CHAPTER 16 印鑑の贈り物・マナー
退職祝いに印鑑を贈る|職場からと家族からで変わる種類と名前の選び方
定年を迎える上司や、家業を継ぐ同僚、長年勤めたお父様の退職祝いに、印鑑を贈りたい方へ。退職の日に職場へ返す印鑑と持ち帰る印鑑、退職後1年で印鑑を使う場面、職場の連名と家族からで変わる選び方と予算、認印・銀行印・実印に彫る名前、職場で旧姓を使っていた人への注意、のしと渡すタイミングまで説明します。
公開日: 2026年9月29日
長年お世話になった上司が、定年で退職する。一緒に働いてきた同僚が、家業を継ぐために会社を辞める。お父様が、40年近い会社勤めを終える。退職祝いといえば花束やお酒、名入れのグラスが定番ですが、「これからの暮らしで使える品を」と印鑑を選ぶ方もいます。退職すると、職場で使っていた会社の印鑑は返すことになり、そのあとは自分の名前で手続きをする場面が増えていきます。この記事では、まず退職の日に返す印鑑と、その後に使う場面を説明します。そのうえで、職場からとご家族からで変わる選び方と予算、彫る名前、のしと渡し方をお話しします。
職場の同僚や部下からは、銀行印と認印の2本セットか、実印も入った3本セットを連名で贈ります。ご家族からなら、3本セットが向いています。職場から実印を贈るなら、名前の字を住民票のとおりに確かめてからにします。実印は、その字で市区町村に登録するためです。確かめられないときは、銀行印と認印の2本にします。
退職の日に職場へ返す印鑑と、持ち帰る印鑑
職場の机の引き出しには、会社から支給された印鑑と、自分で買ったものが一緒に入っていることがよくあります。退職の日にはこの2つを分けて、会社の分を返します。
職場に返すもの
- 会社支給の浸透印会社が用意した、姓入りでインク内蔵の印鑑です。社内の回覧や伝票に押していました
- 役職の印・部署の印「〇〇部長」「経理課」などと入った印です。後任の方に引き継ぎます
- 預かっていた会社の印鑑角印や銀行印を管理していた方は、引き継ぎの書類と一緒に返します
持ち帰るもの
- 自分で買った認印入社のときなどに、職場の書類用として自分で用意した認印です。長年使って、縁が欠けていることもあります
- 給与口座の銀行印職場に置いていたなら持ち帰ります。退職金も、この口座に振り込まれることが多いです
- 実印職場に置くものではありませんが、入社の手続きで持参したままになっていないか確かめます
毎日のように押していた浸透印を返すと、手元に残るのは若いころに買った認印だけ、という方もいます。退職祝いに印鑑を贈る意味は、ここにあります。仕事の印鑑を返したあと、これからの暮らしで自分の名前を押す1本を用意するのです。会社を移る方に贈るなら、転職で印鑑を整理する記事も参考にしてください。
退職後の1年で、印鑑を使う場面
会社を離れると、これまで勤め先が代わりにしてくれていた手続きを、自分でするようになります。定年退職を例に、前後1年に起きることと、印鑑を使う場面を並べました。
印鑑は、送別会の2週間前までに注文しておきます。会社の健康保険を任意継続するときは、退職した日の翌日から20日以内に申し出ます。会社には、希望する人が65歳まで働けるよう、雇用を確保する措置が求められています。そのため、定年後も再雇用で同じ職場に残る方がいます。
退職金を受け取るのを機に、生活費とは別の口座を作る方もいます。そのときに要るのが銀行印です。この先には、ご両親の相続や住み替えで、実印と印鑑証明書を求められる手続きもあります。不動産を受け継いだときの登記(相続登記)は、2024年4月から義務になりました。受け継いだと知った日から、3年以内に申請します。実印は作るのに日数がかかり、そのあと市区町村での登録も要ります。手続きの直前に慌てないよう、退職のころにそろえておくと安心です。
職場から贈るか家族から贈るかで、選ぶ印鑑と予算が変わります
贈る人ごとに、選びやすい印鑑と、1人あたりの予算の目安をまとめました。
銀行印と認印の2本セットか、3本セット。人数が多ければ、素材を黒水牛や白水牛に上げられます
1,000〜3,000円認印か銀行印を1本。ケースは、本人の好きな色に合わせるとよいでしょう
5,000〜10,000円実印・銀行印・認印の3本セット。名前の字も、印鑑登録の状況も分かる立場です。贈った実印は、市区町村で登録し直してもらいます
20,000〜50,000円本人の3本セットに加えて、屋号や社名の角印。角印は、新しい仕事の請求書や領収書に押します
連名で10,000円前後職場の仲間から実印を贈ることもできます。ただし、住民票に記載された字で登録するため、旧字や異体字まで正しく彫る必要があります。社内の名簿やメールの署名では、そこまで分からないことがあります。確かめにくいときは、職場からは銀行印と認印を贈り、実印はご家族に任せましょう。
職場の連名なら、人数に合わせて2本セットか3本セットを選びます
退職祝いは、部署やチームでお金を出し合って贈ることの多いお祝いです。人数と1人あたりの金額から、選べるセットの例を並べました。
5人で、1人約2,600円
- 銀行印・認印の2本セット 黒水牛13,000円
銀行印12mm・認印10.5mm13,000円
10人で、1人約2,400円
- 実印・銀行印・認印の3本セット 黒水牛24,300円
13.5mm・12mm・10.5mm24,300円
15人で、1人約2,500円
- 実印・銀行印・認印の3本セット 黒水牛37,400円
16.5mm・15mm・12mm37,400円
3本セットは実印を含むので、名前の字を本人に確かめられるときに選びます。確かめられないときは銀行印と認印の2本セットにして、残った予算で花束を添える方法があります。実印の大きさは、男性なら18mm、女性なら15mmか16.5mmがよく選ばれます。15人の例のように人数が多ければ、一回り大きいサイズにも手が届きます。
彫る名前は、印鑑の種類で変わります
長く勤めた職場では、姓で呼ばれてきた方が多いでしょう。けれども、退職祝いの印鑑に彫るのは姓とは限りません。種類ごとに、次のように考えます。
姓だけを縦に
佐藤
長年、職場で呼ばれてきた名前です。荷物の受け取りや町内会の回覧、再雇用先の書類に押します。同僚から贈るなら、いちばん気軽な1本です。
職場の仲間から贈りやすい下の名前だけを横に
誠 / 由美
銀行印は、姓か名のどちらかを横書きにして作ることがよくあります。ずっと姓で呼ばれてきた職場を離れるときに、下の名前で作る1本は、第二の人生を始める記念にもなります。
退職金の口座を作るときに使えるフルネーム
佐藤 誠
住民票のとおりの字で彫り、市区町村に登録します。ご家族から贈るなら、相続や住み替えの手続きの前に、登録し直してもらいます。
ご家族から贈りやすい戸籍の姓で作る
職場では「田中」、戸籍は「佐藤」
職場で旧姓を通してきた方も、退職後の手続きは戸籍の姓が中心になります。旧姓の印鑑は仕事の記念として残してもらい、新しく贈る1本は戸籍の姓で作ります。
職場の名前と違うので確かめる銀行印を下の名前だけで作ると、姓で作った認印と見分けがつき、押し間違えを防げます。大きさは、実印、銀行印、認印の順に一回りずつ小さくします。
のしの表書きと、渡すタイミング
定年退職のお祝いは、紅白の蝶結びの水引を使い、表書きは「祝御定年」か「御定年御祝」とします。転職や家業を継ぐための退職なら、表書きは「御礼」や「御餞別」です。目上の方に贈るときは、「御礼」とするのが無難です。職場の連名で4人以上なら、「〇〇部一同」とまとめ、全員の名前は別紙に書いて添えます。
渡す日は、送別会の席か最終出社の日が一般的です。最終出社の日は、あいさつ回りや片付けで慌ただしいので、朝のうちか、終業の少し前を選びます。当店はご注文から3〜7営業日で発送します。届くまでの日数も考えて、送別会の2週間前までにご注文いただくと安心です。
印鑑を贈るときは、選んだ理由をひと言添えると、相手も使う場面を思い浮かべやすくなります。寄せ書きやメッセージカードに添える言葉の例です。
部署から上司へ
「長いあいだ、本当にお世話になりました。書類に判を押していただいた数だけ、私たちは助けられてきました。これからは、ご自身のための1本としてお使いください」
家業を継ぐ同僚へ
「新しい仕事で最初に押す書類に、この印鑑を使ってもらえたらうれしいです。お店にも顔を出しに行きます」
ご家族からお父様へ
「40年間、お疲れさまでした。これからの大事な手続きには、この実印を使ってください。家族で過ごす時間が増えるのを、楽しみにしています」
よくある質問
上司に印鑑を贈るのは失礼になりませんか
失礼にはなりません。印鑑は、退職後の手続きで本人が自分の名前を押す実用品です。目上の方に贈るなら、黒水牛や白水牛のように、長く使える素材を選ぶとよいでしょう。
定年後も再雇用で同じ職場に残る場合は、退職祝いをしますか
お祝いをしてかまいません。定年は勤め方が変わる区切りで、再雇用では雇用契約を結び直します。その契約の書類に押せる認印を、職場の仲間から贈るのもよい方法です。
職場で使っていた浸透印の代わりになる印鑑がほしいと言われました
インク内蔵の浸透印は便利ですが、印面がゴムでできているため、実印や銀行印としては使えません。朱肉で押す認印と銀行印を贈れば、実印が要るもの以外の手続きは、この2本で間に合います。
名前の漢字が、社内の名簿と違う字かもしれません
「高」と「髙」、「崎」と「﨑」のように、名簿ではふだん使う字に置き換えて書かれていることがあります。認印や銀行印ならどちらの字でも作れますが、実印は住民票のとおりの字で作ります。ご家族やご本人に確かめられないときは、認印と銀行印にします。
まとめ|退職祝いの印鑑を決める順番
まず、職場から贈るのか、ご家族から贈るのかを決めます。次に、名前の字を住民票のとおりに確かめられるかを考えます。確かめられるなら実印を含む3本セット、難しければ銀行印と認印の2本セットです。職場の連名なら、人数と1人あたりの金額から、印鑑の大きさと素材を選びます。彫るのは、認印なら姓、銀行印なら下の名前、実印ならフルネームです。旧姓で働いていた方には、戸籍の姓で作ります。最後にのしの表書きを決め、送別会の2週間前までに注文します。