CHAPTER 04 印鑑登録・各種手続き
公正証書遺言に実印は必要?遺言者・証人の持ち物と電子サイン
公正証書遺言を作る方は、発行から3か月以内の印鑑登録証明書と実印で本人確認を受けます。遺言そのものには、遺言をする方と証人2人が電子サインをします。当日の流れ、証人になれない人、手数料の計算例、自筆の遺言との違い、亡くなったあとに使う実印まで説明します。
公開日: 2026年10月12日
お父様が「遺言を公正証書にしておきたい」と言い出した。公証役場の案内を見ると、持ち物に印鑑登録証明書とある。実印は若いころに作ったきりで、しまった場所もあやしい。証人を頼まれたご友人は、印鑑を持っていくのだろうか。作る日までに、だれが何を用意するのかを順に見ていきます。
遺言をする方は、発行から3か月以内の印鑑登録証明書と実印を用意します。運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの身分証明書でも本人確認は受けられます。遺言そのものには、遺言をする方と証人2人が、画面にペンで電子サインをします。押印はありません。
公正証書遺言は、公証人に内容を伝えて作ってもらう遺言です
遺言には、ご自分で書く方法のほかに、公証人に作ってもらう方法があります。これが公正証書遺言です。民法は、その方式を次のように定めています。
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
民法 第969条第1項
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
「口授」は、口頭で伝えることです。証書の作り方は公証人法に任されていて、2025年10月1日からは、紙ではなく電子データで作るのが原則になりました。当日は、次の順に進みます。
- 01内容を伝える遺言をする方が、証人2人の前で、だれに何を残すかを公証人に話します。
- 02証書を確かめる公証人が、用意しておいた遺言の文面を読み上げるか、画面で見せます。
- 03画面にサインする内容に間違いがなければ、遺言をする方と証人2人が、タッチペンで名前を書きます。
- 04公証人が仕上げる公証人が電子サインと電子署名をして、遺言ができあがります。
文面は、当日までに公証人と打ち合わせて決めておきます。相談は無料で、ご家族が資料を届けることもできます。できあがった原本は公証人の側で保管され、亡くなったあとに家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。
遺言をする方が、当日までに用意するもの
公証人は、遺言をする方がご本人かどうかを確かめます。日本公証人連合会は、その資料として印鑑登録証明書を挙げています。
印鑑登録証明書
発行から3か月以内のものです。作る日が決まってから、市区町村で取ります
実印
証明書と同じ印鑑です。前の日に白い紙に押して、枠が欠けていないかを見ます
戸籍謄本
遺言をする方と、相続人との続柄が分かるものを用意します
財産の資料
預金は通帳かそのコピー、家や土地は登記事項証明書と固定資産税の納税通知書です
印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどの顔写真付きの身分証明書を出すこともできます。その場合に合わせて持つ印鑑は、認印です。相続人でない方に財産を残すときは、その方の住所が分かる書類も要ります。住民票や、届いた手紙などです。
証人2人は、印鑑を押さずに電子サインをします
証人は、遺言をする方がご自分の考えで話していることと、手続きが正しく行われたことを見届ける役です。当日は最初から最後まで同席し、遺言の原本に電子サインをします。
だれでも証人になれるわけではありません。民法は、遺言の内容に利害のある人を証人から外しています。
相続人になる予定の方奥様やご主人、お子様などです。遺言で財産を受け取る方も同じです
なれません相続人になる予定の方や、財産を受け取る方のご家族民法は、その方の配偶者と、お子様やお孫さんなどの直系血族も、証人から外しています
なれません未成年の方18歳になっていない方です
なれません財産を受け取らないご友人や知人遺言の内容を知られてもよい相手を選びます
なれます公証役場が紹介する方頼める人が見つからないときに、申し出ます
なれますご自分で証人を頼んだときは、証人の氏名、住所、生年月日が分かるメモを、先に公証役場へ渡します。運転免許証のコピーなどでもかまいません。証人が印鑑を持っていくかどうかは、公証役場の案内に合わせてください。
3種類の遺言で、印鑑の使い方が違います
遺言の作り方は、ふつう次の3種類から選びます。
自筆証書遺言
印を押す全文と日付と氏名をご自分で書き、印を押します。訂正するときも、その場所に印を押します。民法は、押す印鑑の種類までは決めていません。
使う印鑑実印か認印
秘密証書遺言
印を押す遺言書に署名して印を押し、封筒に入れて、同じ印鑑で封印します。その封書を、公証人と証人2人の前に出します。
使う印鑑遺言書と封印に、同じ1本
公正証書遺言
電子サイン遺言をする方と証人が、画面に電子サインをします。印鑑は、公証人に本人であることを示すために使います。
使う印鑑実印と印鑑登録証明書
自筆証書遺言と秘密証書遺言の押印は、任意に変わることが決まっています。2026年6月24日に改正法が公布され、公布から1年以内に施行されます。施行の日までは、いまの民法どおり、印を押した遺言書を作ります。
手数料は、財産の額と受け取る人数で変わります
公正証書遺言の手数料は、公証人手数料令で決まっています。財産を受け取る方ごとに、受け取る額を次の表に当てはめ、出た金額を合計します。
財産の合計が100,000,000円以下の遺言には、「遺言加算」として13,000円が加わります。日本公証人連合会が挙げている例で計算すると、次のようになります。
奥様とご長男に残す遺言の例財産の合計 100,000,000円
- 奥様に60,000,000円50,000,000円を超え、100,000,000円以下の区分です
- 49,000円
- ご長男に40,000,000円30,000,000円を超え、50,000,000円以下の区分です
- 33,000円
- 遺言加算財産の合計が100,000,000円以下のときに加わります
- 13,000円
- 合計
- 95,000円
このほかに、手元に残す正本と謄本の手数料がかかります。電子データで受け取ると1通2,500円、紙で受け取ると1枚300円です。公証人に自宅や病院へ来てもらうときは、手数料の割り増しや、日当と交通費が加わります。
名前を書けない方、公証役場へ行けない方も作れます
病気などで電子サインができない方も、公正証書遺言は作れます。公証人が、その事情を遺言に書き添えます。全文を手で書く自筆証書遺言と違い、手が不自由になってからでも間に合います。
公証役場まで出かけるのがむずかしい方は、公証人に来てもらえます。ご自宅、病院、介護施設などが対象です。その場合も、印鑑登録証明書と実印か、顔写真付きの身分証明書を手元にそろえておきます。
遺言を使うときは、財産を受け取る方が実印を用意します
遺言が役に立つのは、遺言をした方が亡くなったあとです。そのとき印鑑を使うのは、財産を受け取るご家族です。遺言がある場合とない場合で、実印を用意する人が変わります。
遺言の内容で
決まります
相続人の全員で
話し合います
作りません
遺産分割協議書全員が実印を押して
作ります
預金を受け取る方
(遺言執行者がいれば、その方)
印鑑証明書
相続人の全員
検認が要らないので、
すぐに始められます
全員の実印が
そろってからです
遺言がないと、銀行は相続人全員の印鑑証明書を求めるのがふつうです。1人でも実印の用意が遅れると、払い戻しはその分だけ先になります。公正証書遺言があれば、受け取る方の実印と印鑑証明書で手続きに入れます。遺言を作ったことと、どこの公証役場で作ったかは、ご家族に伝えておいてください。平成元年以降に作られた公正証書遺言は、亡くなったあとに、相続人が全国の公証役場で探せます。
相続の手続きで実印を使う場面は、実印はいつ必要?車・住宅・相続など使う場面を整理でも説明しています。
実印が見当たらない方は、作る日までに登録し直します
何年も実印を使っていない方は、公証役場を予約する前に、次の3つを確かめてください。
予約の前に確かめること
登録した実印が、手元にあるか見つからないときは、新しい印鑑で登録し直します。前の登録は、同じ窓口で廃止します。
登録し直す印鑑登録証(カード)があるか証明書を取るときに使います。なくしたときは、届け出をして登録し直します。
登録し直す実印の枠や文字が、欠けていないか欠けた印鑑で押すと、証明書の印影と違って見えます。作り直して、登録し直します。
作り直す登録証をなくしたときの手続きは、印鑑登録証をなくしたら?亡失届と再登録の手順・費用・持ち物にまとめています。当店の実印は、薩摩本柘の13.5mmが10,700円、黒水牛の13.5mmが11,900円です。ご注文から3〜7営業日で発送します。素材と直径ごとの価格は、実印はいくら?素材・直径別の価格と3本セットの予算をご覧ください。
遺言を作るのを機に、使っていない印鑑を片付ける方もいらっしゃいます。進め方は、終活で印鑑を整理する|残す印鑑の決め方と家族に伝える一覧で説明しています。
よくある質問
実印がなくても、公正証書遺言は作れますか
作れます。運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの身分証明書と認印を持っていきます。顔写真付きの書類がない方は、印鑑登録をして、印鑑登録証明書と実印を用意してください。
父の代わりに、私が公証役場へ行って作れますか
作れません。遺言は、ご本人が公証人に内容を伝えて作るので、代理人には頼めません。打ち合わせの段階で、資料を届けたり希望を伝えたりするのは、ご家族でもできます。当日に出かけられないときは、公証人に来てもらう方法があります。
遺言を作ったあとで実印を作り替えたら、遺言は無効になりますか
なりません。本人確認は、遺言を作った日に済んでいます。あとで実印を替えても、住所が変わっても、作った遺言はそのまま有効です。
夫婦で1通の遺言にまとめられますか
まとめられません。民法は、2人以上が同じ証書で遺言をすることを認めていません。お1人ずつ作り、それぞれが本人確認の書類と印鑑を用意します。
一度作った遺言は、書き直せますか
書き直せます。遺言は、いつでも、遺言の方式で取り消したり変えたりできます。公正証書で作り直すときは、はじめて作るときと同じように、本人確認の書類と印鑑、証人2人を用意します。
まとめ|公証役場に相談してから、この順番で用意します
はじめに、だれに何を残したいかをメモにして、公証役場へ相談します。そこで、本人確認に印鑑登録証明書を使うか、顔写真付きの身分証明書を使うかを決めます。印鑑登録証明書を使うなら、実印と登録証がそろっているかを確かめ、足りなければ登録し直します。
次に、証人2人を決めます。相続人になる方とそのご家族は頼めないので、ご友人に頼むか、公証役場に紹介してもらいます。作る日が決まったら、その日から3か月以内に発行された証明書を取り、実印と一緒に持っていきます。
印鑑登録証明書と見比べられる実印を、京都の職人が1本ずつお作りします
住民票のお名前どおりに印面を設計し、職人が彫刻します。旧字体のお名前にも対応し、彫る前の印影をメールで確かめられます。ご注文から3〜7営業日で発送、送料無料、5年保証です。
実印の素材と価格を見る(薩摩本柘 10,700円〜)銀行印と認印も、この機会にそろえ直す方へ実印・銀行印・認印の3本セットは、薩摩本柘 21,700円から、黒水牛 24,300円から。同じ3本を1本ずつ注文するより安くなります。
実印・銀行印・認印の3本セットを見るご両親の分を、お子様が注文する方へお届け先やお名前がご注文者と違うときは、先にご相談ください。公証役場へ行く日もお知らせください。
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