CHAPTER 16 印鑑の贈り物・マナー

帰国する留学生に印鑑を贈る|日本で過ごした記念を名前で残す

帰国する留学生への送別の贈り物に、名前を彫った印鑑が選ばれています。日本で呼ばれていたカタカナの名前、仲間が付けた漢字の当て字、漢字圏の学生なら本名の漢字で彫ることができ、帰国後は手紙やカード、書や絵に落款として押して使い続けられます。彫る名前の決め方、篆書体で落款らしく仕上げる考え方、象牙を避けて柘・黒水牛・チタンから印材を選ぶ理由、送別会に間に合わせる注文の時期、研究室やクラスで連名で贈る予算の分け方まで、贈る側の目線でまとめました。

公開日: 2026年9月24日

窓辺の学生の机に、本を詰めかけた段ボール箱、桜の枝を挿したガラス瓶、無地の絵はがきの束、小さなカメラ、いすに掛けた布のトートバッグがあり、手前の桐箱に水色の革の印鑑ケースと白水牛の印材が収まっている
留学生への送別の贈り物 日本で呼ばれていた名前を、帰国後も押せる形で残します

研究室の後輩、同じゼミの友人、ホームステイで受け入れた学生、日本語教室の生徒。帰国が決まった留学生に何を贈ろうかと考えたとき、寄せ書きや写真のアルバムと並んで候補になるのが、名前を彫った印鑑です。日本にいた間に呼ばれていた名前を形にして残せて、帰国後も手紙やカードに押して使えます。この記事では、留学生に印鑑を贈るときに決めること、名前の表記の決め方、帰国後の使い道、送別会に間に合わせる注文の時期を、贈る側の目線で説明します。外国人の方への贈り物全般の考え方は外国人への日本らしい贈り物に印鑑をで、本人が日本で実印を作る場合の条件は外国人でも実印は作れる?でまとめています。

先に結論

帰国する留学生には、日本で呼ばれていた名前を彫った1本を、帰国後に「押して楽しめる」形で贈ります。名前はカタカナ、漢字の当て字、漢字圏の学生なら本名の漢字から本人と選び、書体は落款らしく見える篆書体か吉相体が向いています。印材は国外へ持ち出せない象牙を避け、柘・黒水牛・チタンから選びます。直径は認印の12mmか銀行印の13.5mmで、価格は6,400円からです。送別会の日から3週間前を目安に注文すると、彫る前の印影確認を入れても間に合います。

留学生への贈り物に、印鑑が向いている理由

独立行政法人日本学生支援機構の調査では、2025年5月1日現在の日本の外国人留学生は408,069人で、前の年から21.2%増えています。出身は中国が131,097人、ネパールが100,239人、ベトナムが43,366人と続きます。これだけ多くの学生が、いずれ日本での暮らしを終えて帰国していきます。送別の贈り物に印鑑が向いているのは、日本の暮らしで毎日目にしていた道具でありながら、本人の名前で作るその人だけの品になり、帰国後も使い続けられるからです。

408,069日本で学ぶ外国人留学生
2025年5月1日現在、前年から21.2%増
  • 中国131,097人
  • ネパール100,239人
  • ベトナム43,366人

出典:日本学生支援機構「2025(令和7)年度 外国人留学生在籍状況調査結果」

寄せ書きや写真は「日本での時間」を残す品で、印鑑は「日本で呼ばれていた名前」を残す品です。留学中はカタカナで名前を書き、ゼミの仲間に漢字の当て字を付けてもらい、書道の授業で自分の名前を書いた、という経験をした学生は多いものです。その名前を彫った印鑑は、帰国後に手紙やカードへ押すたびに、日本で過ごした時間を思い出す品になります。

帰国前と帰国後で、印鑑の使い道は変わります

留学生に印鑑を贈るときに考えていただきたいのが、いつから使うのかです。まだ日本にいる間に渡すなら、住民票の表記で彫れば、帰国までの手続きにも使えます。帰国が近いなら、実用よりも「帰国後に押して楽しむ」ことを軸に選ぶほうが、長く使ってもらえます。

帰国前(日本にいる間)帰国後(母国で)

アパートの解約書類、銀行口座の解約、卒業に伴う手続きなど、認印を押す場面が続きます

使う場面

日本の友人への手紙やカード、年賀状、書道や絵の作品に落款として押します

住民票の表記(アルファベット、または記載済みのカタカナ・通称)で彫ると、届出印としても使えます

彫る名前

登録に使わないので、カタカナや漢字の当て字など、いちばん気に入った表記で彫れます

認印は姓か名だけの12mmが使いやすく、押す場面が多いのでケースは濡れや傷に強い濃い色が向きます

直径とケース

落款として押すなら少し大きめの13.5mmも映えます。ケースは飾って楽しめる明るい色や銀花も

朱肉はケースに内蔵されていますので、そのまま使えます

朱肉

母国では朱肉が手に入りにくいことがあります。ケースの朱肉が長く使え、補充用の朱肉を添えると親切です

彫る名前は「日本で呼ばれていた名前」から選びます

留学生への印鑑で、いちばん時間をかけていただきたいのが名前の表記です。外国人の方には、アルファベット、カタカナ、漢字の当て字、そして漢字圏の学生なら本名の漢字と、4つの表し方があります。どれも当店でお作りできますが、留学生への送別の品なら、「日本で呼ばれていた名前」を軸に選ぶと、記念品としての意味がはっきりします。

表記1

カタカナ

サラ / ミン

日本で名札や出席簿に書かれていた、いちばんなじみのある表記です。呼ばれていた音がそのまま残ります。長音「ー」や小さい「ィ」の有無は、本人がふだん書いていた形に合わせます。

留学生の記念にいちばん選ばれる表記
表記2

漢字の当て字

沙羅(サラ) / 明(ミン)

ゼミの仲間や日本語の先生が付けてくれた当て字があれば、それを彫ると思い出そのものが印鑑になります。なければ、音に合わせて意味のよい字を本人と選びます。字の意味を説明できるのが利点です。

思い出の当て字があるなら、この表記に
表記3

本名の漢字(漢字圏の学生)

中国・台湾・韓国などの学生の本名

中国や台湾、韓国出身の学生なら、本名を漢字で彫れます。本人にとっては当て字ではない本当の名前で、日本の印鑑の伝統的な書体で彫った印影は帰国後も長く使えます。簡体字と日本の字体で形が違う字は、どちらで彫るかを本人に確かめます。

本名で作れる。字体の確認だけ丁寧に
表記4

アルファベット

SARA / Minh

在留カードや住民票と同じ本名の表記です。日本にまだ住んでいて実印や銀行印として使うなら、この表記が確実です。送別の記念品としては、日本らしさの点でカタカナや漢字に譲ります。

実用が目的なら。記念ならほかの3つを

漢字圏の学生の本名を彫るときは、字体の確認をひとつだけ丁寧にしてください。たとえば中国の簡体字の「刘」と日本の「劉」、「张」と「張」のように、同じ字でも形が違うものがあります。日本の字体で彫れば日本の印鑑らしい印影になり、簡体字で彫れば本人が母国で書く形になります。どちらが正しいということはなく、本人の希望で決めます。当店では職人が字の形を確かめて印影を設計しますので、注文時の備考欄に「簡体字で」「日本の字体で」とお書きください。漢字の確かめ方は印鑑のプレゼントで名前の漢字を間違えないにまとめています。

帰国後の楽しみ方|落款として押す

帰国後の印鑑の使い道として、ぜひ伝えていただきたいのが「落款(らっかん)」です。書や絵の作品に、作者のしるしとして押す印のことです。日本や中国の書画で、作品の隅に押された赤い印を見たことがある方は多いと思います。留学中に書道や水墨画、日本画を習った学生なら、帰国後に描いた作品へ自分の名前の印を押せます。習っていなくても、手書きの手紙やカード、旅の写真の裏に押すだけで、日本の思い出が形になります。

落款らしく仕上げるなら、篆書体か吉相体を

落款に使われる印は、伝統的に篆書体で彫られています。カタカナや当て字の名前でも、当店では職人が篆書体や吉相体の線の太さと丸みに合わせて字を設計しますので、書画に押しても違和感のない印影になります。読みやすさを優先するなら楷書体や古印体で、こちらは手紙やカードに押したときに相手が名前を読み取れます。書体ごとの印影の違いは印鑑の書体一覧で見比べられます。

印材は、持ち帰れて母国の気候に耐えるものを

留学生への印鑑は、必ず国外へ持ち出されます。ここで注意したいのが象牙です。環境省の案内では、国内で決まりを守って取引された象牙製品でも、国外へ持ち出すことは厳しく禁止されています。留学生への贈り物には象牙を選ばないでください。柘、黒水牛、チタンなら持ち出しの制限はありません。あわせて、母国の気候も考えます。乾燥の強い地域や湿度の高い地域へ持ち帰るなら、木や角より金属のチタンが安心です。

印材を選ぶときに見ること

  • 象牙は選ばない国外へ持ち出せません。柘、黒水牛、チタンから選びます。白い印材が好みなら白水牛という選択肢もあります
  • 母国の気候を考える木の柘と角の黒水牛は、強い乾燥でひびが入ることがあります。乾燥の強い地域や高温多湿の地域なら、チタンが最も安心です。ケースに入れて保管する習慣があれば、柘や黒水牛でも長く使えます
  • 予算に合わせる認印12mmで、薩摩本柘 6,400円、黒水牛 7,000円、チタン 16,600円。銀行印13.5mmで、薩摩本柘 8,300円、黒水牛 9,500円、チタン 23,700円です
  • ケースの色で日本らしさを標準の黒か赤のほか、10色の牛革、銀箔の花模様の銀花、鶴亀の意匠のケースを選べます。飾って楽しめる色にすると、帰国後も机の上に置いてもらえます

送別会に間に合わせる注文の時期

当店の印鑑は、京印章の職人が1本ずつ印影を設計して彫刻しますので、ご注文から発送まで3〜7営業日をいただいています。彫る前の印影をメールで確かめる「印影のご確認」を選ぶと、印影をお送りするまでに2〜3日、そこからご確認をいただいて彫刻に入りますので、その日数がさらに加わります。留学生への贈り物は名前の表記を相談する時間も要りますので、送別会や出国日から逆算して、3週間前を目安に動き始めると余裕があります。

出国が迫っていて日数がない場合は、「印影のご確認」を選ばずに注文し、名前の表記を備考欄で正確にお伝えいただく形が最短です。急ぎのときの注文のしかたは印鑑のプレゼントを急ぎで用意するには?で説明しています。

研究室やクラスで、連名で贈るときの予算

留学生への送別の品は、研究室やゼミ、クラス、日本語教室のメンバーで連名で贈ることが多いものです。印鑑は1本6,400円からですので、数人で分ければ1人あたりの負担は小さく、そのぶん印材を上げたりケースを選び替えたりできます。予算の分け方の例を挙げます。

友人3〜4人で
1万円まで

認印サイズの1本黒水牛12mm 7,000円

ケースを色替え牛革ブルーなど +950円

合計7,950円
ゼミ・研究室で
1万〜2万円

少し大きめの1本黒水牛13.5mm 9,500円

銀花ケースイエロー・パープル・ピンク +1,600円

補充用の朱肉母国で手に入りにくいので添える

合計11,100円〜
先生・受け入れ家庭から
2万円台

気候を選ばない1本チタン13.5mm 23,700円

ケースを色替え牛革ネイビーなど +1,100円

合計24,800円

日本に残って就職する留学生なら、送別ではなく就職祝いとして、実印・銀行印・認印の3本セットを贈る形もあります。入社の書類、給与口座の開設、部屋の契約と、印鑑を使う場面が続きますので、住民票の表記で彫った3本は実用の贈り物になります。薩摩本柘なら25,200円、黒水牛なら30,200円で、桐箱か化粧箱を追加料金なしで選べます。

よくある質問

カタカナの名前で彫った印鑑は、母国で何かに使えますか

母国の公的な手続きに使えるものではありません。手紙やカード、作品に押す個人のしるしとしてお使いいただく品です。そのぶん、表記は登録の決まりに縛られずに選べますので、いちばん気に入った名前の形で彫ってください。日本の友人に手紙を送るときに押せば、受け取った側も日本にいた頃の名前を思い出せます。

本人に聞かずにサプライズで用意できますか

カタカナの表記が名札や出席簿で分かっているなら、その表記で注文できます。ただ、長音や小さい文字の有無で本人の書き方と違ってしまうことがありますので、共通の友人に確かめてもらうと安心です。当て字や本名の漢字は表し方が複数ありますので、本人と相談して決めることをおすすめします。相談する時間そのものが、送別の思い出になります。

帰国した後に、朱肉がなくなったらどうすればよいですか

ケースに内蔵した朱肉は、ふだんの使い方なら長く使えます。母国では朱肉が手に入りにくいこともありますので、贈るときに補充用の朱肉を添えると親切です。スタンプ台のインクで代用すると、にじんで印面にも残りますので、朱肉を使うように伝えてください。

飛行機で持ち帰るとき、印鑑は手荷物に入れられますか

印鑑はケースに入った小さな品ですので、手荷物として持ち帰れます。象牙製でなければ、持ち出しの制限もありません。預ける荷物より手荷物に入れたほうが、紛失や破損の心配がありません。渡すときに「手荷物に入れてね」とひとこと添えてください。

まとめ|呼ばれていた名前を、押せる形で持ち帰ってもらう

帰国する留学生への贈り物に印鑑を選ぶなら、日本で呼ばれていた名前を、帰国後に押して楽しめる形で残すことを軸にします。名前はカタカナ、思い出の当て字、漢字圏の学生なら本名の漢字から本人と選び、書体は落款らしく見える篆書体か吉相体、読みやすさなら楷書体か古印体です。印材は国外へ持ち出せない象牙を避け、柘・黒水牛・チタンから、母国の気候も考えて選びます。直径は12mmか13.5mm、価格は6,400円からで、連名なら1人あたりの負担は小さくなります。送別会の3週間前から動き始めれば、彫る前の印影確認を入れても間に合います。当店では京印章制作士が、カタカナも当て字も本名の漢字も、1本ずつ字を設計して彫刻します。

SOURCES

出典

留学生の人数と出身国・地域は独立行政法人日本学生支援機構の「外国人留学生在籍状況調査」(2025年5月1日現在)を、外国人住民の印鑑登録に関する通称・カタカナ表記の扱いは京都市の案内を、象牙製品の国外持ち出しの規制は環境省の案内を参照しました。印鑑登録の条件は市区町村によって細部が異なります。価格は当店の税込価格で、記事作成時点のものです。

  1. 独立行政法人日本学生支援機構. 2025(令和7)年度 外国人留学生在籍状況調査結果. Study in Japan. https://www.studyinjapan.go.jp/ja/statistics/enrollment/data/2605291000.html,(参照 2026-09-24).
  2. 京都市. 印鑑登録. 京都市情報館. https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000147302.html,(参照 2026-09-24).
  3. 環境省. 象牙の国外持ち出し規制について(一般の方向け). ワシントン条約と種の保存法. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/general/,(参照 2026-09-24).