CHAPTER 16 印鑑の贈り物・マナー
周年祝いの印鑑に年数を入れていい?届け出る印鑑と記念の残し方
周年祝いの印鑑に「創業30周年」のような年数を彫ることは、おすすめしません。法務局や銀行、市区町村に届け出る印鑑は社名や名前だけを彫るもので、年数を入れると翌年には数字が合わなくなります。個人の実印は、名前以外の文字が入ると登録できません。記念用のスタンプとの違い、印鑑の種類ごとの影響、年数をのし紙や箱書きに残す方法を説明します。
公開日: 2026年10月5日
取引先が創業30周年を迎えるので、お祝いに会社の角印を贈ろうと考えている方もいるでしょう。せっかくなら、「30周年記念」の文字も彫りたいところです。けれども、印鑑は請求書や契約書に押す道具です。年数が入っていても、ふだんの書類に使えるのでしょうか。ご両親の結婚25周年に実印を贈るときも、同じ疑問が出てきます。
周年祝いの印鑑に、年数は入れないことをおすすめします。印鑑は何年も使うので、年数を彫ると翌年には数字が合わなくなります。届け出ない角印でも、請求書に押すたびに過去の数字が残ります。個人の実印は、「記念」のような名前以外の文字が入ると登録できません。年数や日付は、のし紙や書き付け、桐箱のふたの裏に残します。
届け出る印鑑には、社名や名前だけを彫ります
会社の実印は法務局に、銀行印は金融機関に、個人の実印は市区町村に届け出ます。書類に押された印影が届け出た印影と同じかどうかで、本人や会社が押したことを確かめます。そのため、印面には「誰の印鑑か」を示す文字だけを彫ります。
年数を入れると会社実印は、翌年から数字が合わなくなる個人の実印は、登録できない
個人の実印にできる印鑑は、市区町村が条件を定めています。京都市の要領は、その1つに「職業、資格、その他氏名等以外の事項を表していないこと」を挙げています。「還暦記念」や「結婚25周年」の文字を添えた印鑑は、登録できません。名前の後ろに「印」や「之印」を付けるのは認められています。
会社実印について、商業登記規則が定めているのは2つです。1つは大きさで、1辺が1cmを超え3cm以内の正方形に収まることです。もう1つは、届け出た印影と見比べやすいこと(規則の言葉では「照合に適するもの」)です。彫る文字までは決めていません。それでも年数を入れないほうがよい理由は、次の3つです。
印鑑に年数を入れない3つの理由
翌年には、数字が合わなくなります
「周年」は、まる何年がたったかを数える言葉なので、数字は毎年1つずつ増えます。「30」と彫った印鑑は、1年たつと過去の数字になります。会社の印鑑は10年、20年と使うので、押すたびに古い年数が書類に残ります。
社名や名前の字が、小さくなります
印面の広さは、直径で決まります。21mmの会社実印なら、その円の中に社名と役職名を収めます。年数の文字を足すと、そのぶん社名に使える場所が減ります。字が細かくなると、押したときに線がつぶれやすくなります。
替えるたびに、届け出が要ります
会社実印を替えたときは、法務局に改印の届け出をします。銀行印なら、口座のある金融機関ごとに変更の手続きが要ります。年数入りの印鑑を数年おきに作り直すと、そのたびに同じ手続きを繰り返すことになります。
記念用の印と、届け出る印鑑の違い
「創業30周年」の文字が入った印を見かけることもあります。封筒や案内状に押してあるスタンプで、届け出る印鑑とは役目の違う記念用の印です。
記念の年に、封筒や案内状へ押すスタンプです
「おかげさまで創業30周年」のような言葉や、周年ロゴを入れたゴム印です。どこにも届け出ないので、文字も形も自由に決められます。使うのはその1年間だけで、翌年には役目を終えます。
押す場所封筒、案内状、記念品の包み、社内報など
契約書や請求書に押して、何年も使う印鑑です
会社実印、会社銀行印、個人の実印と銀行印です。届け出た印影と照らし合わせるので、同じ印鑑を使い続けます。角印は届け出ませんが、請求書や見積書にくり返し押すので、同じように長く使います。
彫る文字社名と役職名、または本人の名前
周年祝いとして贈るなら、何年も使う印鑑のほうが手元に長く残ります。記念のスタンプは、その年の広報に使う品です。当店でお作りしているのは、社名や名前を彫る印鑑です。周年の文字やロゴを入れたスタンプは扱っていません。
印鑑の種類ごとに、年数を入れたときの影響を比べます
影響の大きさは、どこに届け出る印鑑かで変わります。届け出の先と合わせて一覧にしました。
個人の実印社長個人やご両親、ご夫婦へ贈るとき
市区町村登録できない個人の銀行印口座の名義人の名前で作ります
金融機関おすすめしない会社実印外側に社名、内側に役職名
法務局おすすめしない会社銀行印外側に社名、内側に「銀行之印」
金融機関おすすめしない角印社名に「之印」や「印」を付けます
届け出なし翌年から使いにくい記念のスタンプ封筒や案内状に押すゴム印
届け出なし入れてよい角印は届け出ない印鑑なので、彫る文字に決まりはありません。ただ、請求書や領収書に「30周年記念」と押されていると、翌年からは書類の日付と年数が合わなくなります。社名だけにしておけば、社長が代わっても使い続けられます。角印に彫る文字の並べ方は、角印とは?で説明しています。会社実印の内側の文字は、代表取締役印と代表者印の違いをご覧ください。
年数は、印鑑の外側に残します
印面に彫らなくても、周年の記念であることは残せます。お祝いの品は、外側からのし紙、箱やケース、印鑑の順に重なっています。年数と日付は、外側の2つに書きます。
- 印鑑社名や名前だけを彫る
- 年数は入れず、何年たっても使える形にしておきます。
- 箱・ケース書き付けを一緒にしまう
- 「創業30周年記念」と日付、贈り主の名前を書いた紙を、ケースと一緒にしまいます。個人の印鑑の2本・3本セットは桐箱を選べるので、ふたの裏に筆で書き入れる方法もあります。
- のし紙表書きに年数を入れる
- 「祝 創業三十周年」のように、表書きで年数を伝えます。箱を開けたら外すものなので、残したいときは書き付けも添えます。
- 保証書購入した日が残る
- 当店の保証書には、ご購入日と彫刻した文字、書体を書く欄があります。印鑑と一緒にしまっておけば、いつ作ったかがあとから分かります。
桐箱のふたの裏に書く言葉の例は、名入れの桐箱で印鑑を贈るで紹介しています。会社印のセットは桐箱ではなく革のケースでお届けするので、ふたの裏に書く代わりに書き付けを添えてください。
結婚記念日のお祝いでも、考え方は同じです。ご夫婦の実印や銀行印には名前だけを彫り、「結婚25周年」の文字と日付は箱やカードに残します。選び方は結婚記念日に印鑑を贈るで説明しています。
よくある質問
角印に、創業した年を西暦で入れるのはどうですか
創業の年は変わらないので、翌年に数字が合わなくなる心配はありません。ただ、文字が増えるぶん、社名の字は小さくなります。角印は社名を読んでもらうための印鑑です。創業の年は、名刺や封筒に刷るほうが目に留まります。
個人の実印に「寿」や「福」のような縁起のよい字を添えられますか
実印として登録するなら、添えられません。京都市の要領では、名前以外の文字が入った印鑑は登録できない決まりです。縁起を込めたいときは、印材の色やケースの柄で表す方法があります。当店には、鶴と亀を描いたケースもあります。
注文のときに、年数や「記念」の文字を指定できますか
当店の注文画面には、会社印は社名と内側の文字、個人の印鑑はお名前を入力する欄があります。年数や記念の文字を入れる欄はありません。彫る内容について特別なご希望があるときは、ご注文の前にお問い合わせください。
年数を入れた印鑑を、すでに作ってしまいました
届け出ていない角印や認印なら、そのまま記念の品として手元に置いておけます。ふだんの書類に押す印鑑は、社名や名前だけのものを別に用意します。個人の実印として登録するつもりだった場合は、名前だけの印鑑を作り直してください。
まとめ|年数を残す場所を、先に決めます
はじめに、贈る印鑑をどこに届け出るのかを確かめます。法務局、金融機関、市区町村のどれかに届け出るなら、彫るのは社名や名前だけです。届け出ない角印も、長く使うなら社名だけにします。
次に、年数を残す場所を選びます。候補は、のし紙の表書き、ケースにしまう書き付け、桐箱のふたの裏の3つです。ふたの裏に書くなら、個人の印鑑の2本・3本セットで桐箱を選んでください。封筒や案内状に周年の文字を押したいなら、記念のスタンプを別に作ります。