CHAPTER 16 印鑑の贈り物・マナー
退職祝いに落款印を贈る前に|書道を始める人の雅号と贈る時期
退職後に書道や絵を始める方へ、落款印を贈りたい方に向けた記事です。落款印の種類と押す位置、始めたばかりの方に贈りにくい4つの理由、退職の日と雅号が決まった日の2回に分ける贈り方、書道の書体と印鑑の書体の関係、退職の日に渡せる印鑑の価格を説明します。
公開日: 2026年10月5日
お父様やご主人、長くお世話になった上司が、退職を機に書道を始めます。作品に押す落款印を贈れば、趣味の門出のお祝いになりそうです。ところが落款印は、始めたばかりの方には用意しにくい品でもあります。落款印の種類と、贈る時期の決め方、退職の日に渡せる印鑑を説明します。
落款印は、雅号と、書く作品の大きさが決まってから作る印です。書道を始めたばかりの方には、退職の日に名前の印鑑を贈り、落款印は雅号が決まってから贈る方法が向いています。当店がお作りしているのは実印・銀行印・認印で、落款印は扱っていません。名前の印鑑は、書道で習う篆書体や隷書体で彫れます。
落款印は、書や絵の仕上げに押す作者の印です
「落款」は、「落成款識」を略した言葉です。書や絵が仕上がったときに、作者が名前を書き、印を押すことを指します。その署名や印そのものも、落款と呼びます。このときに押す印が、落款印です。
落款印には、役目の違う印がいくつかあります。よく使われる3つを、作品の上の位置と一緒に示しました。
縦書きの作品に押す、3つの印
- 引首印書き出しの右上作品の右上に押す印です。長方形か楕円形のものが多く、関防印とも呼びます。
- 姓名印署名の下本名を彫った印です。文字が白く抜ける白文で作る形が、よく見られます。
- 雅号印姓名印の下雅号を彫った印です。文字が朱色に出る朱文で作り、姓名印と上下に並べます。
白文は、文字のところを凹ませて彫ります。押すと、朱色の地に文字が白く抜けます。朱文はその逆で、文字を残してまわりを彫るので、文字が朱色に出ます。実印や銀行印、認印は、朱文の印鑑です。
落款印のような趣味の印を彫ることを、篆刻といいます。蝋石などのやわらかい石に、鉄筆と呼ぶ小刀で彫ります。篆書体の文字を彫ることが多いので、この名前が付きました。名前や雅号のほかに、好みの言葉を彫った「遊印」もあります。
始めたばかりの方に、落款印を贈りにくい4つの理由
雅号が、まだ決まっていない
雅号は、本名とは別に付ける風雅な名前です。教室に通ううちに先生から頂く方も、ご自分で考える方もいます。決まる前に、雅号印は彫れません。
贈るなら雅号が決まったと聞いてから注文する
作品の大きさで、印の大きさが変わる
半紙に書く方と、掛け軸にする大きな紙に書く方では、合う印の大きさが違います。紙に対して大きすぎても、小さすぎても、作品の釣り合いが崩れます。
贈るならどの大きさの紙に書いているかを聞く
教室や会に、それぞれの考え方がある
白文と朱文の組み合わせや、印の数、押す位置には、先生や会ごとの考え方があります。贈った印が、教室の作法に合わないこともあります。
贈るならご本人から先生に相談してもらう
石を選ぶところから、本人の楽しみになる
篆刻は、もともと文人が自分の手で彫って楽しんだものです。書を続けるうちに、印の石や彫り方にも関心を持つ方がいます。
贈るなら贈る約束だけを先に伝え、一緒に選ぶ
すでに雅号をお持ちで、落款印も使っている方なら、話は別です。好みの言葉を彫る遊印など、2本目、3本目の印を贈る方法があります。この場合も、彫る言葉と大きさをご本人に聞いてから頼みます。
贈る日を、退職の日と雅号が決まった日の2回に分けます
退職の日に何も渡せないのは、さびしいものです。その日には名前の印鑑を贈り、落款印はあとから贈る約束にします。
退職の日送別会や、ご家族で囲むお祝いの席で
名前の印鑑を手渡す
- 退職後の手続きで使う実印や銀行印、認印を贈ります
- 書体は、書道で習う篆書体や隷書体から選びます
- 注文は、渡す日の2週間前までに済ませます
「落款印は、雅号が決まったら贈ります」とカードに書く
雅号が決まってから初めて作品を出品するころに
落款印を贈る
- 雅号、紙の大きさ、白文か朱文かをご本人に聞きます
- 篆刻を手がける作家や、書道用品の店に頼みます
- 石は、ご本人と一緒に選ぶと喜ばれます
教室の先生の意見も、先に聞いてもらう
退職の日に添えるカードには、あとから贈る品のことを書いておきます。
お父さんへ
38年間、お疲れさまでした。書道を始めると聞いて、名前の印鑑は篆書体で作ってもらいました。
雅号が決まったら、教えてください。作品に押す落款印を、あらためて贈ります。
最初の作品を見せてもらえる日を、楽しみにしています。
2027年3月31日 家族一同
印鑑の書体は、書道で習う書体と同じ名前です
書道には、「五体」と呼ばれる5つの書体があります。篆書、隷書、楷書、行書、草書です。当店の印鑑で選べる書体のうち4つは、この五体と同じ名前を持っています。
篆書体実印・銀行印に
中国で秦より前に使われた書体で、隷書や楷書のもとになりました。今も、印章や石碑に使われています。落款印に彫るのも、多くはこの書体です。
隷書体認印に
篆書を簡略にして作られたといわれる書体です。横に平たい形で、今の漢字に近いので、名前がすぐに読めます。
楷書体認印に
一画ずつ、線を続けずに書く書体です。書道の教室でも、はじめに習うことが多い書体です。
行書体認印に
楷書を少し続けて書いた、流れのある書体です。手紙の文字に近く、やわらかく見えます。
書道を始める方には、書体の話が通じます。「実印は篆書体にしました」とひとこと添えると、印面をじっくり見てもらえます。このほかに、吉相体と古印体もあります。7つの書体の違いは、印鑑の書体一覧で説明しています。
落款印と、名前の印鑑の違い
| 比べるところ | 落款印 | 実印・銀行印・認印 |
|---|---|---|
| 形 | 四角い印が多く、長方形や楕円形もあります | 丸い印です |
| 彫る名前 | 本名、雅号、好みの言葉 | 戸籍の名字や下の名前 |
| 彫り方 | 白文と朱文を使い分けます | 朱文です |
| 素材 | 蝋石などの石が多く使われます | 柘、水牛の角、チタンなど |
| 押す場所 | 書や絵の作品 | 契約書や、口座の届け出の書類 |
| 届け出 | 要りません | 実印は市区町村に、銀行印は金融機関に届け出ます |
| 当店では | 扱っていません | 職人がお名前に合わせてお作りします |
2つは、役目が別の印です。作品には落款印を、書類には名前の印鑑を使います。
退職してからも、名前の印鑑を押す場面は続きます
退職祝いに贈る印鑑の種類と名前の選び方は、退職祝いに印鑑を贈るで説明しています。お父様に贈る場合は、父の退職祝いに一生ものを贈るもご覧ください。
退職の日に贈る印鑑の価格と、注文の時期
2本・3本セットは、桐箱か化粧箱に入れてお届けします。書体は、1本ずつ別のものを選べます。実印を篆書体、認印を隷書体にする、という組み合わせ方もできます。
当店は、ご注文から3〜7営業日で発送します。配達希望日は、ご注文日の9日後から30日後までの間で指定できます。退職の日の2週間前までに注文しておくと、余裕があります。
よくある質問
落款印は、こちらの店で作れますか
当店では、落款印は扱っていません。お作りしているのは、実印・銀行印・認印と、会社の印鑑です。
雅号は、いつごろ決まるものですか
人によって違います。先生から頂く方も、ご自分で付ける方もいらっしゃいます。ご本人に聞くのが確かです。
認印を、書の作品に押してもよいですか
作品には、落款印を押すのが習わしです。認印は、書類に押す印鑑としてお使いください。
絵手紙や水墨画を始める場合も、同じですか
同じです。落款は、書にも絵にも入れます。彫る名前と大きさを、ご本人に聞いてから頼みます。
職場の連名で贈るなら、どの印鑑がよいですか
名字で彫る認印か、銀行印と認印の2本セットが向いています。実印は、ご家族から贈るほうが自然です。
まとめ|雅号を聞き、退職の日の品を決め、約束をカードに書きます
はじめに、雅号がもう決まっているかと、落款印をお持ちかを、ご本人に聞きます。まだなら、退職の日には名前の印鑑を贈ります。書体は、篆書体か隷書体から選びます。
カードには、雅号が決まったら落款印を贈ると書いておきます。知らせを受けたら、紙の大きさと、白文か朱文かを聞いて、篆刻を手がける店に頼みます。
篆書体や隷書体で、お名前の印鑑を職人がお作りします
京都の職人が、お名前の字に合わせて印面を設計し、1本ずつ彫刻します。書体は7種類から、印鑑ごとに選べます。ご注文から3〜7営業日で発送、送料は全国無料、5年保証付きです。当店では、落款印は扱っていません。
書体の見本は、各商品のページでご覧いただけます。納期のご相談は、ご注文の前にお問い合わせください。