CHAPTER 16 印鑑の贈り物・マナー
欲しいものがない人へのプレゼント|持ち物の買い替えから選ぶ
「欲しいものは特にない」と言う人への贈り物は、新しい品を足すのではなく、いま使っている持ち物の中で間に合わせのままの物を上質な物に置き換える、と考えると選びやすくなります。財布や時計、名刺入れ、傘、印鑑といった持ち物を買い替えの目で見直す方法、喜ばれる買い替えの3つの条件、相手の持ち物をさりげなく知る聞き方、印鑑が買い替えの贈り物に向く理由と贈り方、予算の目安を説明します。
公開日: 2026年9月26日
「何か欲しいものある?」と聞いて、「特にないよ」と返される。誕生日や記念日が近いのに、これほど困る返事はありません。ただ、この返事は「何もいらない」という意味ではないことが多いです。必要な物はひととおり持っていて、足りない物が思いつかないだけです。だとすれば、贈り物の考え方を変えます。新しい物を足すのではなく、いま毎日使っている持ち物の中で、間に合わせのまま使い続けている物、くたびれてきた物を、上質な物に置き換える。この記事では、持ち物を買い替えの目で見直す方法、喜ばれる買い替えの条件、相手の持ち物をさりげなく知る聞き方を説明し、そのうえで、多くの人が間に合わせのまま使っている印鑑が、買い替えの贈り物としてどう向いているかをお伝えします。
「欲しいものがない」人には、足す贈り物ではなく、置き換える贈り物を選びます。財布、名刺入れ、時計、傘、ボールペンといった毎日の持ち物を、いま使っている物より確実によい物に替える贈り方です。中でも印鑑は、三文判を銀行印に届け出たまま、学生のころに買った認印のまま、という人が多く、自分ではなかなか買い替えない持ち物です。実印を持っていなければ3本セット、三文判で済ませているなら銀行印と認印の2本セットを、名前に合わせて職人が作った印鑑に置き換えると、「欲しいものがない」人にも役目のはっきりした贈り物になります。
「欲しいものがない」は、3つの意味に分かれます
同じ「特にない」でも、その裏にある気持ちは人によって違います。大きく3つに分けると、贈り物の方向が決まります。
足りている
必要な物はもう持っていて、困っていることがない。いちばん多い意味です。この人には、いま持っている物の「上位版」を贈ります。足りている物を、もっとよい物に替える贈り方です。
自分で選びたい
服や靴、鞄のように、好みがはっきりある物は人に選ばれたくない。この人には、好みが分かれにくく、しかも自分では買いに行かない物を贈ります。印鑑や上質な文房具がここに入ります。
物を増やしたくない
持ち物を減らしている途中で、増えることそのものが負担。この人には、いま持っている物と入れ替わる品か、消えものを贈ります。入れ替わる品なら、持ち物の数は増えません。
3つに共通するのは、「新しく何かを足す」贈り物が向かないことです。足りている人には足す理由がなく、自分で選びたい人には押しつけになり、増やしたくない人には負担になります。だから、置き換える贈り物を考えます。
持ち物を、買い替えの目で見直す
置き換える贈り物を探すには、相手が毎日使っている持ち物を思い浮かべ、「それは、いつから使っているものか」「間に合わせで買ったものではないか」と見ていきます。よくある持ち物を、買い替えのサインと上位版の目安で並べます。
角がすれている。小銭入れが緩んでいる。3〜5年使っている
革の質を上げる。形は今と同じにすると外れにくい
1万〜3万円合皮がはがれてきた。入社時に間に合わせで買ったまま
本革の物に。仕事で人前に出す物なので効果が分かりやすい
5千〜2万円景品やコンビニの物を使っている。書き味を気にしたことがない
金属軸の物に。替え芯が手に入る定番の品を選ぶ
3千〜2万円ビニール傘。骨が曲がっている
骨の多い長傘に。修理できる品なら長く使える
5千〜2万円電池が切れたまま。ベルトがひび割れている
ベルトの交換だけでも見違える。本体の買い替えは好みが強く出る
3千円(ベルト)〜数万円三文判を銀行印に届け出ている。認印と銀行印が同じ1本。学生のころに買った認印のまま。実印を持っていない
名前に合わせて職人が彫った印鑑に。用途ごとに分けて、実印・銀行印・認印の3本を揃える
6,400円(認印1本)〜、3本セット 21,700円〜こうして並べると、どの持ち物も「困ってはいないが、上質な物に替えれば毎日が少しよくなる」品であることが分かります。「欲しいものがない」人への贈り物は、この中から選びます。財布や時計は好みが強く出るので、形や色を今の物に合わせます。印鑑や文房具は好みの影響が小さく、贈る側で選びやすい品です。
喜ばれる買い替えの、3つの条件
置き換える贈り物には、足す贈り物とは違う難しさがあります。相手がいま使っている物を、暗に否定することになりかねないからです。次の3つを満たす品を選ぶと、その心配がなくなります。
- 素材や作りが、見て分かるほど上がっている
- 修理や交換ができて、今の物より長く使える
- 「同じくらいの物」では、替える理由がない
- 形や使い方は、今の物と同じにする
- 色は、今の持ち物の色に合わせる
- 好みが強く出る品は、本人と一緒に選ぶ
- 困っていないので、買い替えるきっかけがない
- 買う場所や選び方が分からない
- 「もらったから替えた」と言える品がいちばん喜ばれる
3つ目の条件が、置き換える贈り物の肝です。財布は、いつか自分で買い替えます。ボールペンも、気が向けば買います。ところが印鑑は、困っていない限り、自分で買い替えようと思いつく人がほとんどいません。三文判でも銀行の窓口は通りますし、認印と銀行印が同じでも日常では困りません。だからこそ、「もらったから替えた」と言える贈り物になります。
印鑑が、買い替えの贈り物に向いている理由
多くの人が、印鑑を間に合わせのまま使っています。就職のときに文房具店で買った認印を、そのまま銀行印に届け出た。親が子どものころに作ってくれた印鑑を、大人になっても使っている。実印は、車や家を買うときになって初めて作る。どれも珍しいことではありません。相手の印鑑の状態を、次のように点検してみてください。
三文判を銀行印に届け出ている文房具店や100円ショップで買った既製の印鑑を、そのまま口座に届け出た
替えたい同じ印影の印鑑が量産されているので、届出印としての意味が薄い。全国銀行協会も、多くの人が同じ印鑑を持つと照合の意味がなくなると案内しています認印と銀行印が同じ1本宅配の受け取りにも、口座の届け出にも同じ印鑑を使っている
替えたい人前で押す認印と、口座の鍵になる銀行印が同じだと、印影が人目に触れる機会が増える。用途ごとに分けるのが基本です実印を持っていない印鑑登録をしたことがない。必要になったら作ればいいと思っている
作りたい車や家の契約、相続の手続きで急に必要になる。名前に合わせて職人が作る印鑑は、頼んでから届くまで日数がかかります親が作ってくれた子ども時代の印鑑名前だけで彫った小さな銀行印を、大人になっても使っている
場合による名前だけの銀行印は結婚後も使えるので、そのまま使い続ける人も多い。枠が欠けていたり、直径が小さすぎたりすれば買い替えの時期です職人が作った実印・銀行印・認印を持っている成人や就職のときに、きちんと揃えた
そのまま印鑑は足りています。印材を上げた実印1本を記念に贈る形はありますが、無理に替える必要はありません京都市の案内でも、同じ形の印鑑が量産されているものは実印として登録できないとされています。三文判は、実印にはそもそもなれず、銀行印としても心もとない印鑑です。それでも多くの人が使い続けているのは、困っていないからです。困っていない物を、確実によい物に置き換える。印鑑は、この記事で説明してきた「欲しいものがない人への贈り物」の条件に、いちばんきれいに当てはまる持ち物です。三文判の詳しい性質は三文判とは?意味・シャチハタとの違い・使えない場面で説明しています。
相手の持ち物を、さりげなく知る
置き換える贈り物は、相手がいま何を使っているかを知らなければ選べません。「欲しいものある?」と聞いても「ない」と返ってくる相手ですから、聞き方を変えます。持ち物そのものを話題にします。
「財布がそろそろだめで、買い替えようと思ってるんだけど、どこで買った?」自分の買い替えの相談にすると、相手も自分の持ち物の話をしてくれます。「私のも古いんだよね」と返ってきたら、その品が候補です
「口座を作るのに銀行印がいるんだけど、ちゃんとしたの持ってる? 私、三文判で届け出ちゃってて」印鑑の話は、手続きの話題にすると自然です。「私もそう」と返ってきたら、銀行印と認印の2本セットが候補になります
「あの人、実印って持ってる? 成人のときに作った?」本人に聞きにくいときは、親やきょうだいに聞きます。実印を持っていなければ、3本セットが候補です
印鑑の場合は、持っている本数のほかに、彫る名前の字と、姓と名のどちらで彫るかも決めておく必要があります。贈る前に確かめておきたいことは印鑑のプレゼントは嬉しくない?贈る前に確認したい5つのことにまとめています。
印鑑を買い替えの贈り物にするなら、3つの形
相手の印鑑の状態が分かったら、贈る形は3つに絞れます。持っていない物を補い、間に合わせの物を置き換える、という順で考えます。
実印を持っていない相手に、3本セット
実印・銀行印・認印を同じ印材で
実印を作るついでに、三文判の銀行印と古い認印も置き換えます。持ち物の数は増えず、3本がすべて名前に合わせて設計した印鑑に替わります。いちばん喜ばれる形です。
- 価格
- 薩摩本柘 21,700円〜、黒水牛 24,300円〜
- 向く相手
- 成人、就職、結婚を迎えた人。実印をまだ登録していない人
三文判で済ませている相手に、2本セット
銀行印・認印の2本セット
実印は持っているが、銀行印と認印が三文判か同じ1本、という相手には、この2本を置き換えます。今の三文判は、宅配の受け取り用として残しておけます。
- 価格
- 薩摩本柘 11,500円〜、黒水牛 13,000円〜
- 向く相手
- 実印は登録済みで、日常の印鑑が間に合わせのままの人
揃っている相手に、印材を上げた実印1本
実印1本を、本象牙やチタンで
印鑑を揃えている相手には、実印だけを上質な印材で作り直す贈り方があります。今の実印が薩摩本柘や黒水牛なら、チタンや本象牙に替えると違いがはっきり分かります。登録し直す手続きは要りますが、一生ものになります。
- 価格
- チタン15mm 31,800円、本象牙(標準)15mm 36,100円
- 向く相手
- 還暦、退職、昇進など、節目を迎えた人
形3で実印や銀行印を作り直すときは、市区町村での改印と、銀行での改印の届け出が必要です。全国銀行協会の案内では、届出印を変えるときは通帳と新旧の印鑑、本人確認書類を持って窓口へ行くとされています。手続きの順番は印鑑の買い替え時期の目安|枠の欠け・すり減り・ひびの見分け方で説明しています。単品とセットの決め方は印鑑のプレゼントは単品とセットのどちら?に詳しくまとめています。
予算の目安
置き換える贈り物は、今の物より確実によい物であることが条件ですので、価格も今の物より上になります。財布なら1万〜3万円、名刺入れやボールペンなら5千円から2万円ほどが目安です。印鑑は、印材と本数で価格が決まります。
3本セットは、1本ずつ買うより割安です。薩摩本柘なら、実印13.5mm、銀行印12mm、認印10.5mmを別々に買うと22,900円ですが、セットなら21,700円です。相手の印鑑をまとめて置き換えるなら、セットのほうが手元に残る金額も、贈り物としてのまとまりもよくなります。
渡すときは、今の物を否定しない一言を
置き換える贈り物は、渡し方に少し気を配ります。「その財布、もう古いでしょ」と言えば、相手は今の持ち物を否定された気持ちになります。今の物には触れず、新しい物のよさだけを伝えます。
財布や名刺入れなら
「欲しいものがないって言うから、毎日使う物を1つ、いい物にしてみた。使いにくかったら遠慮なく言って」
印鑑なら
「欲しいものがないなら、と思って、名前で作ってもらった印鑑にした。銀行印と認印、分けて使えるようになってるよ」
実印を含む3本セットなら
「そのうち車や家で実印がいるだろうから、先に作っておいた。登録は市役所でできるから、必要になったら持っていって」
よくある質問
「欲しいものがない」と言う人に、物ではなく現金や商品券を贈るのはどうでしょうか
相手が自分で選びたい人なら、商品券は喜ばれます。ただ、「足りている」人に現金を渡しても、使い道がなく貯金に回るだけで、贈り物としての印象は残りません。物を贈るなら置き換える品、現金を贈るなら「これで財布を買い替えて」のように使い道を添えると、どちらも生きてきます。
相手がすでに印鑑を全部持っていたら、印鑑は贈れませんか
実印・銀行印・認印を職人が作った印鑑で揃えている相手なら、無理に印鑑を贈る必要はありません。持ち物の別の品を置き換えてください。ただ、「揃えている」と本人が思っていても、銀行印が三文判だったり、認印と兼用だったりすることはよくあります。何をどう使っているかまで聞いてみると、置き換えられる1本が見つかることがあります。
今の印鑑を置き換えると、古い印鑑はどうすればよいですか
銀行印を新しい印鑑に替えるときは、銀行で改印の届け出をします。古い三文判は、宅配の受け取りなど、印影が人目に触れても差し支えない用途に回せます。名前を彫った古い印鑑を処分するときは、印面を削るか、印章店や神社の印章供養に出す方法があります。
相手の好みが分からなくても、印鑑は贈れますか
印鑑で好みが出るのは、印材の色とケースの色くらいです。印面は職人が名前の字に合わせて設計しますので、好みで外れることがほとんどありません。印材は黒水牛か薩摩本柘、ケースは標準の黒か赤にしておけば、どんな相手にも合います。ケースの色を相手の持ち物の色に合わせると、さらに喜ばれます。
まとめ|足すのではなく、置き換える贈り物を
「欲しいものがない」は、必要な物が足りているか、自分で選びたいか、物を増やしたくないか、のどれかです。どの場合も、新しく足す贈り物は向きません。いま毎日使っている持ち物の中で、間に合わせのまま使い続けている物を、確実によい物に置き換えます。財布や名刺入れ、傘、ボールペンが候補になり、中でも印鑑は、三文判を銀行印に届け出たまま、認印と兼用のまま、実印は未登録のまま、という人が多く、自分では買い替えるきっかけのない持ち物です。実印がなければ3本セット、三文判で済ませているなら銀行印と認印の2本セットを、名前に合わせて職人が作った印鑑に置き換えると、持ち物の数を増やさずに、毎日の道具が一段よくなります。
三文判のままの銀行印や認印を、名前に合わせて職人が作った印鑑に
京都の職人が、彫る名前の字に合わせて印面を設計し、1本ずつ彫刻します。用途ごとに分けた2本セット・3本セットは、単品で揃えるより割安です。牛革ケース、保証書、京印章証明書付き。送料無料、5年保証。