CHAPTER 04 印鑑登録・各種手続き
遺言書に印鑑は必要?自筆・公正証書の押印と2026年の法改正
自筆の遺言書は、今の法律では印鑑を押さないと無効です。認印でも有効ですが、実印なら本人の印鑑だと確かめやすくなります。印鑑を押す3か所、公正証書遺言での扱い、押印を任意にする2026年の法改正と施行の時期、法務局に預けるときの決まりを説明します。
公開日: 2026年10月13日
遺言書を書こうと便せんを用意したものの、どの印鑑をどこに押せばいいのか分からず、手が止まることがあります。新聞で「遺言書の押印が要らなくなる」という記事を読み、もう押さなくていいのかと迷っている方もいらっしゃるでしょう。遺言書は、法律で決まった形式が1つ欠けただけで無効になる書類です。種類ごとの印鑑の決まりを、今の法律と公布された改正の両方から説明します。
今の法律では、自分で書く遺言書(自筆証書遺言)に印鑑が必要です。全文、日付、氏名を自分で書き、印鑑を押します。押していない遺言書は無効です。印鑑の種類に決まりはなく、認印でも有効です。ただ、本人が押したことをあとでご家族が確かめやすいのは、印鑑登録をした実印です。公正証書遺言は、2025年10月から電子サインで作るようになり、証書に印鑑を押しません。自筆の遺言書の押印を任意にする改正は、2026年6月に公布されましたが、まだ施行されていません。
3種類の遺言書と、印鑑の決まり
民法が定める遺言書は、おもに次の3種類です。作り方が違うので、印鑑の使い方も違います。
自筆証書遺言
押印が必要全文、日付、氏名を自分で書いて、印鑑を押します。費用をかけずに、ひとりで作れます。
使う印鑑認印でも有効。実印がおすすめ
公正証書遺言
証書に押印なし公証人に内容を伝えて、証書にしてもらいます。遺言をする方と証人2人は、電子サインをします。
使う印鑑本人確認に実印か認印
秘密証書遺言
押印と封印証書に署名と押印をして封筒に入れ、封じ目に同じ印鑑を押します。それを公証人と証人2人の前に出します。
使う印鑑証書と封印に同じ1本
印鑑の押し方で迷いやすいのは、自筆証書遺言です。公証人が関わらないので、決まりどおりに書けているかを、自分で確かめることになります。ここからは、自筆の遺言書のどこに印鑑を押すのかを見ていきます。
自筆証書遺言で、印鑑を押すのは3か所です
民法第968条は、自筆の遺言書について、次のように定めています。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
民法 第968条第1項
印鑑を押す場所は、氏名の横だけではありません。財産の一覧を別の紙で付けるときと、書き間違いを直すときにも、押印が要ります。
- 1 氏名の横本文を書き終えたら、日付と氏名を自分で書いて、印鑑を押します。日付は「○年○月吉日」とせず、日にちまで書きます。
- 2 訂正した場所どこをどう直したかを書き添えて署名し、直したところに印鑑を押します。法務省は、訂正するより書き直すことをすすめています。
- 3 財産目録の全ページ目録は、パソコンで作ったものでも、通帳のコピーでもかまいません。そのかわり、すべてのページに署名して印鑑を押します。
3の財産目録を紙の両面に印刷したときは、表と裏のどちらにも署名と押印が要ります。押し忘れを防ぐには、片面だけに印刷して、1枚ずつ押していくのが確実です。3か所とも同じ印鑑で押しておくと、あとで印影を見比べやすくなります。
遺言書の印鑑は認印でも有効です。それでも実印をすすめる理由
民法は「印を押さなければならない」と定めるだけで、印鑑の種類までは決めていません。法務省も、法務局に預ける遺言書について、認印で問題ないと説明しています。避けるよう求めているのは、スタンプ印です。
それでも実印をおすすめするのには、理由があります。遺言書が開かれるのは、書いた方が亡くなったあとです。「これはあなたが書いたものですか」と、ご本人に尋ねることができません。残されたご家族は、筆跡と印影から、ご本人のものかどうかを確かめます。
実印の印影は、印鑑登録証明書のほか、住まいや車の手続きで押した書類にも残っています。遺言書の印影をそれらと見比べれば、同じ印鑑かどうかが分かります。どこでも買える既製の認印は、同じ印影の印鑑がほかにもあるため、見比べても本人のものとは言い切れません。
1つ気をつけたいのは、亡くなると印鑑登録が消えることです。そのあとでは、ご家族が印鑑登録証明書を取ることはできません。遺言書を書いた時期に証明書を1通取り、遺言書とは別の封筒で保管しておくと、印影を見比べる手がかりになります。
最高裁判所が判断した、押印をめぐる3つの例
印鑑の押し方が争われて、最高裁判所まで進んだ例があります。結論が分かれた3つを並べました。
花押は、署名を図案のように崩して書く、昔からのサインです。手で書いたしるしは、印鑑の代わりになりませんでした。指印や封じ目の印が有効とされた例も、ご家族が裁判で争った末の結論です。
押す時期が問題になった例もあります。入院中に全文と日付と氏名を書き、退院してから押印した遺言書です。押したのは、書いた日の27日後でした。最高裁判所は令和3年1月18日の判決で、日付がずれているだけで無効になるわけではないと判断しています。こうした争いを残さないために、書き終えた日に、氏名のすぐ横へ朱肉ではっきり押してください。
2026年の改正で遺言書の押印は任意になります。施行までは今の決まりです
2026年6月24日に、民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が公布されました。自筆証書遺言と秘密証書遺言について、押印の要件をなくし、押すかどうかを任意にする内容です。訂正した場所の押印も、任意になります。
- 氏名の横
- 押印が必要です。押していない遺言書は無効です
- 訂正した場所
- 署名に加えて、押印が必要です
- いつまで
- 改正が施行される日の前日まで
- 氏名の横
- 押印は任意になります
- 訂正した場所
- 押印は任意になります
- いつから
- 公布から1年以内の、政令で決める日から
施行の日は、公布から1年を超えない範囲で、政令で決まります。2026年10月の時点では、その日付はまだ示されていません。施行の前に書く遺言書には、今の決まりのとおりに押印します。「もうすぐ要らなくなるから」と押さずにおいた遺言書は、今の法律では無効です。
施行のあとも、印鑑を押してかまいません。印影は、ご本人が書いたことを示す手がかりとして、引き続き役に立ちます。同じ改正で、パソコンなどで作った遺言を法務局に預ける「保管証書遺言」も新しくできます。こちらは、公布から3年以内に始まる予定です。
法務局に預ける遺言書は、書き方の決まりが増えます
自筆の遺言書は、法務局に預けることができます(自筆証書遺言書保管制度)。預けた遺言書は、亡くなったあとに家庭裁判所で受ける「検認」の手続きが要りません。そのかわり、用紙やとじ方に決まりがあります。
法務局に預けるときの決まり
- 用紙
- A4の片面に書きます上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上の余白を、それぞれ取ります。余白には何も書きません
- とじ方
- ホチキスで留めません2枚以上のときは、ページ番号を「1/2」のように書きます。封筒にも入れません
- 押印
- 氏名の横に押しておきます認印でも受け付けてもらえます。スタンプ印は避けます
- 持ち物
- 遺言書のほかに4つ保管申請書、本籍の記載がある住民票の写し、顔写真付きの身分証明書、手数料の収入印紙です
- 手数料
- 1通につき3,900円収入印紙で納めます
- 申請する人
- 遺言を書いたご本人予約をして窓口へ行きます。代理の方や郵送では申請できません
窓口での本人確認は、顔写真付きの身分証明書で行います。持ち物の一覧に、印鑑は入っていません。
法務局は、用紙や書き方が決まりに合っているかを確かめますが、遺言の内容についての相談には応じていません。だれに何を残すかで迷うときは、先に弁護士などの専門家に相談してください。
公正証書遺言は、証書に印鑑を押しません
2025年10月から、公正証書は電子データで作るのが原則になりました。遺言をする方と証人2人は、公証人が読み上げた内容を確かめて、電子サインをします。以前のように、証書の原本に実印を押すことはありません。
印鑑を使うのは、公証人が本人かどうかを確かめるときです。日本公証人連合会は、そのための資料として、発行から3か月以内の印鑑登録証明書を挙げています。運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真の付いた身分証明書に代えることもできます。印鑑登録証明書を使う方は実印を、身分証明書を使う方は認印を持って行きます。
封筒に入れるなら、封じ目にも同じ印鑑を押します
自宅で保管する自筆の遺言書を、封筒に入れるかどうかは自由です。入れるなら、封じ目に遺言書と同じ印鑑を押しておきます。開けられていないことが、ひと目で分かるからです。
封じ目に印のある遺言書は、家庭裁判所で、相続人が立ち会って開けることになっています。家で開けてしまうと、50,000円以下の過料の対象になります。封筒の表に「開けずに家庭裁判所へ出すこと」と書き添えておくと、見つけたご家族が迷いません。検認の申立てには、遺言書1通につき800円の収入印紙が要ります。
遺言書に押す印鑑を、書く前に点検します
書きはじめる前に、押す印鑑を手元に出して、次の4つを見てください。
書く前に見る4つのこと
印面が欠けていないか枠や文字が欠けた印鑑は、欠けが広がると、前に押した印影と合わなくなります。
印面朱肉で押す印鑑かインクが内蔵されたスタンプ印は、法務省が避けるよう求めています。
朱肉ご家族と共用していないか同じ印鑑を何人かで使っていると、だれが押したのかを示しにくくなります。
ご本人用実印の登録が残っているかほかの市区町村へ引っ越すと、前の住所での登録は消えます。今の住所で登録しているかを確かめます。
登録印面が欠けているときや、どれが実印か分からなくなったときは、この機会に作り直す方法があります。新しい実印を作って登録し直せば、遺言書の印影と、いま取れる印鑑登録証明書の印影が同じになります。当店の実印は、薩摩本柘の13.5mmが10,700円、黒水牛の13.5mmが11,900円です。実印以外もまとめて見直すときは、終活で印鑑を整理する|残す印鑑の決め方と家族に伝える一覧をご覧ください。
よくある質問
押印が要らなくなると聞きました。もう押さなくていいですか
まだ押してください。押印を任意にする改正は公布されましたが、施行されていません。施行の前に書いた遺言書に押印がなければ、今の法律では無効になります。
実印を押していない遺言書は、無効ですか
無効ではありません。民法は印鑑の種類を決めていないので、認印を押した遺言書も有効です。実印をおすすめするのは、ご本人の印鑑であることを、あとで確かめやすいからです。
夫婦で1通の遺言書を書いて、2人で押してもいいですか
できません。民法は、2人以上が同じ証書で遺言することを禁じています。ご夫婦でも、1人ずつ別の用紙に書いて、それぞれの印鑑を押してください。
書き直すときは、前の遺言書と同じ印鑑を使いますか
同じ印鑑でなくてかまいません。内容が食い違う部分は、日付の新しい遺言書が優先されます。古い遺言書を残すと混乱のもとになるので、書き直したら、手元の古いほうは破棄します。
父の遺言書に、印鑑が押されていませんでした
今の法律では、押印のない自筆の遺言書は無効です。封筒の封じ目の印で有効とされた例はありますが、事情によって結論が変わります。封がされているときは開けずに、家庭裁判所の検認の手続きを進め、弁護士などの専門家に相談してください。
まとめ|書く前に種類と印鑑を決めて、書き終えた日に押します
はじめに、自分で書くか、公証役場で作るかを決めます。自分で書くなら、押す印鑑を1本決めて、印面が欠けていないか、登録が残っているかを確かめます。
次に、全文、日付、氏名を自分で書き、その日のうちに氏名の横へ押します。財産目録を付けたときは、全ページの署名と押印を確かめます。書き間違えたページは、訂正するより書き直します。
最後に、保管の方法を決めます。法務局に預けるなら、A4の片面に書いた遺言書を、とじずに持って行きます。自宅に置くなら、保管している場所をご家族に伝えておきます。
ご本人の印鑑だと確かめられる実印を、京都の職人がお作りします
住民票のお名前どおりに印面を設計し、職人が1本ずつ彫刻します。旧字体のお名前にも対応し、彫る前の印影をメールで確かめられます。実印は13.5mmから18mmで、どの直径も印鑑登録の大きさの条件に収まります。ご注文から3〜7営業日で発送、送料無料、5年保証です。
ご両親の実印をお子様が注文するときや、公証役場へ行く日が決まっているときは、ご注文の前にお問い合わせください。