CHAPTER 05 印材・素材

象牙製品は国内で売買できる?登録事業者・表示・相続のルール

象牙の印鑑や製品は、日本国内では種の保存法のもとで売買できます。売る側には国の登録、登録番号の表示、取引の記録が義務づけられ、買う側に手続きはありません。持つことや相続にも制限はありませんが、国外への持ち出しは禁止です。2018年の登録制への移行、事業者の5つの義務、買う人・持つ人・売る人の決まり、全形牙と製品の違い、罰則を説明します。

公開日: 2026年10月3日

古い樫の店のカウンターを真上から見た写真。黒い漆のトレーに象牙色の印材を立て、まわりに緑茶の湯のみ、真ちゅうの呼び鈴、白い風呂敷包み、クリーム色の封筒、紺の布張りの帳簿、木のそろばん
象牙の国内取引 売る側には登録・表示・記録の義務があります。買う側と相続する側には、手続きはありません

お父様の遺品から象牙の印鑑や置物が出てきて、持っていてよいのか、売ってよいのか迷っている方がいらっしゃいます。象牙の印鑑を買う前に、国内で売られているのは合法なのかを確かめたい方もいるでしょう。象牙の取引は2018年に制度が変わり、買う人、持つ人、売る人で守る決まりが違います。この記事では、環境省の案内と種の保存法の条文をもとに、立場ごとの決まりを順に説明します。

先に結論

国内で象牙の印鑑や製品を買うのは、相手が国に登録した事業者であれば合法です。買う側に手続きはなく、持ち続けることにも、ご家族が相続することにも制限はありません。売る側には、種の保存法で、登録(5年ごとに更新)、登録番号の表示、取引記録の作成と5年間の保存が義務づけられています。個人が持っている象牙の印鑑を1度譲るのは、法律の例外に当たります。ただし、繰り返し売ると、個人でも登録が要る事業とみなされることがあります。無登録の事業者から買うと、買った人も罰則の対象です。国外への持ち出しは、どの場合も禁止です。

象牙の国内取引は原則禁止で、登録を受けた場合だけ認められます

環境省の案内によると、象牙や象牙製品を国内で取引することは、原則として禁止されています。ここでいう取引には、売る、買う、あげる、もらう、貸す、借りるのすべてが含まれ、お金のやり取りがあるかどうかは問いません。そのうえで、決められた登録を受けた場合だけが例外として認められています。全体の仕組みを4つにまとめると、次のとおりです。

牙の形が残った象牙(全形牙)は、譲る前に1本ずつ登録する1990年より前に取得したことを証明して国の登録を受け、登録票と一緒でなければ譲れません。持っているだけなら登録は要りません
印鑑などの製品は、登録した事業者だけが売れる象牙の印材、カットピース、端材、製品を事業として譲り渡すには、特別国際種事業者としての登録が要ります
買う人、持つ人、相続する人に手続きはない登録事業者から買った象牙製品を持つこと、ご家族から相続することに、国への届け出は要りません
国外への持ち出しは、どの場合も禁止国内で正しく買った象牙製品でも、輸出に当たるため持ち出せません。海外への郵送も同じです

根拠になる法律は、種の保存法です。第12条は、希少な野生動植物の個体や器官を売る、買う、あげる、もらうことなど(譲渡し等)を原則として禁じています。そのうえで、印鑑のように加工され、決められた要件に当てはまる製品(特定器官等)を例外にしています。ただし、その製品を事業として譲り渡すには、第33条の6の登録を受けなければなりません。買う人には手続きがなく、売る人には登録が要るのは、この2つの条文があるためです。

2018年6月1日、象牙を売る事業者は届出制から登録制になりました

2018年6月1日に施行された種の保存法の改正で、象牙製品を扱う事業は届出制から登録制に変わりました。それまでは届け出るだけで始められましたが、改正後は国の審査を受けて登録されなければ始められません。登録した事業者には、次の5つの義務があります。

  1. 登録を受け、5年ごとに更新する根拠は法律の第33条の6と第33条の10です。登録には審査があり、更新は有効期間が切れる前の1年6か月の間に申請します。違反で登録を取り消されると、5年間は再登録できません

    当店では経済産業省認定の象牙取扱店として登録を受け、更新しています

  2. 登録番号などを表示する広告や陳列、販売のときに、登録番号などを誰でも見やすいように表示します。環境省の案内では、表示の様式に決まりはありません。法律の第33条の8は、国が事業者の名前と登録番号を公表することも定めています

    当店では登録番号を特定商取引法に基づく表記のページに記載しています

  3. 取引のたびに記録し、5年間保存する象牙製品を譲り受けるとき、譲り渡すときに、相手の名前と住所などを台帳に記録し、5年間保存します。出どころの分からない象牙を引き取るときは、手に入れた経緯を相手から聞き取ります

    当店では印材の仕入れから印鑑の販売まで、取引ごとに記録を残しています

  4. 大きな製品や印材には管理票を付ける根拠は法律の第33条の23です。対象は、重さが1kg以上で、いちばん長い部分が20cm以上の象牙製品や印材です。2018年6月1日以降にこれを新たに手に入れたときは、入手の経緯を書いた管理票を作ります。譲り渡すときは、写しを5年間保存します

    当店では印鑑1本分の印材は、この大きさに届きません。それでも、仕入れた印材がどこから来たかは、台帳でたどれるようにしています

  5. 持っている全形牙をすべて登録する事業者になるには、持っている全形牙を1本残らず、個体等登録制度で国に登録しておく必要があります。2019年7月1日からは、証明のしかたが厳しくなりました。1990年より前に手に入れたことを示すには、第三者の証言だけでなく、放射性炭素による年代測定などの裏付けが要ります

    当店では扱っているのは、印鑑に加工するための象牙の印材です

どの義務も、象牙がどこから来て誰に渡ったかを、後からたどれるようにするためのものです。買う人は、登録番号の表示を見れば、その店が国の審査を受け、取引を記録する義務を負っていると分かります。

買う人、持つ人、売る人で、決まりが違います

象牙製品との関わり方を、買う、持つ(相続する)、売る(譲る)の3つに分けて見ていきます。

買う人

登録事業者から買う限り、手続きは要りません

規制なし

環境省の象牙Q&Aにあるとおり、一般の方が登録事業者から象牙製品を買うときは、買う側に規制はありません。認定証のような書面を国に出す必要もありません。買った象牙の印鑑は、ほかの素材と同じように、実印として役所に登録したり、銀行印として届け出たりできます。

気をつけること無登録の事業者から買うと、買った人も罰則の対象になります。登録番号の表示を確かめてから注文してください

持つ人、相続する人

所持にも相続にも、制限はありません

手続きなし

環境省の一般向けの案内によると、正しく手に入れた象牙製品は、持ち続けることに制限がありません。持ち主が亡くなり、ご家族が相続で引き継ぐことも、例外として認められています。お父様が使っていた象牙の印鑑を、そのまま受け継いで持っていて構いません。牙の形が残った全形牙も、持っているだけなら登録は要りません。

気をつけること国外へ持ち出すことだけはできません。相続した全形牙を売るときは、先に登録が要ります

売る人、譲る人

1度譲るのは例外に当たり、繰り返し売ると登録が要ることもあります

場合による

持っている象牙の印鑑を、ご家族や友人に1度渡すことは、法律の第12条の例外に当たります。一方、環境省の事業者向けの案内では、繰り返し行う取引を「事業」とし、個人か法人か、お金を受け取るかどうかを問いません。個人でも、象牙の印材や製品を繰り返し売ったり譲ったりすると、登録が要る事業に当たる可能性があります。フリマアプリで何度も出品するのは、これに当たりかねません。

気をつけること買い取り店に売るときは、相手が登録事業者かを確かめます。全形牙は、登録票がなければ譲れません

全形牙と、印鑑などの製品では、扱いが違います

象牙の決まりを読むときに混乱しやすいのが、「全形牙」と「製品」の違いです。全形牙は、牙の形がそのまま残った象牙です。床の間に飾る置物として見かけることがあります。一方、印鑑や根付、三味線のばちのように加工したものや、カットピース(象牙を裁断したもの)、印材は、製品の側に入ります。

全形牙(牙の形が残った象牙)印鑑、印材、カットピースなどの製品

1本ごとに、1990年より前に取得したことを証明して国の登録を受け、登録票を交付してもらいます

登録するもの

製品そのものではなく、売る事業者が登録を受けます

登録票と一緒でなければ譲れません。陳列には登録票を備え付け、広告には登録記号番号を表示します

売るとき

登録事業者だけが売れます。登録番号を表示し、取引を記録します

持っているだけなら登録は要りません。売る、譲るときに登録します

持つとき、相続するとき

持つことにも相続にも手続きは要りません

分割してカットピースにしたときは、登録票を返納します。2018年は14.7トン分の登録票が返納されました

加工するとき

重さが1kg以上で、いちばん長い部分が20cm以上の印材や製品を事業者が新たに手に入れたときは、管理票を作ります

できません

国外への持ち出し

できません

環境省の象牙Q&Aによると、全形牙の登録制度は1995年に始まりました。2019年12月までに登録された量は、累計で約384トンです。過去に輸入された量に比べると少なく、まだ登録されていない全形牙が国内に相当量あると推定されています。遺品に牙の形のままの象牙があれば、売る前に登録が要ることを覚えておいてください。申請の窓口は、一般財団法人自然環境研究センターです。

個人が象牙を売る、譲るときにできること、してはいけないこと

相続した象牙の印鑑や置物を手放したいときは、次のように分けて考えます。

できること
  • ご家族や知人に、1度譲る印鑑のように加工した製品を個人が譲るのは、法律の第12条の例外に当たります。相続で引き継ぐ場合も例外です
  • 登録事業者に買い取ってもらう買い取り店が登録を受けているかを、登録番号の表示で確かめてから持ち込みます
  • 全形牙は、登録を受けてから譲る自然環境研究センターに登録を申請し、交付された登録票と一緒に譲ります
  • 手放さずに持ち続ける持ち続けることに制限はありません。印鑑なら、ご自分の名前に彫り直して使う方法もあります
してはいけないこと
  • 登録を受けずに、繰り返し売るフリマアプリやオークションで何度も売ると、個人でも登録が要る事業に当たる可能性があります
  • 全形牙を、登録票なしで売る、出品する登録票を伴わない取引や、登録記号番号を示さない広告は、罰則の対象です
  • 海外へ発送する、訪日中の旅行者に売るどちらも国外への持ち出し(輸出)につながります。環境省は、一時的に日本を訪れている外国人旅行者への販売にも注意を呼びかけています
  • 海外のサイトから象牙製品を買う海外から発送された象牙製品を受け取ることは輸入に当たり、許可がなければ違法です

環境省の象牙Q&Aによると、インターネットでの取引にも、店頭と同じ決まりが当てはまります。そのうえ、フリマアプリやオークションサイトの運営会社が、独自の規約で象牙の出品を制限していることがあります。出品する前に、使うサービスの規約を確かめてください。

無登録で象牙製品を売ると、重い罰則があります

環境省の事業者向けの案内によると、無登録で事業に当たる取引をした場合の罰則は、5年以下の懲役か500万円以下の罰金です。両方が科されることもあります。登録事業者が義務に違反すれば、登録を取り消されたり、事業の停止を命じられたりします。取り消されると、5年間は再登録できません。無登録の事業者から買った人も、罰則の対象になります。

象牙の印鑑を買うときに、店のどこを見ればよいか

買う側に手続きはありませんが、「登録事業者から買う」ことだけはご自分で確かめる必要があります。見るところは4つです。

注文の前に確かめること

  • 登録番号の表示があるか「特定商取引法に基づく表記」や会社案内のページに、象牙を扱う事業者の登録番号が書かれているかを見ます。表示の様式に決まりはないため、載っている場所は店によって違います
  • 認定証が付くか付属品の欄に、正規の象牙であることを示す書面があるかを見ます。当店の象牙の印鑑には、単品にもセットにも1点ずつ、象牙認定書をお付けしています
  • 海外へ発送していないか海外発送を受け付けている店で象牙を買うのは避けてください。象牙の輸出は原則禁止です
  • 印材の名前がはっきり書かれているか「本象牙」なのか、樹脂でできた「象牙風」の素材なのか、マンモスの牙なのかを、商品名や説明で確かめます。見分け方は本象牙の印鑑の見分け方にまとめています

当店は、経済産業省認定の象牙取扱店として登録を受けています。登録番号は特定商取引法に基づく表記のページに記載しています。象牙の印鑑は、標準・特上・極上の3つのランクでお作りし、どれにも認定証を添えます。ランクごとの違いは、象牙の印鑑とは?の記事で説明しています。

よくある質問

父の遺品の象牙の印鑑を、そのまま使ってよいですか

使って構いません。相続で象牙製品を引き継ぐことは例外として認められており、国への手続きは要りません。実印として役所に登録するなら、ご自分の名前が彫られている必要があります。お父様のお名前が彫られたままなら、印面を削って彫り直す方法があります。古い印鑑の扱いは、印鑑を新調したら古い印鑑はどうする?も参考にしてください。

使わなくなった象牙の印鑑を、友人に譲ってもよいですか

1度譲る分には構いません。種の保存法の第12条は、印鑑のように加工された製品の譲渡しを例外にしています。気をつけたいのは、繰り返し譲る場合です。個人でも、象牙製品を繰り返し譲ったり売ったりすると、登録が要る事業に当たる可能性があります。また、譲る相手が海外に住んでいる場合は、送れません。

質屋やリサイクル店に、象牙の置物を売れますか

相手の店が登録事業者であれば売れます。買い取り店の登録番号の表示を確かめてから持ち込んでください。牙の形がそのまま残った全形牙は、売る前にご自分で登録を受け、登録票と一緒に渡す必要があります。登録の申請先は一般財団法人自然環境研究センターです。

店が本当に登録しているか、どこで確かめられますか

まず、店のページにある登録番号の表示を見ます。種の保存法の第33条の8は、登録事業者の名前と登録番号を国が公表すると定めています。環境省の案内によると、その事業者登録簿も公開されています。表示が見当たらない店には、注文の前に番号を尋ねてください。番号が分からないまま買うのは避けてください。無登録の事業者から買うと、買った側も罰則の対象になるためです。

海外のサイトで安い象牙の印鑑を見つけました。買えますか

買えません。海外から発送された象牙製品を受け取ると輸入に当たり、許可がなければ違法になります。象牙の印鑑は、国内の登録事業者から買ってください。

まとめ|象牙製品を買う、持つ、手放すときの確かめ方

象牙製品のことで迷ったら、まず、買うのか、持ち続けるのか、手放すのかをはっきりさせます。それによって、確かめることが変わります。

買うなら、店の登録番号の表示を探し、見つからなければ注文の前に尋ねます。番号が確かめられたら、あとはほかの印材と同じように、ランクや本数を選んでいきます。

持ち続けるなら、手続きは要りません。国外へ持ち出さないことだけを守り、印鑑ならご自分の名前に彫り直すかどうかを考えます。

手放すなら、まず、牙の形が残った全形牙か、加工した製品かを確かめます。全形牙は、売る前に登録を受けます。製品なら、次に相手と回数を見ます。ご家族や知人に1度譲るなら手続きは要りません。買い取り店に売るなら相手の登録番号を確かめ、繰り返し売るならご自分が登録を受けます。迷ったときは、環境省の野生生物課か自然環境研究センターに相談してください。

本象牙(標準)の実印・銀行印・認印の3本セットと印鑑ケース
経済産業省認定の象牙取扱店。登録番号は特定商取引法に基づく表記に記載

決まりに沿って扱う、認定証付きの本象牙

京都の職人がお名前に合わせて印影を設計し、彫刻します。象牙の印鑑とセットには1点ごとに認定証を添え、印鑑ケース、押印マット、保証書をお付けします。送料無料、5年保証。3本を同じ象牙で揃えるセットが、いちばん割安です。

本象牙(標準)3本セット(実印・銀行印・認印)73,200円〜 →

SOURCES

出典

象牙の国内取引の決まり(登録制への移行、登録番号の表示、取引記録、管理票、全形牙の登録、罰則、個人の扱い)は、環境省の案内と象牙Q&A、種の保存法の条文を参照しました。登録の事務は一般財団法人自然環境研究センターが行っています。個別の事案は環境省または経済産業省にご確認ください。価格は2026年10月時点の当店の税込価格です。

  1. 環境省. 象牙取引制度の概要. 特定国際種事業・特別国際種事業. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/system-ivory/,(参照 2026-10-03).
  2. 環境省. 象牙の取引規制について(事業者向け). 特定国際種事業・特別国際種事業. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/ivory/index.html,(参照 2026-10-03).
  3. 環境省. 象牙の国外持ち出し規制について(一般の方向け). ワシントン条約と種の保存法. https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/general/,(参照 2026-10-03).
  4. 環境省 自然環境局 野生生物課. 象牙Q&A(2020年2月6日版). https://www.env.go.jp/nature/FAQ_on_ElephantIvory_JP_0421.pdf,(参照 2026-10-03).
  5. 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)第12条・第17条・第33条の6・第33条の8・第33条の10・第33条の23. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/404AC0000000075,(参照 2026-10-03).
  6. 一般財団法人 自然環境研究センター. 国際希少種の登録・製品認定. http://www.jwrc.or.jp/service/cites/index.htm,(参照 2026-10-03).