CHAPTER 05 印材・素材

本象牙の印鑑の見分け方|表示・登録番号・光と模様で確かめる

象牙の印鑑が本物かどうかは、買うときなら店の表示と登録番号、認定証で確かめます。手元にある印鑑は、光の透け方、側面の模様、印面のふちの網目、重さと手ざわり、継ぎ目や気泡の5つで見当をつけます。樹脂の練り物、骨、マンモス牙、白水牛との違いと、法律上の扱いの差も説明します。

公開日: 2026年10月3日

深い緑のフェルトの上に、2本の印材を並べた写真。左は象牙色で細かい木目のような筋が入った印材、右は模様のないつやのある白い印材。奥に真ちゅうのルーペ、黒いベルベットのトレー、白い手袋、右にノギスと真ちゅうのランプ
本象牙の見分け方 象牙かどうかは、買うときなら店の「表示」で、手元にある印鑑なら「光と模様」で確かめます

お祖父様の引き出しから出てきた白い印鑑が、本物の象牙なのか、似た別の素材なのか分からない。通販サイトに「本象牙」と「象牙風」が並んでいて、何が違うのか知りたい。象牙の印鑑は、見た目の似た素材がいくつもあるうえに、売り買いに法律の決まりがある、少し特別な品です。この記事では、まず象牙と間違えやすい4つの素材を整理します。そのうえで、買うときに確かめる表示と、手元にある印鑑を見分ける5つの手がかりを説明します。

先に結論

これから象牙の印鑑を買うなら、見た目ではなく「表示」で確かめます。象牙を売る店には国の登録が必要で、登録番号を表示する義務があるからです。商品名に「本象牙」とあるか、認定証が付くかも見てください。手元にある印鑑は、5つの手がかりで見当をつけます。象牙なら、光にかざしてもほとんど透けず、側面に細かい木目のような縞が入り、印面のふちに網目の模様が見えます。持つとしっとり重く、継ぎ目や気泡はありません。ただし、これは目安です。素材を確定するには、専門機関の分析が要ります。とはいえ、押して使うだけなら素材の証明は求められません。実印の登録でも、象牙かどうかは問われません。

象牙と間違えやすい4つの素材

象牙は、ゾウの上あごの切歯が長く伸びたものです。デジタル大辞泉は、象牙に「細かい木目状の縞模様があり、適度の硬さ」があると説明しています。印材の中には、この白くて木目のある見た目をまねたものや、もともと象牙によく似たものが、主に4つあります。先にそれぞれの正体と法律上の扱いを知っておくと、見分けるときの手がかりになります。

練り物樹脂で象牙に似せたもの

「象牙風」「アイボリー」「象牙調」と書かれた印鑑の多くはこれです。色がどこも均一で、模様がないか、あっても印刷のように規則正しく並びます。

手がかり軽く、手に持つとすぐ温まります。型の継ぎ目や小さな気泡が見つかることもあります

法律取引の規制はありません

骨牛などの骨を磨いたもの

白く、安価な工芸品や古い印鑑に使われてきました。象牙より乾いた質感で、色は黄みが少なく、やや灰色がかって見えることがあります。

手がかり血管が通っていた細い管の跡が、点や短い線として表面に見えます

法律取引の規制はありません

マンモス牙土の中から出た化石の牙

絶滅したマンモスの牙で、象牙の代わりとして印材にも使われます。ゾウの牙とほぼ同じ作りなので、見た目だけで見分けるのがいちばん難しい素材です。

手がかり断面の網目模様の角度が、象牙より狭くなります。外側が茶色く変色していることもあります

法律ワシントン条約の対象外で、象牙のような取引の規制はありません

白水牛水牛の角の白い部分

白くつやのある、角の印材です。色は乳白色で、象牙よりやわらかい光沢があります。層になった筋や、雲のような模様が出ることもあります。

手がかり光にかざすと透けます。象牙より軽めです

法律取引の規制はなく、海外へも持ち出せます

4つのうち、練り物と骨と白水牛は、象牙より安く手に入ります。どれも「悪い素材」ではありません。白水牛は、当店でも実印・銀行印・認印をお作りしている印材です。問題になるのは、ほかの素材が象牙として売られることと、素材が分からないまま国外へ持ち出してしまうことです。白水牛と象牙の違いは、象牙の印鑑とは?でも比べています。

これから買う象牙の印鑑は、見た目より「表示」で確かめます

新しく象牙の印鑑を買うときは、印材そのものを自分で見分けなくても大丈夫です。売る側に、法律で決められた義務があるからです。環境省の案内によると、2018年6月1日から、象牙の印材や製品を売る事業者には国の登録が必要になりました。登録した事業者は、広告や販売のときに登録番号などを表示しなければなりません。種の保存法は、その名前と登録番号を国が公表することも定めています。

買う側が気をつけるのは、登録のない事業者から買わないことです。環境省の象牙Q&Aによると、一般の方が登録事業者から象牙製品を購入することに規制はありません。一方で、無登録の事業者から購入すると、購入者も罰則の対象になります。店のページでは、次の5つを順に見てください。

確かめること店のページのどこを見るか当店の場合
1 国に登録した事業者か

「特定商取引法に基づく表記」や会社案内のページ。象牙を扱う事業者の登録番号が書かれているかを見ます。

経済産業省認定の象牙取扱店です。登録番号は特定商取引法に基づく表記に記載しています
2 商品名に「本象牙」とあるか

商品名と印材の欄。「象牙風」「アイボリー」「象牙調」は、樹脂で象牙に似せた印材を指す言い方です。

「本象牙(標準)」のように、印材名にランクを添えて表示しています
3 認定証が付くか

付属品の欄。正規の象牙であることを示す書面が、印鑑と一緒に届くかを見ます。

単品にもセットにも、象牙認定書をお付けしています
4 ランクの説明があるか

印材の説明ページ。牙のどの部分から取ったかでランクを分け、その違いを説明しているかを見ます。

標準・特上・極上の3つに分け、開運印鑑では芯持・横目・横目芯持も扱います
5 価格が象牙の相場から外れていないか

価格表。象牙は、同じ直径の黒水牛や白水牛より高い印材です。数千円の「象牙」を見たら、印材の表示を読み直してください。

本象牙(標準)は、認印10.5mmで21,900円、実印13.5mmで31,200円です

認定証は、押すときに使うものではありません。ただ、将来その印鑑をお子様に渡すときや、素材を人に説明するときに、象牙であることを示す書面になります。なくさないよう、一緒に保管しておいてください。象牙のランクと価格の全体は、象牙の印鑑とは?特徴・6つのランクと価格・購入前に確かめることにまとめています。

手元にある印鑑を見分ける、5つの手がかり

すでに手元にある印鑑は、表示も認定証も残っていないことが多いでしょう。その場合は、傷めない範囲で、5つの手がかりを順に見ていきます。1つだけで決めつけず、5つを合わせて見当をつけてください。熱した針を当てて焦げる匂いで見分ける方法が紹介されることもありますが、印鑑に跡が残るのでおすすめしません。

手がかり本象牙練り物(樹脂)骨白水牛

光にかざす窓やライトに向けて、胴の部分を見ます

ほとんど透けません。表面がやわらかく光ります 均一に透けるものと、まったく透けないものがあります ほとんど透けません うっすらと透け、中の模様が浮かびます

側面の模様胴をゆっくり回しながら、明るい場所で見ます

細かい木目のような縞が、1本ずつ違う形で入ります 模様がないか、印刷のように同じ間隔で並びます 点や短い線が、ところどころに見えます 層になった筋や、雲のような模様が流れます

印面のふちの断面彫っていない縁の部分を、ルーペで見ます

線が交差する網目の模様(シュレーガー線)があります 網目はありません 小さな穴が点々と見えます 年輪のように層が重なって見えます

手ざわりと重さ同じ大きさのほかの印鑑と持ち比べます

しっとりと重く、触れるとほんのり温かみがあります 軽く、つるつるしていて、すぐに手の温度になります さらりと乾いた手ざわりです 象牙より軽く、なめらかです

継ぎ目と気泡頭の面と胴の境目、胴の中ほどを見ます

ありません 型の継ぎ目の細い線や、小さな気泡が見つかることがあります ありません ありません

5つのうち、いちばん手軽で分かりやすいのが「光にかざす」です。象牙と白水牛はどちらも白くて縞のある印材で、側面を見ただけでは迷うことがあります。光を当てると、その違いがはっきり出ます。

白水牛 角は層になった繊維の集まりで、光を通します。窓に向けると、胴の中の雲のような模様が浮かび上がります。 透ける=角の印材
象牙 歯と同じ作りの、詰まった素材です。光を当てても胴の中まではほとんど通らず、表面がやわらかく光ります。 透けない=象牙、骨、または樹脂

透けなければ、象牙か、骨か、透けない樹脂かに絞られます。そこから先は、側面の木目のような縞と、印面のふちの網目で見分けます。

側面の縞は、象牙が「歯」であることから生まれます。最新 地学事典によると、象牙質の約70%は水酸りん灰石という鉱物の細かい結晶です。残りは、コラーゲンを主とする有機質が約18%、水が約12%です。日本大百科全書は、象牙の内部は白かクリーム色で、美しい木目があり、きめが細かいと説明しています。天然の素材なので、木目の出方は1本ずつ違います。印刷のように同じ縞が繰り返していたら、樹脂を疑ってください。

象牙とマンモス牙は、断面の網目の角度で見分けます

4つの素材のうち、マンモス牙だけは、ゾウの牙とほぼ同じ作りです。側面の縞も、重さも、手ざわりも似ています。見分ける手がかりになるのは、印面のふちや頭の面に見える網目模様で、シュレーガー線と呼ばれます。財務省の関税中央分析所は、牙の象牙質を磨いた横断面に現れるこの模様を調べました。外側の線が交わる角度を比べたところ、象牙とマンモス牙をはっきり区別できたと報告しています。

象牙 網目の線が、広い角度で交わります。ひし形が横に広がって見えます。 角度が広い
マンモス牙 網目の線が、狭い角度で交わります。ひし形が縦に細長く見えます。 角度が狭い

図は角度の違いを分かりやすく描いた模式図です。実際の網目はもっと細かく、ルーペが要ります。角度を測って判定するのは専門機関の仕事です。ご家庭では、ひし形の形の違いを見るところまでが目安です。

マンモス牙はワシントン条約の対象ではなく、国内でも象牙のような取引の決まりはありません。そのため、象牙の代わりの印材として売られています。2つは見た目がよく似ているので、買うときは印材の名前が「象牙」か「マンモス」か、はっきり書かれているかを見てください。

見分けがつかないときは、どうすればよいか

5つの手がかりを見ても決めきれないときは、無理に答えを出さなくて構いません。その印鑑をどうしたいかで、次にすることが決まります。

そのまま使う

押すだけなら、素材の証明は要りません

何もしなくて大丈夫です

実印の登録にも、銀行の届け出にも、印材の種類を書く欄はありません。印影がはっきり写り、枠が欠けていなければ、象牙でも骨でも樹脂でもそのまま使えます。家にある象牙製品を持ち続けることや、ご家族から相続することに、国への手続きも要りません。

気をつけること象牙の可能性がある印鑑は、海外へ持ち出さないでください

売る、譲る

相手が登録事業者かを確かめます

相手の確認が先です

象牙かもしれない印鑑を買い取りに出すときは、相手の店が国の登録を受けているかを見ます。環境省の象牙Q&Aによると、象牙製品を商売として売り買いできるのは、登録を受けた事業者だけです。ご自身が繰り返し売る場合は、個人でも事業者の登録が要ります。

相談先環境省の野生生物課、または登録の事務を行う自然環境研究センター

はっきりさせたい

専門機関の分析に頼みます

費用と日数がかかります

素材を確定するには、断面の観察や成分の分析が要ります。これは印章店ではなく、分析を専門にする機関の仕事です。素材が分かっても使い道は変わらないので、依頼するのは、はっきりさせたい事情があるときだけで構いません。

当店でできることお作りした象牙の印鑑には、認定証が付いています。ご注文の記録もありますので、お問い合わせください

認定証が付いていない古い象牙の印鑑も、持ち続けて構いません

環境省の案内によると、適正に入手した象牙製品を持ち続けることに制限はありません。登録票という書面が要るのは、牙の形がそのまま残った全形牙を取引するときです。お祖父様の代から家にある象牙の印鑑なら、書面がなくても心配は要りません。ただし、国外へ持ち出すことはできません。

よくある質問

「象牙風」「アイボリー」と書かれた安い印鑑は、象牙ではないのですか

象牙ではありません。樹脂で色を似せた印材です。象牙を売る店には登録番号の表示が義務づけられていますが、樹脂の印鑑はその対象ではありません。樹脂だから悪いわけではなく、自治体の条件に合えば実印として登録もできます。ただ、象牙だと思って買うと手ざわりや重さが違いますので、印材の表示をよく読んでください。

相続した古い印鑑が象牙かどうか分かりません。使い続けてよいですか

使い続けて構いません。印鑑登録にも銀行の届け出にも、素材の証明は求められません。象牙製品を相続して持つことに、国への手続きも要りません。印影がはっきり写るか、枠に欠けがないかだけを見てください。長く使った印鑑の点検の仕方は、親が作ってくれた印鑑を使い続けるには?で説明しています。

象牙かどうか、お店で鑑定してもらえますか

素材を確定する分析は、当店では承っていません。印章店で分かるのは、この記事の5つの手がかりで見当をつけるところまでです。確かめたい事情があれば、分析を専門にする機関にご相談ください。当店でお作りした象牙の印鑑には、1点ごとに認定証をお付けしています。これが、素材を説明するいちばん分かりやすい書面になります。

マンモス牙の印鑑は、買っても大丈夫ですか

法律上の問題はありません。マンモスは絶滅した動物で、その牙はワシントン条約の対象外です。国内でも、象牙のような売り買いの決まりはありません。見た目は象牙によく似ています。違いは、外側が茶色く変色していることがある点と、断面の網目の角度が狭い点です。買うときは、印材の名前に「マンモス」とはっきり書かれているかを見てください。

認定証をなくしてしまいました。印鑑は使えますか

使えます。認定証は押すときに見せる書面ではないので、なくしても、これまでどおり押して使えます。当店でお作りしたものなら、ご注文の記録が残っていますので、お問い合わせからご連絡ください。これから買う方は、認定証を印鑑と同じ場所にしまっておくと安心です。

まとめ|象牙かどうかを確かめる順番

これから買うときは、店のページで、登録番号の表示、商品名の「本象牙」、認定証、ランクの説明、価格の順に確かめます。5つがそろっていれば、印材を自分で見分ける必要はありません。

手元にある印鑑は、光にかざすところから始めます。透ければ、白水牛などの角の印材です。透けなければ、側面の木目のような縞と、印面のふちの網目を見て、重さと継ぎ目で裏づけます。マンモス牙かどうか気になるときは、網目のひし形の形を見比べます。

それでも決めきれなければ、その印鑑をどうするかで次にすることを決めます。そのまま使うなら、印影がはっきり写り、枠に欠けがないかを見るだけです。売るときは相手の登録を確認し、海外へは持ち出しません。素材をはっきりさせたいときだけ、専門機関に分析を頼みます。これから象牙を選ぶ方は、認定証が付く印鑑を、ランクと予算に合わせて選んでください。

SOURCES

出典

象牙製品の取引の決まり(登録事業者からの購入、登録番号の表示、無登録の事業者から買った場合の罰則)は、環境省の案内と象牙Q&A、種の保存法の条文を参照しました。象牙の見た目と成分は、コトバンクに収録された辞典の記述によります。断面の網目模様(シュレーガー線)で象牙とマンモス牙を見分けられることは、財務省関税中央分析所の報告を参照しました。見分け方は目安であり、素材の確定には専門機関の分析が必要です。価格は2026年10月時点の当店の税込価格です。

  1. 環境省. 象牙の国外持ち出し規制について(一般の方向け). ワシントン条約と種の保存法. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/general/,(参照 2026-10-03).
  2. 環境省. 象牙取引制度の概要. 特定国際種事業・特別国際種事業. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/system-ivory/,(参照 2026-10-03).
  3. 環境省 自然環境局 野生生物課. 象牙Q&A(2020年2月6日版). https://www.env.go.jp/nature/FAQ_on_ElephantIvory_JP_0421.pdf,(参照 2026-10-03).
  4. 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)第12条・第33条の6・第33条の8. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/404AC0000000075,(参照 2026-10-03).
  5. 石橋博ほか. 象牙の形態学的識別(Morphological Identification for Elephant Ivory). 関税中央分析所報 第37号, 1998. https://www.customs.go.jp/ccl_search/info_search/illicit/r_37_06_j.pdf,(参照 2026-10-03).
  6. 小学館 デジタル大辞泉・日本大百科全書(ニッポニカ)ほか. 象牙. コトバンク. https://kotobank.jp/word/象牙,(参照 2026-10-03).
  7. 最新 地学事典ほか. 象牙質. コトバンク. https://kotobank.jp/word/象牙質,(参照 2026-10-03).
  8. 公益社団法人 全日本印章業協会. 大切な実印を作る前にお読みください. https://www.inshou.or.jp/inshou/info/index.html,(参照 2026-10-03).