を設計し、1本ずつ彫ります。チタンは硬い金属で、印刀(印鑑用の小刀)では彫れないため、同じ職人が設計した印影を金属用の彫刻機で刻みます。どちらも、お名前ごとに作るオーダーメイドの印鑑です。

丈夫さと手入れ|乾燥に気を配る象牙、拭くだけのチタン

何十年も使う実印では、ここで差がはっきり出ます。象牙は、ふつうに扱っていれば長く持つ丈夫な素材ですが、急な乾燥と温度の変化が苦手です。チタンは、金属のなかでも錆びにくさと強さで知られ、置き場所を選びません。

4.50比重チタンの比重
水を1としたときの重さ。水牛の角や木の印材より、ずっと重い金属です
  • 強さ比強度(強度を比重で割った値)は普通鋼の約2倍、アルミニウムの約6倍
  • 錆びにくさ表面にできる酸化皮膜のおかげで、海水に対しても白金と同じ程度に耐える
  • 使われている場所航空機、化学工業の装置、人工骨や関節、眼鏡のフレーム

出典:コトバンクに収録された世界大百科事典、日本大百科全書、化学辞典の「チタン」の項。

本象牙(標準)の印材

象牙

苦手なもの急な乾燥、温度の変化、水、漂白剤

押したあとは、ティッシュで印面を軽く押さえて朱肉を拭き取ります。細い線まで彫れるぶん溝に朱肉がたまりやすいので、年に1、2回、乾いた柔らかい歯ブラシでかき出します。使わないときはケースに入れ、直射日光や暖房器具のそば、夏の車内を避けます。水で洗ったり、漂白したりはしないでください。

チタンの印材

チタン

苦手なものほとんどありません

押したあとに朱肉を拭き取る程度で済みます。乾燥や湿気で傷まず、引き出しにしまったままでも、かばんに入れて持ち歩いても変わりません。水で洗うこともできます。硬い床に落とすと表面に細かい傷が付くことはありますが、欠けたり割れたりはしません。

海外へ持ち出せるか、動物由来かどうか

素材の性質とは別に、法律上の扱いが大きく違います。環境省の案内では、象牙と象牙製品の輸出入は原則禁止です。国内で正しく買った象牙の印鑑でも、国外へは持ち出せません。チタンには、こうした制限がありません。

場面象牙チタン

留学や海外赴任で、印鑑を国外へ持って行く短い海外旅行でも同じです

持ち出せない持ち出せる

外国に住むご家族や友人に贈る海外で暮らす息子さん・娘さん、国際結婚したご親族など

送れない送れる

動物に由来する素材を避けたい宗教上の理由や、ふだんの暮らしの考え方から

避けられない避けられる

日本国内で、自分の実印・銀行印として使う印鑑登録、口座の届け出、契約の押印

使える使える

買う店を選ぶ象牙は国に登録した事業者から買い、認定証を受け取ります

登録事業者から制限なし

次の代に、名前を替えて受け継ぐ印面を削って、新しい名前を彫り直します

彫り直せるお問い合わせください

チタンの印鑑に付くケースは牛革です。革も避けたい方は、注文のときに備考欄でご相談ください。動物由来の素材を避ける考え方は動物由来の素材を避けて印鑑を贈るでまとめています。

価格の比較|実印・銀行印・認印とセット

象牙(標準)とチタンの差がいちばん小さいのは、実印の13.5mmで1,900円です。直径が大きくなるほど差は開き、18mmでは10,900円になります。小さい認印の10.5mmでも、差は10,000円あります。

印鑑の種類と直径象牙(標準)チタン差額
実印 13.5mm31,200円29,300円1,900円
実印 15mm36,100円31,800円4,300円
実印 16.5mm43,300円36,100円7,200円
実印 18mm51,800円40,900円10,900円
銀行印 12mm24,000円16,600円7,400円
認印 10.5mm21,900円11,900円10,000円

どれも印鑑ケースが付き、送料は無料です。象牙には、正規品であることを示す認定証も付きます。通常の象牙の印鑑は、牙のどこから取るかで標準、特上、極上の3つに分かれます。実印13.5mmなら、特上は36,100円、極上は48,200円です。ランクの違いは象牙印材のランクとは?で説明しています。チタンにはランクがなく、直径だけで価格が決まります。

1本ずつの合計3本セット差額
象牙(標準)実印13.5mm・銀行印12mm・認印10.5mm77,100円73,200円−3,900円
チタン実印13.5mm・銀行印12mm・認印10.5mm57,800円54,900円−2,900円
チタン実印15mm・銀行印13.5mm・認印12mm72,000円68,400円−3,600円

3本セットでは、象牙(標準)が73,200円、チタンが54,900円で、18,300円の差になります。実印1本だけなら値段で迷う必要はあまりありませんが、3本揃えるならチタンのほうが予算を抑えられます。

10年、20年使ったときの見た目

使い始めから20年の見た目の移り変わり

象牙標準乳白色が、つやを保ったまま飴色に深まります。傷みではなく、天然の素材ならではの変化です。
チタン色は変わりません。つや消しの表面に、使ううちの細かい擦り傷がなじんでいく程度です。

色の変わり方は、使う回数と、光や手の脂に触れる時間で違います。棒の色は目安で、実際の色とは異なります。

色の変化を「育てる楽しみ」と受け止められる方には、象牙が向いています。買ったときの見た目をそのまま保ちたい方には、チタンが合います。朱肉の色移りも違います。象牙は、印面のまわりがうっすら朱色に染まることがあります。チタンは朱肉を吸わないので、拭けば元の銀色に戻ります。

用途別|どちらが向くか

使う場面・重視すること象牙チタン
国内で一生使う実印は、押し心地を何より大事にしたい◎○

朱肉のなじみときめの細かさは、象牙が1段上です。チタンの押しやすさは、重みによるものです。

手入れをいっさいしたくない△◎

象牙は乾燥を避けてケースにしまう習慣が要ります。チタンは置き場所を選びません。

留学や海外赴任の予定がある△◎

象牙は国外へ持ち出せません。将来の予定が少しでもあるなら、チタンを選んでおくと安心です。

動物に由来する素材を避けたい△◎

チタンは金属です。ケースも革を避けたい場合は、注文のときにご相談ください。

かばんに入れて持ち歩くことが多い○◎

チタンは落としても欠けず、夏の車内や湿気も平気です。象牙は、持ち歩くならケースに入れ、車内に置き忘れないようにします。

伝統のある素材で、節目の記念にしたい◎○

象牙は認定証と一緒に次の代へ受け継げます。開運印鑑なら、芯持や横目のように模様で選べる象牙もあります。

軽い力で、傾かずに押したい○◎

チタンは重みで自然に圧がかかり、手の力に頼りません。象牙も軽く押せますが、重さはチタンに及びません。

予算を抑えて3本揃えたい○◎

チタンの3本セットは54,900円、象牙(標準)は73,200円からです。

2つの質問で決める

  1. 海外へ持って行く可能性、または動物由来の素材を避けたい理由がありますか

    あるチタンです。象牙は国外へ持ち出せず、動物に由来する素材です
    ない次の質問へ
  2. 使い終わったらケースにしまい、乾燥を避ける習慣を続けられますか

    続けられる象牙です。もっとも細い線まで彫れ、朱肉がよくなじむ印材です。実印13.5mmは31,200円、3本セットは73,200円からです
    自信がない、手入れはしたくないチタンです。しまい忘れても傷まない印材です。実印13.5mmは29,300円、3本セットは54,900円からです

よくある質問

チタンの印鑑は、実印として登録できますか

登録できます。市区町村の印鑑登録で断られるのは、ゴム印のように形が変わりやすいものや、同じ形で大量に作られたものです。京都市の案内でも、金属であることは登録できない理由に挙がっていません。当店のチタンの印鑑は、お名前ごとに印影を設計して作るオーダーメイドです。実印として登録でき、銀行の届出印にもお使いいただけます。

チタンは磁石にくっつきますか。財布に入れても大丈夫ですか

くっつきません。化学辞典によると、チタンは常磁性という性質の金属で、鉄のように磁石に引き寄せられません。チタン自体も磁石にならないので、財布の中でカード類と一緒に入れても影響はありません。

チタンは、肌に触れても大丈夫な金属ですか

化学辞典によると、チタンの合金は人工骨や関節、眼鏡のフレームに使われています。体の中に入れる材料や、毎日肌に触れる品にも選ばれている金属です。ただし、肌の反応は体質によって違います。金属で肌がかぶれやすい方は、象牙や木の印材をお選びください。

象牙の印鑑は、今も買って大丈夫ですか

国に登録した事業者から買い、ご自分で持つ分には、法律上の問題はありません。環境省の案内でも、適正に入手して所持、所有することに制限はないとされています。当店は経済産業省認定の象牙取扱店で、印鑑1本ごと、またはセットごとに正規の認定証をお付けしています。詳しくは象牙の印鑑とは?をご覧ください。

実印は象牙、銀行印と認印はチタン、という組み合わせはできますか

できます。3本セットは、3本とも同じ印材でお作りしています。組み合わせる場合は、実印を象牙の単品で、銀行印と認印をチタンの2本セットでご注文ください。たとえば、家で大切に使う実印は象牙、持ち歩くことのある銀行印と認印は手入れの要らないチタン、と分けられます。

まとめ|象牙かチタンかを決める順番

はじめに、海外へ持ち出す可能性があるか、動物由来の素材を避けたい理由があるかを考えます。どちらかに当てはまれば、チタンです。

次に、手入れの習慣を守れるかを考えます。使い終わったらケースにしまい、乾燥を避ける。これを長く続けられるなら象牙、自信がなければチタンです。

最後に、本数を決めます。実印・銀行印・認印を揃えるなら、1本ずつ買うより3本セットのほうが割安です。実印だけ象牙にして、ほかの2本をチタンにする組み合わせもできます。象牙を選ぶ方は、認定証が付くことを確かめてから注文に進んでください。

象牙でもチタンでも、京都の職人がお名前に合わせて印影を設計します

象牙か、チタンか。3本セットから選ぶ

どちらも印鑑ケース付き、送料無料、5年保証。象牙には正規の認定証が付きます。ご注文から3〜7営業日で発送します。実印・銀行印・認印を揃える3本セットがいちばん割安です。

本象牙(標準)の実印・銀行印・認印の3本セットと印鑑ケース

象牙(標準)もっとも細い線まで彫れる、認定証付きの本象牙

3本セット73,200円〜 → 実印・銀行印の2本セット52,400円〜 実印31,200円〜
チタンの実印・銀行印・認印の3本セットと印鑑ケース

チタン錆びず、欠けず、手入れのいらない金属

3本セット54,900円〜 → 実印・銀行印の2本セット43,600円〜 実印29,300円〜

SOURCES

出典

チタンの性質(比重4.50、比強度が普通鋼の約2倍、表面の酸化皮膜による耐食性、人工骨や関節への利用)は、コトバンクに収録された世界大百科事典、日本大百科全書、精選版 日本国語大辞典、化学辞典の記述を参照しました。象牙の構造は環境省の案内と日本大百科全書を、印材としての性質は全日本印章業協会の解説を、象牙の国外持ち出し規制は環境省の案内を参照しました。印鑑登録の条件は京都市の案内によります。価格は2026年10月時点の当店の税込価格です。

  1. 平凡社 世界大百科事典ほか. チタン. コトバンク. https://kotobank.jp/word/チタン,(参照 2026-10-03).
  2. 環境省. 象牙とは. ワシントン条約と種の保存法. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/about/,(参照 2026-10-03).
  3. 環境省. 象牙の国外持ち出し規制について(一般の方向け). ワシントン条約と種の保存法. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/general/,(参照 2026-10-03).
  4. 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)ほか. 象牙. コトバンク. https://kotobank.jp/word/象牙,(参照 2026-10-03).
  5. 公益社団法人 全日本印章業協会. 大切な実印を作る前にお読みください. https://www.inshou.or.jp/inshou/info/index.html,(参照 2026-10-03).
  6. 京都市. 印鑑登録の手続. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html,(参照 2026-10-03).