CHAPTER 03 会社の印鑑

印鑑の回文とは?社名を円に沿って彫る方法と縦配置との違い

印鑑の「回文(かいぶん)」は、社名を外側の円に沿ってぐるりと並べる彫り方のことで、会社実印や会社銀行印の印影に使われます。時計の12時の位置から右回りに読み、1周して戻ったところに小さな点を入れて区切ります。言葉遊びの回文とは関係ありません。この記事では、回文の読み方、社名を縦に並べる縦配置との違い、直径ごとに入る文字数、前株・後株の彫り方、選べる書体、注文のときに伝えることまで、会社の印鑑をはじめて作る方に向けて説明します。

公開日: 2026年9月24日

真鍮のデスクランプに照らされた胡桃材の作業台。クリーム色の製図用紙に鉛筆で薄く二重の円だけが描かれ、その上に真鍮のコンパスが置かれている。紙のそばには黒水牛の丸い印材が1本立ち、削った鉛筆、木の柄のルーペ、目盛りのない真鍮の分度器、朱色の朱肉の缶が並ぶ
回文 社名を円に沿ってぐるりと並べる。会社の丸印に使われてきた配字です

会社の印鑑を注文しようとすると、書体の選択肢に「篆書体(回文)」「吉相体(回文)」と書いてあります。はじめて見ると、「回文って何だろう」と手が止まります。言葉遊びの「たけやぶやけた」を思い浮かべた方もいるかもしれませんが、印鑑の回文はまったく別のものです。この記事では、回文の読み方、社名を縦に並べる彫り方との違い、注文のときの指定のしかたを順に説明します。

先に結論

回文は、社名を外側の円に沿ってぐるりと1周並べる彫り方です。時計の12時の位置から右回りに読み、1周して戻ったところに小さな点を打ち、社名の終わりと始まりの境目を示します。内側の円には、「代表取締役印」「銀行之印」など印鑑の役割を示す文字を縦書きで入れます。会社実印と会社認印はこの回文で作るのが一般的で、会社銀行印は回文と、社名を縦に並べる縦配置のどちらかを選べます。どちらで作っても印鑑としての効力は同じです。

回文は「社名を円に沿って回す」彫り方

会社の丸い印鑑の印影を見ると、円が二重になっています。外側と内側の円にはさまれた帯に社名が1文字ずつ並び、内側の円の中には役職名などが縦書きで入ります。このように、社名を帯に沿ってぐるりと回す配字(文字の配置)を「回文」と呼びます。「廻文」と書くこともあります。

回文が会社の印鑑に使われる理由は、社名の文字数にあります。「株式会社達磨屋印房」のように9文字、10文字と続く社名でも、円周に沿って並べれば丸い印面に無理なく収まります。しかも、どの字も同じ大きさで彫れます。そのうえ中央に役職名を入れる場所ができるので、「この会社の、この役職の印鑑」であることが1つの印影で分かります。

読み方|12時から右回り、点で区切る

回文の印影は、読み始める位置と向きがほぼ決まっています。社名の1文字目は、時計の12時の位置です。そこから右回り(時計回り)に読み進め、1周して12時の手前まで戻ったところが最後の文字です。終わりと始まりのあいだには小さな点や飾りを入れて、区切りを示します。

①

12時の位置を探す社名の1文字目

印影の真上にある文字が社名の1文字目です。「株式会社」で始まる社名なら「株」がここに来ます。点や飾りは、その左隣(11時の位置)にあります。

②

右回りに読む時計の針と同じ向き

12時から3時、6時、9時の順に読み進めます。文字の頭が外を向いているので、印影を左に回していくと、読む字がいつも上向きになります。

③

内側の円を縦に読む役職名など

社名を読み終えたら、内側の円の中を上から下に読みます。「代表取締役印」「銀行之印」など、この印鑑の役割を示す言葉が入っています。

点の代わりに、社名の終わりに「印」の字を足して区切りにすることもあります。ただ、「株式会社達磨屋印房印」のように、社名の一部と紛らわしく読めてしまう場合があります。そのため当店では、点で区切る形を基本にしています。ご希望があれば、「印」を入れる形でもお作りします。

回文と縦配置、どちらを選ぶか

当店の会社実印と会社認印は、回文でお作りします。会社銀行印だけは、回文と縦配置の2つからお選びいただけます。縦配置は、社名を縦書きの列に組み、いちばん左の列に「銀行之印」を入れる、昔ながらの銀行印の形です。

回文縦配置

二重の円で、外側に社名、内側に役職名などが入ります

見た目

1つの円の中に、社名と「銀行之印」を縦書きの列で並べます

実印・銀行印・認印の3本をそろえて作れます

使える印鑑

当店では会社銀行印だけで選べます

長い社名でも1文字ずつ同じ大きさで読めます

文字数の余裕

社名が長いと列が増え、1文字が小さくなります

実印と同じ形なので、大きさや内側の文字で見分けます

実印との見分け

形そのものが違うので、ひと目で銀行印と分かります

同じです

効力

同じです

最近は、銀行印も実印と同じ回文で作るのが一般的です。実印・銀行印・認印の形がそろい、並べたときに統一感が出ます。一方で、「実印と銀行印を絶対に取り違えたくない」「先代から使ってきた銀行印が縦配置だった」という理由で、縦配置を選ぶ会社もあります。どちらも銀行の届出印として使えます。全国銀行協会の案内が「届出印として使えない印鑑」に挙げているのは、キャラクターものやゴム印などです。文字の並べ方には触れていません。

直径ごとに、回文に入る文字数の目安

回文は円周に沿って文字を並べるので、直径が大きいほど多く入ります。社名の文字数を「株式会社」まで含めて数え、次の目安に当てはめてください。

16.5mm 8文字まで

「株式会社山田商店」のように、株式会社を含めて8文字までの社名なら、ゆとりをもって収まります。4本セットの認印や、小さめの組み合わせを選んだときの銀行印に使う直径です。

18mm 10文字まで

「株式会社達磨屋印房」の9文字なら、このサイズからきれいに収まります。会社銀行印でいちばん選ばれている直径です。

21mm 13文字まで

「株式会社京都ダルマヤ印房」(12文字)のように、10文字を超える社名に向く直径です。会社実印でいちばん選ばれています。

24mm 14文字以上

アルファベットの社名や、「ホールディングス」が付く長い名前に向く直径です。文字数が多くても、1文字ずつ読める大きさで彫れます。

図の円は直径の比率を表しています。文字数は、篆書体か吉相体で彫る場合の目安です。画数の多い漢字が続く社名は、1段大きい直径をおすすめすることがあります。

目安より文字数が多い社名でも、彫れないわけではありません。印影を設計する段階で、職人が文字を細身にして詰めたり、社名の帯を太くして内側の円を小さくしたりして調整します。ただ、詰めすぎると押したときに線がつぶれやすくなります。そのため、社名が長い会社には、はじめから1段大きい直径をおすすめしています。会社印鑑のサイズの決め方は、会社実印とは?でも説明しています。

前株・後株|回文はどの文字から始まるか

回文の1文字目は、登記した社名の1文字目です。「株式会社達磨屋印房」なら「株」から、「達磨屋印房株式会社」なら「達」から始まります。前株か後株かで変わるのは始まりの字だけで、12時の位置から右回りに読むのはどちらも同じです。

社名の表記は、登記簿どおりにしてください。「株式会社」を「(株)」と略したり、後株を前株に入れ替えたりしても、法務局に届け出る会社実印としては使えます。ただ、契約書に書いた社名と印影が食い違い、相手に説明が要ることになります。合同会社や一般社団法人も同じで、登記の表記どおりの1文字目から始めます。法人の種類ごとの内側の文字は、会社実印とは?に一覧があります。

回文で選べる書体は4つ

回文は文字の並べ方であって、書体ではありません。そのため、回文の印鑑でも書体は別に選びます。当店では、篆書体、吉相体、古印体、隷書体の4つからお選びいただけます。

篆書体の回文の印影見本
篆書体会社実印の定番です。線の太さが均一で、円に沿わせても形が崩れません
吉相体の回文の印影見本
吉相体文字が外側の円に接するように広がります。帯が文字で埋まるので、まねされにくい印影になります
古印体の回文の印影見本
古印体やわらかい線で、社名がすぐ読めます。読みやすさを優先したい会社認印に向きます
隷書体の回文の印影見本
隷書体横に広い、整った字形です。社名が短く、帯に余白を残したいときに向きます

実印と銀行印を同じ回文で作る場合は、書体を変えておくと印影で見分けやすくなります。実印を篆書体、銀行印を吉相体、というように1本ずつ選べます。それぞれの特徴は、印影見本つきの印鑑の書体一覧で説明しています。

個人の印鑑に回文はある?

回文は、ほぼ会社や団体の丸印だけに使う配字です。個人の印鑑は名前を縦書きか横書きで彫り、円に沿って回すことはしません。個人の銀行印の向きの選び方は、銀行印は横書き・縦書きのどちら?で説明しています。

例外は、個人事業主が屋号で作る丸印です。「達磨屋印房」の屋号を外側の円に、「代表者印」を内側の円に入れれば、会社と同じ回文の丸印になります。市区町村に登録する個人の実印にはできませんが、契約書や申込書に事業の名前で押す印鑑として使えます。

注文のときに伝えること

注文画面で入力する4つのこと

  • 社名|登記どおりの表記で「株式会社」の位置、旧字体、長音記号まで登記簿と同じに書きます。この表記で、回文の1文字目と読む順番が決まります
  • 書体|篆書体・吉相体・古印体・隷書体から会社銀行印は「回文」と「標準(縦配置)」のどちらかを、書体といっしょに選びます
  • 内枠の文字|内側の円に入れる言葉実印・認印は「代表取締役印」など、銀行印は「銀行之印」が一般的です。ほかの文字にしたいときは「その他」を選び、備考欄に書きます
  • 直径|社名の文字数から8文字までなら16.5mm、10文字までなら18mm、13文字までなら21mm、それより長ければ24mmが目安です。実印は銀行印より1段大きくするのが一般的です

ご注文をいただいたら、京印章制作士の職人が社名の文字数と画数を見て、字の大きさや帯の幅、内側の円の寸法を1本ずつ決めます。そのうえで彫刻し、最後に手彫りで線を仕上げます。「印影のご確認」をお選びいただくと、彫る前にデザインをメールでお送りします。読み始めの位置や文字の詰まり具合を確かめてから、彫刻に進めます。

よくある質問

回文で作った印鑑は、法務局や銀行に届け出られますか

届け出られます。法務局に届け出る印鑑は、1辺1cmの正方形に収まらず、1辺3cmの正方形に収まる大きさと決められています。文字の並べ方は問われません。銀行の届出印としても、回文と縦配置のどちらでも使えます。

社名を左回りに読む印鑑を見たことがあります。間違いですか

間違いではありません。古い印章や、中国の印の流れをくむものには、左回りに読む配字もあります。ただ、今の日本の会社印鑑は右回りが一般的です。特別な理由がなければ、右回りでお作りすることをおすすめします。

社名にアルファベットが入っています。回文にできますか

できます。アルファベットも1文字ずつ円に沿って並べます。ただ、大文字と小文字や、単語のあいだの空白をどう扱うかを決めておく必要があります。備考欄に、登記どおりの表記をお書きください。文字数が多くなりやすいので、21mm以上の直径をおすすめしています。

角印にも回文はありますか

角印は四角い印面なので、回文にはしません。社名を縦書きの列に組んで、右の列から左へ読みます。文字数が半端なときは「之印」や「印」を足して列をそろえます。角印の文字の並べ方は、角印とは?に図で載せています。

まとめ|回文の会社印鑑を注文するまでに決める順番

はじめに、登記簿で社名の表記を確かめます。前株か後株かで回文の1文字目が変わり、旧字体や長音記号の有無で彫る字そのものが変わるからです。次に、「株式会社」まで含めた文字数を数えて直径を選びます。会社銀行印を作るなら、回文にするか縦配置にするかもここで決めます。最後に、書体を1本ずつ選び、内側の円に入れる役職名などを決めます。

実印・銀行印・角印をまとめて作るなら、3本セットのほうが単品で3本そろえるより安くなります。印材も3本同じになるので、並べたときの色合いがそろいます。

京印章制作士が社名の配字を1本ずつ設計

回文の会社印鑑を注文する

登記どおりの社名と、内側に入れる役職名をお知らせください。文字数に合わせて帯の幅と文字の大きさを整え、職人が彫刻します。薩摩本柘、黒水牛、白水牛、象牙から選べ、送料無料、5年保証です。

SOURCES

出典

「回文」は印章の業界で使われてきた配字の呼び名で、法律用語ではありません。法務局に届け出る印鑑の大きさの範囲は商業登記規則を、銀行の届出印として使えない印鑑は全国銀行協会の案内を参照しました。直径ごとに入る文字数の目安は、当店で会社印鑑を制作するときの基準です。

  1. 法務省. 商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)第9条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023,(参照 2026-09-23).
  2. 法務局. 印鑑(改印)届書 記載例(株式会社の場合). https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001328711.pdf,(参照 2026-09-23).
  3. 一般社団法人全国銀行協会. ハンコにはルールがあります!. 教えて!くらしと銀行. https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/3805/,(参照 2026-09-23).