CHAPTER 05 印材・素材

印材の価格差は何で決まる?採れる量・太さ・等級・加工の4つ

印材の価格差が生まれる理由を、採れる量、太さ、等級、加工の手間の4つに分け、薩摩本柘から本象牙まで当店の価格を例に説明します。高い印材ほど丈夫かどうかや、予算ごとに選べる3本セットもまとめました。

公開日: 2026年10月5日 更新日: 2026年10月7日

明るい木のカウンターに真鍮の天秤が置かれ、左の皿に淡い黄色の柘の印材が3本、右の皿に乳白色の印材が1本のっている。手前には太さの違う黒い印材が細い順に4本並び、右にそろばん、奥に黒い水牛の角と皮つきの柘の枝がある
印材の価格差 値段の差を決めるのは、主に材料です

実印を作ろうと商品ページを開くと、同じ13.5mmなのに10,700円の品も48,200円の品もあります。彫る名前は同じなのに、なぜ4倍以上の開きが出るのでしょうか。高い印材を選ばないと、あとで困るのでしょうか。この記事では、印材ごとに価格が違う理由を、当店の商品を例にしてお話しします。

先に結論

印材の価格は、採れる量、太さ、等級、加工の手間の4つで決まります。お名前の字を1本ずつ設計する工程は、どの印材でも変わりません。価格の差は、ほぼ材料の差です。高い印材ほど丈夫、とも限りません。当店の耐久性の目安では、11,900円の黒水牛も27,600円の白水牛も星4つです。予算と、色や手ざわりの好みで選んでください。

同じ実印13.5mmでも、印材で4倍以上の差があります

当店の実印でいちばん細い13.5mmの価格を、印材ごとに並べました。

どの印材でも、職人がお名前の字を1本ずつ配置し、印鑑ケースと5年保証が付きます。表で差がついているのは、印材の部分です。彫り方まで含めた印鑑の値段の決まり方は、安い印鑑と高い印鑑の違いでご説明しています。

印材の価格を分ける4つの理由

材料の値段は、この4つで変わります

  1. 1採れる量が、素材ごとに違います

    木は、育てれば次の材料が採れます。角は、1本のうち印材にできるのが先のほうだけです。象牙は、国内にある量が増えません。

  2. 2太い印材ほど、取れる本数が減ります

    同じ原料から、細い印材は何本も取れます。太い印材は、1本しか取れないことがあります。

  3. 3同じ素材でも、色や部位で等級が分かれます

    白水牛は模様の有無で、象牙は牙のどの層から取るかで、価格が変わります。

  4. 4加工の手間と道具が違います

    チタンは金属ですので、木や角とは別の彫刻機を使います。樹脂で固める彩樺のように、材料を作る工程が加わる印材もあります。

理由1|材料がどれだけ採れるか

1つ目は、材料の採れる量です。木、角、象牙の順に、手に入る量が限られていきます。

薩摩本柘の印材
木薩摩本柘 10,700円〜柘は、櫛や版木にも使われてきた木です。世界大百科事典によると、鹿児島県が主な産地の1つです。当店の本柘は、すべて鹿児島の薩摩産です。
白水牛の印材
角黒水牛 11,900円〜、白水牛 27,600円〜角の根元は空洞で、印材になるのは中身の詰まった先のほうだけです。白い角はもともと少ないため、白水牛は黒水牛より高くなります。
本象牙(標準)の印材
象牙本象牙 31,200円〜象牙は、ワシントン条約で商業目的の国際取引が原則として禁止されています。印材にできるのは、すでに国内に合法的にある分だけです。

全日本印章業協会は、実印の材料として象牙、牛角、黒水牛、柘の4つを挙げています。どれも昔から印鑑に使われてきた素材です。価格の高い順は、採れる量の少ない順とほぼ重なります。象牙が国内で売買できる理由は、象牙の印鑑とワシントン条約にまとめました。

理由2|太い印材ほど、同じ原料から取れる本数が減ります

印材は、原料を丸い棒に削り出して作ります。直径が大きくなると、1つの原料から取れる本数が急に減ります。

太くしたときにどれだけ値上がりするかは、印材によって違います。実印の4つの直径で比べてみます。

実印の価格(税込・1本)

印材13.5mm15mm16.5mm18mm
薩摩本柘10,700円11,900円14,300円17,900円
黒水牛11,900円15,300円20,400円24,000円
白水牛(柄)16,700円20,400円28,800円36,100円
チタン29,300円31,800円36,100円40,900円
本象牙(標準)31,200円36,100円43,300円51,800円

13.5mmから18mmにすると、薩摩本柘は7,200円上がります。黒水牛は12,100円、白水牛(柄)は19,400円です。13.5mmでは1,200円だった薩摩本柘と黒水牛の差が、18mmでは6,100円に広がります。太い角ほど数が少ないことが、価格に表れています。

会社の印鑑では、この差がさらに大きくなります。本象牙(標準)の会社実印は、18mmが93,500円、21mmが159,500円です。直径が3mm違うだけで、66,000円変わります。薩摩本柘なら、同じ3mmの差は2,400円です。

理由3|同じ素材でも、色や部位で等級が分かれます

商品ページには、同じ素材の名前が2つ3つ並んでいることがあります。これは等級の違いです。

白水牛には、茶色の筋模様が入る「白水牛(柄)」と、全体が乳白色の「白水牛」があります。実印13.5mmで比べると、柄入りが16,700円、模様のない白水牛が27,600円です。全体が白い角は取れる量が少なく、そのぶん10,900円高くなります。色の区分は、白水牛の純白とは?でくわしくご説明しています。

象牙は、牙のどの層から取ったかで3つのランクに分かれます。

ランクで変わるのは、色ときめ、取れる量です。どのランクも、実印として同じように使えます。開運印鑑では、輪の模様が出る横目や、中心に芯が通った芯持ちも扱っています。くわしくは象牙印材のランクとは?をご覧ください。

理由4|加工にかかる手間と道具

材料を印材の形に整える手間や、彫るための道具の違いも、価格に表れます。チタンは硬い金属で、印鑑用の小刀では彫れません。職人が設計した印影を、金属用の彫刻機で刻みます。彩樺は、樺の木を樹脂で固めて作る印材です。実印では、同じ直径の薩摩本柘より900円高くなります。黒水牛も、多くは黒く染めて仕上げます。

同じ印材なのに、ページによって価格が違う理由

開運印鑑は、お名前の鑑定、鑑定書、お守り、桐箱を含んだ価格です。薩摩本柘の実印13.5mmは、通常の印鑑が10,700円、開運印鑑が17,600円になります。会社の印鑑は16.5〜24mmと太めに作るため、同じ薩摩本柘でも会社実印は20,400円からです。印材どうしの価格を比べるときは、印鑑の種類と直径をそろえて見てください。

高い印材ほど丈夫、とは限りません

印材の価格は、主に採れる量や見た目の希少さで決まり、丈夫さの順番とは一致しません。当店の商品ページに載せている耐久性の星と、実印13.5mmの価格を1枚の図にしました。

黒水牛は、星4つの印材のなかでいちばん手ごろです。白水牛が黒水牛より高いのは白い角が少ないためで、丈夫さの差ではありません。星5つのチタンと本象牙は、どちらも3万円前後からです。長く使うことを第一に考える方は、一生使える印鑑の選び方もあわせてお読みください。

予算から印材を決める|3本セットの価格帯

実印、銀行印、認印を同じ印材でそろえる3本セットの価格を、予算ごとにまとめました。

2万円台木の印材と黒水牛

  • 薩摩本柘 21,700円〜淡い黄色の木。軽く、手になじみます
  • 彩樺 23,700円〜赤茶の木目が入る、樺の木の印材です
  • 黒水牛 24,300円〜つやのある黒。粘りがあり、欠けにくい角です

はじめて3本をそろえる方に

3万〜5万円台模様の入る角と金属

  • 白水牛(柄)36,900円〜乳白色に茶色の筋。模様は1本ずつ違います
  • チタン 54,900円〜乾燥や虫の心配がない金属です

見た目や、手入れの手軽さを重視する方に

6万円〜白い角と象牙

  • 白水牛 61,000円〜模様のない乳白色の角です
  • 本象牙(標準)73,200円〜特上は82,100円〜、極上は107,400円〜

贈り物や、長く受け継ぐ印鑑に

3本セットは、同じ印材の単品を3本そろえるより安くなります。黒水牛のいちばん小さい組み合わせなら、単品の合計は25,600円、セットは24,300円です。同じ予算で、印材を1段上げた実印1本にするか、3本をそろえるかで迷うこともあるでしょう。そのときは、実印・銀行印・認印を使い分けられるセットから考えてみてください。

よくある質問

いちばん安い印材で実印を作っても、登録できますか

登録できます。京都市が登録できないとしているのは、ゴム印のように変形しやすい印鑑です。薩摩本柘などの木の印鑑は、その例に入っていません。条件は市区町村ごとに違いますので、お住まいの役所でも確かめてください。

高い印材のほうが、きれいに彫れますか

価格が高いほどきれいに彫れる、というわけではありません。全日本印章業協会は、象牙を「もっとも緻密な彫刻ができる」印材と説明しています。一方で、柘も組織が緻密で硬く、彫刻に適しているとしています。当店では、どの印材でも職人がお名前の字を1本ずつ配置します。

同じ黒水牛なのに、店によって価格が違うのはなぜですか

角のどの部分から取った印材か、彫刻の方法、ケースや保証の内容が店ごとに違うためです。比べるときは、直径と付属品、保証の期間をそろえて見てください。当店の印鑑はケースと5年保証付きで、送料は無料です。

直径を1段上げるのと、印材を1段上げるのは、どちらがよいですか

直径を優先してください。フルネームを彫る実印は、文字数に対して直径が小さいと、字が窮屈になります。直径が決まったら、その太さの価格を印材ごとに見比べると、予算に収まるものが分かります。

象牙の価格は、これから上がりますか

先のことは、当店にも分かりません。確かなのは、国内にある象牙の量が増えないことです。価格の見通しではなく、ご自分がその印材を使いたいかどうかで決めてください。

まとめ|価格から印材を決める順番

はじめに、3本そろえるか1本だけ作るかと、予算の上限を決めます。次に、お名前の文字数から直径を選びます。角と象牙は、太くするほど値上がりの幅が大きくなります。続いて、その直径の価格を印材ごとに見比べます。予算に収まる印材が2つ3つ残ったら、色と手ざわりの好みで選びます。白水牛や象牙の等級は、最後に考えれば間に合います。

SOURCES

出典

柘・黒水牛・象牙の印材としての性質は全日本印章業協会の解説、柘の産地は改訂新版 世界大百科事典、象牙の国際取引の扱いは環境省の案内によります。印鑑登録の条件は京都市の案内で、取扱いは市区町村によって異なります。耐久性の星は当店の商品ページに載せている目安で、数値で測ったものではありません。原料から取れる本数の図は考え方を示したもので、実際の取り方は素材ごとに違います。価格は記事作成時点のものです。

  1. 公益社団法人 全日本印章業協会. 大切な実印を作る前にお読みください. https://www.inshou.or.jp/inshou/info/index.html,(参照 2026-10-05).
  2. 平凡社 改訂新版 世界大百科事典ほか. ツゲ. コトバンク. https://kotobank.jp/word/ツゲ,(参照 2026-10-05).
  3. 環境省. 象牙とは. ワシントン条約と種の保存法. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/about/,(参照 2026-10-05).
  4. 京都市. 印鑑登録. 京都市情報館. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html,(参照 2026-10-05).