CHAPTER 03 会社の印鑑

医療法人の印鑑|理事長之印の実印・銀行印・角印と院長印の使い分け

医療法人の印鑑は、法務局に届け出る実印、金融機関に届け出る銀行印、請求書や領収書に押す角印の3本と、診断書や処方箋に押す医師個人の印鑑に分かれます。実印は外側に「医療法人社団○○会」の名称、内側に「理事長之印」を彫るのが一般的です。医療法人は都道府県知事の認可を受けて設立し、主たる事務所の所在地で登記をして、実印は登記の申請と一緒に法務局へ届け出ます。この記事では、法人の3本と院長個人の印鑑の役割分担、理事長之印の意味、名称が長くなるときの直径、個人クリニックから法人にするときに作り直す印鑑、設立からの流れ、価格まで、医療法人を立ち上げる先生と事務長に向けて説明します。

公開日: 2026年9月24日

白いクリニックの診察机を写した写真。青緑の聴診器が置かれ、薄い灰色のトレーに白水牛の丸い印材と四角い印材が立ててあり、閉じた青緑のレザーケース、クラフト紙の書類ファイル、銀色のボールペン、白いラナンキュラスを生けた丸いガラスの花瓶が並ぶ。奥に診察台がぼんやり写る
医療法人の印鑑 法人の3本は理事長之印で、診断書には先生ご自身の印を。2つの机を分けて考えます

個人で開業していたクリニックを医療法人にする、あるいは新しく医療法人を設立する。認可の書類づくりに追われるなかで後回しになりがちなのが印鑑です。医療法人になると、法人として法務局に届け出る実印が必要になり、これまで先生個人の実印とクリニック名の角印で回っていた書類の押し方が変わります。この記事では、医療法人に必要な印鑑を「法人の印鑑」と「医師個人の印鑑」に分けて、本数と役割、実印の内側に入れる「理事長之印」の意味、名称が長くなるときの直径、設立からの流れを順に説明します。

先に結論

医療法人には、法人の実印・銀行印・角印の3本と、医師個人の印鑑が要ります。実印は外側に「医療法人社団○○会」の名称、内側に「理事長之印」を彫り、設立の登記と一緒に法務局へ届け出ます。銀行印は内側を「銀行之印」にして法人口座に届け出、角印は名称だけを四角に彫って請求書や領収書に押します。診断書や処方箋に押す印は法人の印鑑ではなく、医師個人の氏名の印です。個人クリニックから法人にする場合、クリニック名の角印と契約に使っていた先生の実印は法人の印鑑に置き換わりますので、認可が見えてきたら3本セットを注文してください。

法人の印鑑と、医師個人の印鑑を分けて考えます

医療法人の書類には、法人として押すものと、医師として押すものが混ざっています。机を2つに分けて、左に法人の印鑑、右に医師個人の印鑑を並べると、どの場面にどれを使うかがはっきりします。

法人の印鑑名称を彫ります。法務局と金融機関に届け出るのはこちら

  • 実印18mm・21mm法務局に届け出

    設立の登記、事務所や医療機器のリース契約、金融機関からの借り入れなど、法人の印鑑証明書を添える書類に押します。内側は「理事長之印」です。

  • 銀行印16.5mm・18mm金融機関に届け出

    法人名義の口座に届け出ます。診療報酬の振込口座、給与の支払い口座の届出印になります。内側は「銀行之印」です。

  • 角印21mm・24mm届け出なし

    自費診療の請求書や領収書、健診の見積書、取引先への発注書に、名称の文字に重ねて押します。事務で毎日使う1本です。

医師個人の印鑑先生ご自身の氏名を彫ります。法人化しても変わりません

  • 医師の認印12mm・13.5mm届け出なし

    診断書、処方箋、紹介状、健診の結果票など、医師の氏名を記して押す書類に使います。院内で毎日いちばん押す印鑑です。

  • 理事長個人の実印市区町村に登録登記の日に必要

    法人の印鑑届書には、理事長個人の実印を押して、個人の印鑑証明書を添えます。個人の実印を登録していない先生は、先に市区町村で登録しておきます。

個人クリニックのころは、先生の実印が契約用、クリニック名の角印が領収書用と、右の机だけで回っていました。医療法人になると左の机が加わり、契約と口座と請求書はすべて法人の印鑑で押すことになります。右の机の認印は、法人化の前後で変わりません。

実印の文字|外側は名称、内側は「理事長之印」

医療法では、医療法人の理事のうち1人を理事長とし、医師または歯科医師である理事の中から選ぶことになっています。都道府県知事の認可を受ければ医師でない理事から選ぶこともできますが、いずれにしても法人を代表するのは理事長です。ですから実印の内側には、株式会社の「代表取締役印」にあたる文字として「理事長之印」を彫ります。

外側に「医療法人社団○○会」理事長之印
実印法務局に届け出ます。内側は「理事長之印」か「理事長印」。5文字の「理事長之印」は2列と3列に、4文字の「理事長印」は2列に組みます
外側に「医療法人社団○○会」銀行之印
銀行印金融機関に届け出ます。内側は「銀行之印」で、実印より1段小さい直径にして見分けます

当店の注文画面では、会社実印の内枠に「理事長印」の選択肢があります。「理事長之印」と「之」を入れたい場合は「その他」を選び、備考欄に「理事長之印」とお書きください。どちらでも法務局は受け付けますので、字の収まりと好みで決めていただいて構いません。外側の名称は、定款に書いた「医療法人社団」や「医療法人財団」を含めた登記どおりの表記で彫ります。

認可、登記、印鑑の届け出の順番

医療法人は、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けなければ設立できません。厚生労働省の案内では、設立認可の手続きは都道府県に権限が移されていますので、申請の窓口は都道府県の医療担当課です。認可書を受け取ったら、主たる事務所の所在地で設立の登記をします。医療法人の登記は組合等登記令によって商業登記法の規定が準用され、印鑑の届け出と印鑑証明書の仕組みも会社と同じです。

実印は4の登記の日までに手元に必要です。当店は注文から3〜7営業日で発送しますが、認可書の受領から登記の申請までは日がないことが多いので、認可の見通しが立った段階で注文しておくと安心です。印鑑届書の書き方は、会社実印とは?で会社の例を使って説明していますが、医療法人でも同じです。

場面ごとに、どの印鑑を押すか

書類・場面押す印鑑彫ってある文字

設立登記申請書、印鑑届書、役員変更や事務所移転の登記

実印名称+理事長之印

建物の賃貸契約、医療機器のリース契約、金融機関からの借り入れ法人の印鑑証明書を添える契約

実印名称+理事長之印

診療所の開設許可申請、保険医療機関の指定申請、都道府県への届け出押印が不要になった様式も多くあります

実印か認印名称+理事長之印

法人口座の開設、窓口での払い戻し、給与振込の依頼書

銀行印名称+銀行之印

自費診療の請求書と領収書、健診の見積書、業者への発注書名称の最後の文字に少し重ねて

角印名称

診断書、処方箋、紹介状、健診の結果票医師の氏名を記して押します

医師の認印医師個人の氏名

提出先の指定が優先します。「理事長の印鑑証明書を添付」と書かれていれば法人の実印、それ以外は角印か認印で構いません。行政の様式は押印欄がなくなったものが増えていますので、最新の様式を確かめてください。

名称が長いので、直径は21mmか24mm

医療法人の名称は「医療法人社団○○会」や「医療法人財団○○会」のように、法人の種類を表す6〜7文字が付きます。株式会社の4文字より長いぶん、回文の外側の帯に入る文字が増えますので、実印は21mm以上を選ぶ法人がほとんどです。

18mm 10文字まで

「医療法人達磨会」のように「社団」を省いた表記で、名称の部分が3文字以内の法人。銀行印なら多くの法人がこの直径に収まります。

21mm 13文字まで

「医療法人社団達磨会」のように、名称の部分が6文字以内の法人。医療法人の実印でいちばん多い直径です。

24mm 14文字以上

「医療法人社団京都達磨整形外科会」のように、名称の部分が7文字を超える法人。診療科名を含む長い名称はこの直径にします。

「社団」「財団」を省いて彫るかどうかは、定款と登記の名称に合わせます。登記に「医療法人社団」と入っていれば、印鑑もそのとおりに彫るのが基本です。

実印を21mmにしたら、銀行印は18mm、角印は24mmと1段ずつずらします。直径の決め方の全体は、会社印鑑のサイズはどう選ぶ?で説明しています。

個人クリニックから法人にするとき、作り直す印鑑

個人で開業していたクリニックが医療法人になると、契約や請求書の主体が先生個人から法人に変わります。これまで使っていた印鑑のうち、何がそのまま使えて、何を新しく作るかを整理しました。

個人クリニックのとき医療法人になってから

先生個人の実印と、市区町村の印鑑証明書

契約・借り入れ

法人の実印と、法務局の印鑑証明書。新しく作ります

先生個人の名義か、屋号付きの口座と個人の銀行印

口座と届出印

法人名義の口座と法人の銀行印。新しく作ります

「達磨クリニック」などクリニック名の角印

領収書・請求書

「医療法人社団○○会」の角印。名称が変わりますので新しく作ります

先生個人の認印

診断書・処方箋

そのまま。医師個人の印鑑は法人化で変わりません

クリニック名の角印は、法人になったあとも院内の掲示物などに使えないわけではありませんが、患者さんに渡す領収書は法人の名称で発行しますので、法人の角印に切り替えます。医療費控除に使う領収書に発行者の名称が2種類あると、患者さんが混乱しますので、法人の診療所として開設した日から新しい角印にそろえてください。個人事業のころの印鑑の考え方は、個人事業主の印鑑は何が必要?で説明しています。

理事長が代わっても、実印はそのまま使えます

医療法人の実印には、理事長個人の名前は彫られていません。院長の代替わりや親族への承継で理事長が代わっても、印鑑はそのまま引き継げます。法務局には理事長の変更登記と、印鑑の届出人を新しい理事長に変える印鑑届書を出し、金融機関には代表者の変更届を出します。手続きの順番は代表者変更時の法人印にまとめています。

逆に、理事長が代わるときに実印を新しくする法人もあります。前の理事長が印鑑を管理していて所在がはっきりしない、長年使って枠が欠けている、といった場合です。このときは新しい実印を先に作り、変更登記と同時に改印届を出します。

3本セットの価格

医療法人の3本は、当店の会社印鑑の3本セットでお作りします。注文画面の会社名の欄に「医療法人社団○○会」と登記どおりに入力し、実印の内枠で「理事長印」を選ぶか、「その他」を選んで備考欄に「理事長之印」とお書きください。

実印21mm・銀行印18mm・角印24mm医療法人でいちばん多い組み合わせ

  • 薩摩本柘61,400円
  • 黒水牛106,300円
  • 白水牛133,800円

実印24mm・銀行印21mm・角印24mm診療科名を含む長い名称の法人に

  • 薩摩本柘77,700円
  • 黒水牛134,000円
  • 白水牛154,900円

クリニックの受付や事務室は手指の消毒で湿気が多い場所ですので、水分に強い黒水牛か白水牛をおすすめします。白水牛は明るい色で、白を基調にした院内の備品によくなじみます。事務で毎日押す角印は、消毒液が付いた手で触れる機会が多い1本ですので、使ったあとは乾いた布で拭いてからケースに戻してください。

よくある質問

診療所の名前で角印を作ってもよいですか

法人の角印とは別に、診療所ごとの角印を作る法人はあります。複数の診療所や介護施設を運営する法人で、施設ごとに領収書や書類を出す場合です。「医療法人社団○○会 達磨クリニック」のように法人名と施設名を両方入れると、患者さんにも取引先にも発行元が分かります。法人全体の請求書には法人の角印、施設の窓口では施設名入りの角印、と使い分けます。

理事長が医師でない場合、内枠の文字は変わりますか

変わりません。都道府県知事の認可を受けて医師でない理事が理事長になった場合も、法人を代表するのは理事長ですので、内側は「理事長之印」のままです。印鑑の文字は役職を表すもので、理事長個人の資格や氏名は関係しません。

医療法人財団や社会医療法人でも同じですか

同じです。財団たる医療法人も理事長が代表しますので、外側に「医療法人財団○○会」、内側に「理事長之印」を彫ります。社会医療法人や特定医療法人は認定を受けた医療法人の区分で、名称の表記は「医療法人社団○○会」のままですので、印鑑の文字も変わりません。

診断書に法人の印鑑を押してもよいですか

診断書や処方箋は医師個人が作成する書類ですので、医師の氏名を記して医師個人の印を押すか署名します。法人の角印を医療機関名の欄に押すことはありますが、医師の氏名の欄には医師個人の印を使います。医師の認印は、当店では個人の認印としてお作りしています。

事務長に預ける印鑑はどれですか

角印と銀行印は事務で使う場面が多いので、事務長や経理の担当者が管理する法人が多くあります。実印は理事長が管理し、契約のときだけ持ち出します。実印の代わりに社内書類や見積書の控えに押す会社認印を1本加えた4本セットにすると、実印を金庫から出す回数をさらに減らせます。

まとめ|名称と「理事長之印」で3本、先生の認印はそのまま

医療法人の印鑑は、法務局に届け出る実印、金融機関に届け出る銀行印、請求書や領収書に押す角印の3本を法人の名称で作り、診断書や処方箋には医師個人の認印を使います。実印の外側は「医療法人社団○○会」の登記どおりの名称、内側は「理事長之印」です。設立は都道府県知事の認可を受けてから登記をし、実印はその登記の申請と一緒に法務局へ届け出ますので、認可の見通しが立ったら注文してください。名称が長くなるぶん、実印は21mmか24mmが多くなります。

会社名の欄に「医療法人社団○○会」、内枠は「理事長印」か備考欄に「理事長之印」

実印・銀行印・角印の3本セットを、京印章の職人が制作します

登記する名称のとおりに入力してください。名称が長い法人は、実印21mm・銀行印18mm・角印24mmの組み合わせをお選びください。3本が1つのケースに収まり、朱肉、押印マット、保証書、京印章証明書付き。送料無料、5年保証。

3本セットを見る56,900円〜

SOURCES

出典

医療法人の設立認可と理事長の資格は医療法、登記の仕組みは組合等登記令、印鑑届書の書き方は法務局の記載例、設立認可の窓口が都道府県であることは厚生労働省の案内を参照しました。診療所の開設や保険医療機関の指定に関する書類は都道府県や地方厚生局ごとに様式が異なりますので、提出先にご確認ください。内枠の文字の傾向は当店で医療法人の印鑑を制作するときのものです。

  1. 厚生労働省. 医療法(昭和23年法律第205号)第44条・第46条の6. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205,(参照 2026-09-24).
  2. 法務省. 組合等登記令(昭和39年政令第29号)第1条・第25条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029,(参照 2026-09-24).
  3. 法務局. 印鑑(改印)届書 記載例. 商業・法人登記の申請書様式. https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001328711.pdf,(参照 2026-09-24).
  4. 厚生労働省. 医療法人・医業経営のホームページ. 厚生労働省ウェブサイト. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/index.html,(参照 2026-09-24).