CHAPTER 01 印鑑の基礎知識

記名と署名の違い|印字・ゴム印・代筆の扱いと押印が要る理由

記名と署名の違いは、名前を誰がどう書いたかにあります。署名は本人が自分の手で名前を書くこと、記名は印字・ゴム印・代筆も含めて名前を記すこと全般です。代筆が認められない書類、代理人の書き方、記名押印に押す印鑑の選び方も説明します。

公開日: 2026年10月10日

明るい白木の事務机に、木の持ち手のゴム印を3本立てた木の台、白い封筒の束、白紙を挟んだクリップボードが並ぶ。白い陶器のトレーには黒と銀のペン、手前には臙脂色の印鑑ケースに黒水牛の印材が入り、奥に白いマグカップがある
記名と署名の違い 名前を誰が、どう書いたか。記名と署名は、そこで分かれます

書類の名前の欄に、「記名」とあったり「署名」とあったりします。パソコンで印字してもいいのか、家族に代わりに書いてもらってもいいのかと、手が止まることがあります。会社の書類なら、社名のゴム印だけで済ませていいのかも迷うところです。この記事では、記名と署名の違いと、それぞれの書き方で気をつけることをお話しします。

先に結論

署名は、本人が自分の手で名前を書くことです。記名は名前を記すこと全般で、書き方を問いません。パソコンの印字やゴム印、家族の代筆も記名にあたります。記名だけでは誰が書いたか分からないので、多くの書類では印鑑を添えて「記名押印」にします。法律にも、記名押印を署名の代わりに認める決まりがあります。

記名と署名の違い|名前を「誰が」「どう」書いたか

デジタル大辞泉は、署名を「本人が自分の名を書類などに書くこと」と説明しています。自署やサインと同じ意味です。記名は「氏名を書きしるすこと」で、誰がどんな方法で書いたかは問いません。世界大百科事典も、名前を記すこと全般を記名と呼び、代筆やゴム印もそこに含めています。

同じ「山田太郎」でも、書き方によって署名になるか記名になるかが分かれます。よくある4つの書き方を並べました。

氏名

山田 太郎

署名本人が、自分の手で書いた名前筆跡が、本人が書いたことの手がかりになります。「署名」「自署」の欄に使えるのは、この書き方だけです署名の欄に使える
氏名

山田 太郎代筆

記名家族が代わりに書いた名前手書きでも、本人の筆跡ではないので署名になりません。代筆や代書と呼ばれる書き方です署名にはならない
氏名

山田 太郎

記名ゴム印で押した名前社名や住所のゴム印も、ここに入ります。何度でも同じ形で押せるので、書く手間を省けます印鑑を添えれば記名押印になる
氏名

山田 太郎

記名パソコンで印字した名前申込書や契約書に、あらかじめ名前を打ち込んでおく書き方です。誰が打ち込んでも同じ字になります印鑑を添えれば記名押印になる

署名には、本人が書いた字が残ります。代筆や印字、ゴム印の名前には、それがありません。印字やゴム印は誰でも同じものを作れるので、名前があるだけでは、本人がその書類を認めたことまでは示せないのです。

代筆は署名になる?|本人以外が書いた名前の扱い

本人の名前を家族が書けば、手書きでも記名です。法律が署名を求めているときに代筆が通るかどうかは、書類によって違います。世界大百科事典と戸籍法施行規則をもとに、3つの例を比べました。

自筆の遺言

名前の代筆は認められません

代筆した遺言は無効

民法第968条は、全文、日付、氏名を本人が自分で書き、印を押すよう定めています。世界大百科事典によると、この決まりは自分で書くことに重点があります。氏名を代書した遺言書は無効です。

代わりの方法公証役場で、公正証書遺言を作ります

手形・小切手

名前を代筆してもらうだけでは足りません

無効とされている

手形法は、署名に記名捺印を含めています。印字した名前に印鑑を押せば、署名として扱われます。一方で、ほかの人に名前を手書きしてもらっただけの手形は、無効と考えられています。

代わりの方法記名して、本人の印鑑を押します

戸籍の届書

署名できないときは、代書で足ります

理由を書けば認められる

戸籍法施行規則第62条では、署名できないと市区町村長が認めたときは、氏名を代書してもらえば足ります。代書にしたときは、書類にその理由を書き添えます。

確かめる相手届け出る市区町村の窓口

代筆と混同しやすいのが、代理人として書く場合です。民法第99条によると、代理人が本人の代わりだと示して契約や申込みをすれば、その効力は本人に及びます。代理人は本人の名前をまねて書くのではなく、「山田太郎 代理人 山田花子」のように、自分の名前で署名します。委任状を求められることも多いので、提出先の案内を確かめてください。

記名に印鑑を添える「記名押印」|署名の代わりになる書類

記名に印鑑を押すと、「記名押印」になります。印字した名前でも、本人の印鑑が押してあれば、その書類を認めたしるしになります。法律にも、記名押印を署名と並べて認める決まりがいくつもあります。

本法ニ於テ署名トアルハ記名捺印ヲ含ム

手形法 第82条

手形法は、署名という言葉に、記名して印を押すことまで含めています。会社法第26条も、会社を作るときの定款に、発起人が「署名し、又は記名押印」するよう定めています。労働組合法第14条の労働協約も同じで、当事者が「署名し、又は記名押印」することで効力が生じます。

書面で出す不動産登記の申請書は、はじめから記名押印をする決まりです。不動産登記令第16条は、申請書に記名押印し、原則として印鑑証明書を付けるよう定めています。名前は印字でもかまいませんが、印鑑証明書を付けるので、押すのは市区町村に登録した実印です。印影は、その証明書と照らし合わされます。

会社の書類では、社名と住所のゴム印で記名し、その横に角印や会社実印を押すことがよくあります。ゴム印は書く手間を省く道具で、会社のしるしになるのは、横に押した印鑑のほうです。どの書類にどの印鑑を押すかは、角印と社印の違いでご案内しています。

記名押印には、どの印鑑を押す?

記名押印では、名前の書き方を問わないぶん、押した印鑑が本人を示す手がかりになります。どの印鑑を押すかは、提出先が印影を照らし合わせる書類かどうかで決まります。

実印印鑑証明書を付ける書類に押します。登記の申請書、家や車の売買の書類などです
銀行印銀行や信用金庫に出す書類に押します。口座に届け出た印鑑です
認印印影を照らし合わせない書類に押します。申込書や社内の書類、宅配便の受け取りなどです

認印で足りる書類でも、インクを内蔵したスタンプ式の印鑑は断られることがあります。印面がゴムでできていて、押すたびに形が少し変わるためです。詳しくは、認印にシャチハタは使える?で説明しています。認印を押す場面の一覧は、認印を使う場面は?にまとめました。

よくある質問

「記名」の欄に、手書きで名前を書いてもいいですか

かまいません。記名は書き方を問わないので、手書きの名前も含まれます。本人が自分で書けば、署名を兼ねることにもなります。

「氏名」とだけ書かれた欄は、記名と署名のどちらですか

書類に指定がなければ、記名で受け付けられることが多くあります。ただ、手書きを求める書類もあるので、記入例や提出先の案内を確かめてください。迷ったら、本人が手で書いておきます。本人の手書きなら、記名にも署名にもあたるからです。

子どもの学校の書類に、親が子どもの名前を書いてもいいですか

記名で足りる書類なら、保護者の方が代わりに書いてもかまいません。保護者の欄には、ご自身の名前を書きます。署名や自署と書かれた欄だけは、お子様本人が書く決まりがないか、学校に確かめてください。

記名押印の印鑑は、名前の上に重ねて押してもいいですか

名前の右か、「印」と書かれた丸の中に押すのが一般的です。印影が名前に少しかかっても問題はありません。ただし、字が読めなくなるほど重ねるのは避けます。

まとめ|名前の欄を見たときに確かめること

まず、欄の言葉を読みます。「署名」「自署」なら、本人が自分の手で書きます。「記名」なら、印字やゴム印でもかまいません。「記名押印」なら、名前の横に印鑑も押します。

次に、誰が書くかです。ご家族の代わりに書くなら、その書類が署名を求めていないかを確かめます。代理人として出すなら、本人の名前に続けて「代理人」と書き、自分の名前で署名します。最後に、押す印鑑を選びます。印鑑証明書を付ける書類なら実印、銀行に出すなら銀行印、それ以外は認印です。

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SOURCES

出典

記名と署名の意味は、デジタル大辞泉と改訂新版 世界大百科事典によります。代筆の扱いは、同事典の「署名」の項と戸籍法施行規則、代理の書き方は民法によります。記名押印を署名の代わりに認める決まりは、会社法、労働組合法、手形法、不動産登記令の条文によります。

  1. 記名. デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典. 小学館(コトバンク). https://kotobank.jp/word/%E8%A8%98%E5%90%8D-475828,(参照 2026-10-10).
  2. 署名. デジタル大辞泉・改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書(ニッポニカ). 小学館・平凡社(コトバンク). https://kotobank.jp/word/%E7%BD%B2%E5%90%8D-4626,(参照 2026-10-10).
  3. 代筆. デジタル大辞泉. 小学館(コトバンク). https://kotobank.jp/word/%E4%BB%A3%E7%AD%86-558181,(参照 2026-10-10).
  4. 戸籍法施行規則(昭和22年司法省令第94号)第62条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094,(参照 2026-10-10).
  5. 民法(明治29年法律第89号)第99条・第968条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089,(参照 2026-10-10).
  6. 会社法(平成17年法律第86号)第26条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086,(参照 2026-10-10).
  7. 労働組合法(昭和24年法律第174号)第14条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174,(参照 2026-10-10).
  8. 手形法(昭和7年法律第20号)第82条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/307AC0000000020,(参照 2026-10-10).
  9. 不動産登記令(平成16年政令第379号)第16条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379,(参照 2026-10-10).