CHAPTER 15 人生の節目・記念
親が作ってくれた印鑑を使い続けるには?点検・手入れと役目の決め方
成人や就職のときにご両親が作ってくれた印鑑を、長く使い続けるための方法を説明します。試し押しで分かる点検の4か所、押したあとの手入れ、使い込んだ印鑑に素材ごとに出やすい変化、傷みにくい役目の任せ方、欠けたときの直し方と届け出、新しく足す印鑑の選び方までまとめました。
公開日: 2026年9月30日
成人のとき、就職のとき、お父様やお母様が「これからは自分の印鑑を」と作ってくれた1本。何年も使ううちに角が丸くなり、ケースもくたびれてきたけれど、できればこの先も使い続けたい。そう考える方は少なくありません。この記事では、使い続けられる状態かを確かめる点検のしかたと、印鑑を長持ちさせる手入れの方法をご説明します。あわせて、その1本にどの役目を任せるとよいかもお話しします。
試し押しで枠と字がきれいに写り、本体にひびがなければ、何十年前の印鑑でも使い続けられます。長持ちさせるには、押したら拭いてケースに戻します。そのうえで、思い出の1本は実印か銀行印のような出番の少ない役目に回し、毎日押す認印は別に持ちましょう。持ち歩く回数が減るだけで、欠けたりなくしたりする心配はずっと小さくなります。
使い続けられるかは、試し押しで分かります
見た目が古くても、押した跡がきれいなら問題はありません。反対に、外から見て傷がなくても、押すと枠が途切れていることがあります。白い紙を押印マットの上に置き、朱肉を付けて2〜3回押してから、次の4か所を見てください。
- 頭の面
印面と反対側の端に、細いひびがないか。水牛の角のような素材は、乾燥が続くとここからひびが入ることがあります
ひびがあれば早めにお店に相談する - 胴
割れや反りがないか。平らな机の上で転がし、ふらつかないかを見ます
割れ・反りがあれば作り直す - 印面の縁
押した跡の枠が、ぐるりと一周つながっているか。どこかで途切れていたら、縁が欠けています
欠けがあれば彫り直すか作り直す - 字の線と溝
線が太って見えたり、字のすき間が埋まって見えたりするときは、溝に朱肉が詰まっているだけのことがよくあります
朱肉を落とせばそのまま使える
実印として登録している印鑑は、とくに枠の欠けに気をつけます。京都市の案内では、印影が鮮明で字が読み取りやすいことを、登録できる印鑑の条件に挙げています。外枠があり、輪郭を照らし合わせやすいことも条件の1つです。枠が欠けたまま押し続けると、役所に届けた印影と見比べにくくなります。症状ごとの見分け方は印鑑の買い替え時期の目安|枠の欠け・すり減り・ひびの見分け方でくわしく説明しています。
思い出の1本に、傷みにくい役目を任せる
印鑑が傷んだり、なくなったりしやすいのは、持ち歩いているときです。かばんの中で金具に当たる、机から落とす、出先に置き忘れる。毎日の認印として使うほど、こうした場面に出会うことが増えます。長く残したい1本は、出番の少ない役目に回しましょう。
実印にする
出番が少なく、いちばん傷みにくい家や車の契約、相続などで押すだけなので、ふだんは引き出しの奥にしまっておけます。大きさや彫る字の条件は、市区町村ごとに決まっています。同じ世帯のご家族がすでに実印にしている印鑑は、登録できません。
向く印鑑フルネームか姓を彫った、直径13.5mm以上のもの
銀行印にする
出番は口座の手続きのときだけ通帳と別の場所にしまい、窓口で手続きするときだけ出します。名前だけを彫った印鑑なら、結婚で名字が変わっても続けて使えます。
向く印鑑名前だけ、または姓を彫った、12〜15mmのもの
認印にする
毎日使うと傷みやすい宅配便の受け取りや職場の書類で、いちばん多く押す役目です。家に置いて使うならよいのですが、持ち歩くと落としたり、なくしたりする心配がつきまといます。
持ち歩くなら別の認印をもう1本用意する
いま1本で実印も銀行印も兼ねているなら、この機会に役目を分けておくと安心です。兼用の1本をなくすと、役所の登録も、すべての口座の届出印も、一度に変えることになります。ご家族と1本の印鑑を共有している場合の分け方は、子どもの銀行印は親と同じでいい?共用で困る場面と本人用に替える手順で説明しています。
足りない役目は、新しく作って足す
思い出の1本を実印に回したら、銀行印と認印が足りなくなります。同じ素材で、直径を1段ずつ小さくした2本を作ると、3本を並べたときに、どれがどの役目か大きさで見分けられます。
手入れは、押したあとの30秒で決まります
印鑑が長持ちするかどうかは、押したあとの扱いで大きく変わります。特別な道具は要りません。
ティッシュかやわらかい布で、印面を軽く押さえるように拭きます。朱肉が残ったまま乾くと溝に詰まり、素材によっては縁がもろくなります。
ケースは、印面の縁をほかのものにぶつけないためのものです。しまう場所は、窓ぎわやエアコンの風が当たる棚を避けます。
毛のやわらかい歯ブラシで、字の溝を軽くなでるように払います。固まっているときは、何度か往復させます。
水や薬品は、木や角の素材を傷めます。針やつまようじで溝をかくと、線の縁が欠けることがあります。
ケースの留め具がゆるんだり、内側の布がはがれたりしてきたら、取り替えどきです。ふたが開いたままかばんの中を転がると、印面の縁が欠ける原因になります。
使い込んだ印鑑に、素材ごとに出やすい変化
ご両親が選んだ素材によって、年月とともに出てくる変化が違います。お手元の印鑑の色を見て、当てはまる素材を探してください。
柘(木目のある飴色)
出やすい変化縁の丸まり線の太り
朱肉の油を吸うと、印面の縁が少しずつやわらかくなり、角が丸まって線も太く写るようになります。押したらすぐに拭くことが、いちばんの手入れです。色が濃くなるのは、使い込んだ木の自然な変化です。
黒水牛(つやのある黒)
出やすい変化頭のひびつやの曇り
水牛の角でできているので、空気が乾く季節に頭の面から細いひびが入ることがあります。年に1回ほど、胴にごく薄く椿油をのばしておくと、乾燥と曇りを防ぐ助けになります。油は印面には付けません。
象牙(乳白色から飴色)
出やすい変化色の深まり急な乾燥でのひび
年月とともに白から飴色に落ち着いていきますが、これは傷みではありません。急な乾燥と直射日光を避けてケースにしまえば、長く使い続けられます。
しまっておく場所の選び方は、子どもの印鑑を大人になるまで保管する方法|素材別の注意点で素材ごとにまとめています。
欠けてしまったときの直し方と、届け出
点検で欠けやひびが見つかっても、すぐに使えなくなるわけではありません。どう直すかは傷み方で決まり、どこに届け出ているかで、そのあとの手続きが変わります。
見つかったこと枠が少し欠けた、字の線がすり減った
直し方印面を削って彫り直すか、新しく作ります。彫り直しなら、同じ印材を使い続けられます
届け出印影が変わるので、実印は登録し直し、銀行印は届出印を変えます
見つかったこと胴や頭にひびが入った
直し方ひびは広がることがあるので、新しく作ります。思い出の1本は、箱に入れて記念に残せます
届け出新しい印鑑で、実印は登録し直し、銀行印は届出印を変えます
見つかったこと結婚で名字が変わった
直し方名前だけを彫った印鑑なら、そのまま使い続けられます。姓を彫った印鑑は、新しい姓で作るか、彫り直します
届け出口座は窓口で名字の変更を届け出ます。姓を彫った実印は、登録し直します
銀行印を変えるときに窓口へ持っていくものは、全国銀行協会の案内によると4つです。これまでの印鑑、新しく届け出る印鑑、通帳、本人確認書類です。彫り直す場合は、元の印影が残りません。お店に印鑑を預ける前に、届け出ている銀行で進め方を確かめておきましょう。
当店でお作りした印鑑がご購入から5年以内に破損したときは、状態を確かめたうえで、修理か彫り直しをご案内しています。5年を過ぎた印鑑や、ご両親がほかのお店で作ったものも、彫り直しのご相談をお受けします。印材の種類と直径、欠けやひびの様子を添えてお問い合わせください。状態によってはお受けできないことがあります。印面を削って別の名前を彫る方法は、親から受け継いだ印鑑は使える?実印・銀行印・認印の扱いと改刻で説明しています。
よくある質問
20年以上前に作ってもらった印鑑でも、実印に登録できますか
登録できるかどうかは、作った年ではなく、大きさと彫った字、押した跡の状態で決まります。京都市の場合、大きさの条件は、印影が一辺8mmの正方形に収まらず、一辺25mmの正方形に収まることです。そのうえで名前が彫ってあり、枠がはっきり写れば登録できます。
親が作ってくれた印鑑を、親と共用しています。このままでいいですか
同じ世帯のご家族がその印鑑をすでに実印にしていると、もう登録には使えません。口座でも、同じ印鑑を2人で届け出ていると、どちらかがなくしたときに、両方の口座で手続きが要ります。ご自分の分を新しく作り、思い出の1本はご両親の手元に残すか、記念にしまっておくとよいでしょう。
名前だけを彫った印鑑を、実印にしてもいいですか
京都市では、氏名のほか、氏だけ、名だけの印鑑も実印にできます。名前だけの印鑑なら、結婚で名字が変わっても登録し直さずに済むことが多く、女性の実印として選ばれることもあります。扱いは市区町村によって違うことがあるので、登録する役所の窓口で確かめてください。
ケースが古くなりました。印鑑を別のケースに入れ替えてもいいですか
当店ではケース単体の販売はしていません。お手元の印鑑の直径と長さに合うケースなら、入れ替えてそのまま使えます。大きさが合わないと、中で印鑑が動いて縁が当たるので避けてください。
まとめ|試し押しで確かめ、役目を決めて、押したら拭く
まず、白い紙に試し押しをして、枠と字の線、本体のひびを確かめます。欠けもひびもなければ、思い出の1本を実印にするか銀行印にするかを決め、足りない役目の印鑑を足します。欠けやひびがあれば、彫り直すか新しく作るかを選びます。印影が変わるときは、役所の登録と銀行の届出印を変える手続きまで済ませます。あとは押すたびに拭いて、ケースに戻すだけです。
ご両親の作ってくれた1本に、足りない役目を足してそろえる
京都の職人が、お名前の字に合わせて印面を設計し、1本ずつ彫刻します。お手元の印鑑と同じ素材を選べば、並べたときに1組に見えます。2本セット・3本セットは桐箱か化粧箱入り、朱肉と押印マット付き。ご注文から3〜7営業日で発送、全国送料無料、5年保証です。
お手元の印鑑の素材と直径をお知らせいただければ、合わせやすい組み合わせをご提案します。お問い合わせからどうぞ。