CHAPTER 04 印鑑登録・各種手続き
相続放棄に印鑑は必要?申述書は認印、遺産分割で譲るなら実印
家庭裁判所に出す相続放棄の申述書には、認印を押します。印鑑証明書は必要書類に入っていません。申述から受理までに印鑑を使う場面、3か月の期限、遺産分割協議で財産を受け取らない場合との違いを説明します。
公開日: 2026年10月12日
亡くなったお父様に、借入れが残っていると分かった。相続放棄をしようと、裁判所のウェブサイトから申述書を印刷した。氏名を書く欄には「記名押印」とある。押すのは実印なのか、印鑑証明書も取るのか。期限の3か月のうち、もう1か月が過ぎている。印鑑のことで手を止めずに済むよう、押す場面を先に確かめておきましょう。
相続放棄の申述書に押すのは、認印でかまいません。裁判所が挙げている必要書類に、印鑑証明書は入っていません。一方、話し合いで「何も受け取らない」と決めて遺産分割協議書に押すのは、相続放棄とは別の手続きです。そちらは実印と印鑑証明書が要ります。
申述書の「記名押印」の欄に、認印を押します
相続放棄は、家庭裁判所に申述書を出して行います。裁判所の書式は2枚で、1枚めの上のほうに、氏名を書いて印鑑を押す欄があります。
- 1 収入印紙の欄800円分の収入印紙を貼ります。書式には、貼った印紙に押印しないよう注意書きがあります。
- 2 記名押印の欄氏名を書いて、印鑑を押します。未成年の方が放棄するときは、親権者などの法定代理人が書いて押します。
- 3 申述人と被相続人の欄ご自分と亡くなった方の、本籍、住所、氏名を書きます。2枚めには、相続を知った日と放棄の理由を書きます。
裁判所が挙げている必要書類は、申述書のほかに、亡くなった方の住民票の除票か戸籍の附票、放棄する方の戸籍謄本などです。印鑑証明書は入っていません。印影を証明書と見比べる手続きではないので、認印で出せます。
実印を押してはいけない、という意味ではありません。高知家庭裁判所の説明書には、申述書に実印を押して印鑑証明書を付ける出し方も載っています。扱いは裁判所ごとに違うので、申述先の案内を読んでください。
「相続しない」には、2つの方法があります
「相続を放棄した」と話す方のなかには、家庭裁判所の手続きをしていない方がいらっしゃいます。ごきょうだいとの話し合いで、何も受け取らないと決めただけの場合です。2つは、押す印鑑も、借入れの扱いも違います。
家庭裁判所
手続きの相手ほかの相続人
認印
押す印鑑実印
印鑑証明書を添えます
相続を知った時から
3か月以内
法律上の期限は
ありません
はじめから相続人で
なかったことになります
相続人のままです
引き継ぎません
借入れ請求を受ける
立場が残ります
借入れを引き継ぎたくない方は、家庭裁判所での相続放棄が要ります。財産をごきょうだいに譲りたいだけなら、協議書に実印を押す方法でも目的は果たせます。どちらが合うかは事情によるので、迷うときは弁護士や司法書士に相談してください。
申述から受理までに、印鑑を使う場面
申述書を出しても、その場で放棄が決まるわけではありません。高知家庭裁判所の説明書によると、裁判所は書類を調べたあと、申述した方に照会書を送ります。回答書を返すと、受理の通知が届きます。
1申述書を出す日
家庭裁判所に申述書を出す
- 相続放棄の申述書氏名を書いて、認印を押します
- 収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手切手の額は、裁判所ごとに違います
- 戸籍謄本など亡くなった方との関係で、必要な範囲が変わります
この日は、まだ受理されません
郵便家庭裁判所から照会書が届きます裁判所からの質問が書かれた書面です
2回答書を返す日
回答書に記入して返送する
- 回答書質問に答えて記入します。押印の欄があれば、申述書と同じ印鑑を押します
- 申述書の控え書いた内容と、押した印鑑を見ながら答えられます
受理されると、通知書が届きます
受理されたことを債権者などに示すには、相続放棄申述受理証明書を使います。1通につき150円分の収入印紙を添えて、受理した家庭裁判所に申請します。窓口で申請するときは、印鑑と、受理通知書か運転免許証などを持って行きます。
申述書に押した印鑑は、手続きが終わるまで同じものを使うと、どの印鑑を押したかで迷いません。出す前に申述書のコピーを取り、印鑑と一緒にしまっておいてください。
期限は3か月。迷っているあいだは、財産に手を付けません
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
民法 第915条第1項(本文)
3か月は、亡くなった日からではなく、ご自分が相続人になったと知った時から数えます。財産や借入れを調べても決められないときは、家庭裁判所に申し立てて、期間を延ばしてもらえます。
気をつけたいのは、この期間の過ごし方です。民法は、相続人が相続財産を処分すると、相続を認めたものとみなすと定めています(第921条)。放棄を考えているあいだは、次のように分けて動いてください。
戸籍を集める、財産と借入れを調べる民法は、決める前に相続財産を調査できると定めています
できます期間を延ばしてもらう申立てをする3か月のうちに、家庭裁判所に申し立てます
できます亡くなった方の預金を引き出して使う相続財産を処分したことになるおそれがあります
避けます車や家を売る、ご自分の名義に変える譲渡証明書や登記の書類に実印を押す前に、放棄するかどうかを決めます
避けます遺産分割協議書に実印を押す財産の分け方に合意すると、相続することを前提にした行動になります
避けますごきょうだいから「とりあえず実印を押して」と協議書が届いても、放棄を考えているなら、押す前に専門家へ相談してください。
放棄すると、次の順位の方が相続人になります
相続放棄をした方は、はじめから相続人でなかったことになります。同じ順位の方が全員放棄すると、相続人の立場は次の順位の方へ移ります。
- 第1順位 亡くなった方のお子様お子様の全員が放棄すると、次の順位の方が相続人になります。配偶者は、どの順位の方とも一緒に相続人になります
- 第2順位 亡くなった方のご両親、お祖父様、お祖母様ご健在の方がいれば、相続人になります。放棄するには、ご自分でも家庭裁判所に申述します
- 第3順位 亡くなった方のごきょうだい第2順位の方がいないか、全員が放棄したときに相続人になります
次の順位の方が放棄するときも、申述書に認印を押して出します。3か月は、その方がご自分の番になったと知った時から数えます。放棄を済ませたら、次に相続人になる方へ早めに知らせておくと、その方も期限に余裕を持てます。
未成年のお子様が放棄するときは、親権者などの法定代理人が申述書を書いて押します。親権者も相続人で、お子様だけが放棄する場合などは、家庭裁判所に特別代理人を選んでもらいます。
家庭裁判所の書類には、朱肉で押す認印を使います
裁判所に出す書類は、あとから照会や証明書の申請が続きます。浸透印を使えるかどうかは、申述先に確かめることになります。朱肉で押す認印を1本決めておけば、確かめる手間が要りません。使える場面の違いは、認印にシャチハタは使える?で説明しています。
ご家族で同じ認印を使い回している方は、だれの書類に押した印鑑かが、あとで分からなくなります。ごきょうだいが同じ時期に放棄するなら、1人1本ずつ分けておくと確実です。当店の認印は、薩摩本柘の12mmが6,400円、黒水牛の12mmが7,000円です。
放棄をしない相続人の方は、実印を使います。遺産分割協議書に押す実印と印鑑証明書の準備は、実印はいつ必要?車・住宅・相続など使う場面を整理をご覧ください。
申述書を出す前に確かめること
- 相続人になったと知った日から、3か月を過ぎていない
- 亡くなった方の預金や車に、手を付けていない
- 申述先は、亡くなった方の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所である
- 収入印紙800円分を貼り、印紙には押印していない
- 記名押印の欄に、朱肉で認印を押した
- 申述書のコピーを取り、押した印鑑と一緒にしまった
よくある質問
実印を押して出しても、かまいませんか
かまいません。高知家庭裁判所の説明書には、実印を押して印鑑証明書を付ける出し方も載っています。扱いは裁判所ごとに違うので、申述先の案内を読んでください。
申述書に押した印鑑が、どれか分からなくなりました
申述書のコピーがあれば、印影を見比べて探せます。見つからないときは、照会書に書かれた連絡先へ電話して、どうすればよいかを聞いてください。
3か月を過ぎてしまいました。もう放棄できませんか
過ぎていても、受理されることがあります。裁判所は、相続財産がまったくないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるときなどを例に挙げています。この場合、財産があると知った時から3か月以内に申述します。早めに家庭裁判所か専門家へ相談してください。
兄に全部相続してもらうつもりです。相続放棄が要りますか
財産を譲るだけなら、遺産分割協議書に実印を押す方法もあります。借入れを引き継ぎたくないなら、家庭裁判所での相続放棄が要ります。どちらにするかで押す印鑑も期限も変わるので、先に目的を決めてください。
相続放棄をすると、亡くなった父の印鑑はどうなりますか
印鑑も、お父様が残した品の1つです。放棄を考えているあいだは、処分したり彫り直したりせず、そのまま保管しておくのが無難です。扱いに迷うときは、相談先の専門家に聞いてください。
まとめ|相続放棄は、この順番で進めます
はじめに、相続人になったと知った日から3か月の期限を、日付で書き出します。財産と借入れを調べるあいだは、預金や車に手を付けず、協議書にも実印を押しません。
放棄すると決めたら、申述書に氏名を書いて認印を押し、収入印紙と戸籍謄本を添えて家庭裁判所に出します。届いた照会書に答え、受理の通知を受け取ったら、次に相続人になる方へ知らせます。
手続きのあいだ使い続ける印鑑を、京都の職人がお作りします
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期限のある手続きに使う方は、ご注文の前にお問い合わせから、使う日をお知らせください。